旬な俳優達と“今”しか撮れない青春映画を―『青空エール』三木監督インタビュー

インタビュー

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『青空エール』 三木孝浩監督

文=岡崎優子/Avanti Press

今、日本映画の好調ぶりを支えているのは“旬の若手俳優を起用した青春映画”といっても過言ではないだろう。同世代の10~20代だけでなく、中高年をも涙させる。

「(笑)確かに試写でも、年配の方のほうが響いていたりしますね。記録のメディアであり記憶のメディアでもある、映画だからこそかもしれません」
そう分析するのは、2010年に『ソラニン』で映画監督デビューし、『僕等がいた』(11)『ホットロード』(14)など、凄まじい勢いで青春映画の佳作を撮り続ける“青春映画の名手”三木孝浩監督。「それしかできないんで(笑)」と照れる監督の新作が「高校デビュー」「俺物語!!」などで知られるヒットメーカー、河原和音原作の『青空エール』である。

『青空エール』
『青空エール』
©2016 映画「青空エール」製作委員会 ©河原和音/集英社

お互いに励まし合う関係に感動

吹奏楽部の名門校に入ったトランペット初心者の小野つばさが何度も挫折を味わいながらも、クラスメートで野球部員の山田大介に励まされながら、つばさは全国大会を、大介は甲子園を目指し頑張る――その姿は多くの読者の共感を呼び、原作コミック(全19巻)の累計発行部数は390万部を突破した。

「少女漫画原作でラブストーリーはいくつかやってきたんですが、本作はいつもと全然違い、恋愛よりも、互いが励まし合って勇気づけ合い、それぞれひたむきに夢に向かって突き進む姿に凄く感動しました。特に二人が人として尊敬しあい、その背中を追いかけることで自分も前に進み、片方が立ち止まった時は背中を押す、その関係性が素晴らしいなと思って。部活をやってきた人なら壁にぶち当たって凹んだ時の気持ちは共感できるし、自分もそうだったのでぜひやりたいと思いました」

描かれる高校生活は、劇的な大事件があるわけではない。恋の駆け引きがメインでもない。むしろ驚くほどストイック! だが、大多数の高校生は部活や受験勉強に励み、葛藤し、もがいているはず。演劇部だった三木監督もその一人だった。
「何よりコンクールのシーン。発表を待っているときの空気感とか僕もすっごくよく分かるんですよ。僕がやっていた演劇も県大会があって上位2校だけが全国大会に行けたんです。あの時の気持ちを思い出しながら撮りました」

『青空エール』

『青空エール』
©2016 映画「青空エール」製作委員会 ©河原和音/集英社

映画だからこそ表現できる音と光の演出

三木作品が幅広い世代に支持されるのは原作の魅力もさることながら、映画ならではの演出だろう。例えばカキーンという金属バットの音、エールを掛け合う声、吹奏楽部の楽器の音。シーンを活き活きとさせる音に溢れている。
「やっぱり音って記憶を喚起させるスイッチになりますよね。今回、凄く音に助けられました。大介とつばさって部活頑張っているから会う機会がなかなかないんですよ。ただ映画の中では、吹奏楽の練習をしていても野球部の声が聞こえてきたり……音で寄り添い合っているんです。それは漫画ではできないこと。無意識にでもそれを感じ取ってもらえたら嬉しいですね」

そして柔らかい光の加減、自分の記憶に重なるようなどこか懐かしい風景の数々が印象的だ。
「リアルに撮ろうと思えば撮れますが、基本的に、自分の中で回想になっているので、“良い光”が差しているんです(笑)。どこかでノスタルジーな世界なんでしょうね。だから思い出の中にある風景を再現しようと意識しているのかもしれないです」

『青空エール』
『青空エール』
©2016 映画「青空エール」製作委員会 ©河原和音/集英社

フレッシュな俳優達と作る“産地直送”的青春映画

つばさ役は土屋太鳳、大介役は竹内涼真。イメージにぴったりのキャスティングである。
「つばさのような役は、本人にそういう要素がないと途端に噓くさくなるキャラクターだろうなと思っていました。太鳳ちゃんは一生懸命でストイックな厳しさの中に優しさを感じ、竹内君は会って華やぐ印象とか人懐っこい笑顔がピッタリだなと思って」

そんな若手俳優を光らせるテクニックは何なのか、ぜひとも教えてほしいところだ。
「いやーないですよ(笑)。同じ目線に立つことぐらいかな。自分は作品の中で人の成長を描きたいなと常に思っているんです。未熟な人間が何かを乗り越えようともがく姿が好きで。自分も映画を作る中で成長したいし、キャラクターと一緒に何かを得たい。若い俳優たちと正解を探すのは面白いし、刺激を受けますね」

撮影は4月。恐ろしいほどタイトなスケジュールだった。
「フレッシュな役者たちを旬なうちに撮ってすぐに出す。撮りたて産地直送みたいな感じで見てもらえるのも良いかなって思います。旬の輝き、今しか出せない表情や空気感を掬い撮れればいいなと意識しました」
まさに撮って出しの、きらめく青春映画の誕生である。

 

『青空エール』 2016年8月20日(土) 全国東宝系公開
原作:「青空エール」河原和音(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:三木孝浩
映画公式サイト:http://aozorayell-movie.jp/
©2016 映画「青空エール」製作委員会 ©河原和音/集英社

 


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記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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