もふもふNG?毛並みのこだわりハンパない!

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映画『ルドルフとイッパイアッテナ』は8月6日より全国公開

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』は大好きな飼い主のもとを離れて東京へ迷い込んだ小さな黒猫のルドルフが、強くて賢いボス猫のイッパイアッテナと出会って大冒険を繰り広げる3DCGアニメ。声優に挑戦した井上真央と鈴木亮平が、猫役に成り切ったアフレコ秘話を語った。

高いハードルがあった猫役

Q:今回オファーを受けてどう思いましたか?

井上真央(以下、井上):最初にルドルフとイッパイアッテナの2匹が動いている短い映像をいただいたのですが、それがかわいくて。原作を読むと、あのキャラクターでこの物語を描いたら、親子で楽しめる作品になるだろうと思ったんです。でも以前アニメの声優をやらせていただいて難しさもわかっていましたので、気軽に「やります!」と言てはいけないと思って悩みました。でも、前回も少年役でしたし、それを聞いて声を掛けてくださったのなら、私にも出来るかもしれないと思いました。

鈴木亮平(以下、鈴木):僕は、猫役が出来るのかな? と不安に思いました。でも原作を読むうちに、人間の話を猫の世界に落とし込むことでより素直に人の心に入ってくるんだなと。原作が大好きになって、関わらせていただいてありがとうございます! って感じです。

Q:井上さん、猫の鳴きマネが上手過ぎます。

井上:昔近所にはノラ猫ちゃんがたくさんいて、幼い頃からよく猫の鳴きマネをしていたんです。中でも一番愛情を注いでいたのはトラ柄のノラ猫。ときどき家の玄関をカリカリとノックしてやってきて、部屋で一休みするとまた玄関をカリカリして「開けてくれ~」と意思表示して出ていく。まるで寅さんみたいな猫でした。最近では、飼っているワンちゃんのお散歩中にノラ猫ちゃんを見つけると「にゃ~お」と鳴きマネしたり、「おいで」と言ったりしています。それで近づいて来てくれる猫はほぼいませんが、たまに人慣れした猫に出会うと楽しくて。

Q:鈴木さんはイッパイアッテナをかなりつくり込んだ声で演じられましたね?

鈴木:イッパイアッテナは街のノラ猫で自分をつくり込んで生きてきた人間……じゃないや、猫だと思うんです(笑)。いつでも強くいなきゃとドスを利かせた声で周りを威嚇して。その猫がピュアな心や優しさを持ち、教養があるというのが、物語が進むにつれてわかってくると思います。声優初挑戦ですから、ここまでつくり込んでいいのかな? というのは不安でしたし、違和感を持たれるといけないので、高いハードルだと思いながら演じました。

自分の演技にダメ出し!

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Q:お二人がアフレコをする映像を見させていただきましたが、体もかなり動いていましたよね?

鈴木:え? 動いていましたっけ?

井上:あまりに動いていたから、譜面台に置いたタブレットを落としたんじゃないですか(笑)?

鈴木:そうなんですよ。吹き替えの練習用にもらった映像を入れて、いろいろとメモをしていたタブレットを落としてしまって。何も映らなくなりました。でもマイクの前で動いちゃダメって難しいよね?

井上:私は「マイクから離れ過ぎ」など、よく注意されました。

Q:アフレコはずっと二人で?

鈴木:そうです。実は、50分ほど録音した後で最初から全部やり直したんです。井上さんが「私の芝居に納得がいかないので」って。

井上:そんな言い方はしていませんよ!

鈴木:そんな言い方はしていませんね(笑)。

井上:監督にお話しさせてくださいと言うと、ここまで収録したのに……というどよ~んとしたお二人の顔が目の前に。

鈴木:そうなるよね(笑)。そこをあえて言ったのはスゴイね。

井上:半日かけたのにと思ったのですが、アフレコに至るまでには企画から考えて2年くらいかっているので、最後に声を入れる自分がモヤモヤした思いを抱えたままでは失礼だと思いました。物語の中でルドルフは成長していきますが、それを声だけで表現するには、前半の無邪気で好奇心旺盛なところを、より年齢を下げた声にしないといけないということに途中で気付いたんです。

鈴木:イッパイアッテナの場合、自分でも思いもよらない優しさが出てくるのが成長なんですよね。ひとりでつっぱって生きてきた大人ではあったんですけど、ルドルフと出会い彼を守ろうとすることで親になっていく。その変化が出せればいいなと。あくまでぶっきらぼうだけど、気持ちに優しさを持っていればいいと言われ、とても繊細な作業をしていました。

子ども向けでは終わらない物語

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Q:完成した映画を観た感想は?

井上:まずは映像の技術的なことにビックリしました。猫たちの毛並みが細かいところまでリアルで感動しました。

鈴木:最初は毛並みの描写が柔らかくなり過ぎたんですって。もふもふ感を再現しようとするあまり、シャンプーしたての毛並みのようでノラ猫感がない! と(笑)。今回はそもそも毛並みを描くソフトウェアのシステムを制作から始めたそうですが、さらに毛の硬さや質感の数値を入力し直したと聞き、気の遠くなる作業だなと。

井上:自分が出演した映画を観るよりずっと客観的に観ることができました。亮平君には観る前に「きっと泣いちゃうよ」と言っていたのですが、見事に泣いていました。

鈴木:マジ泣きですよ! 途中からず~っと泣いて、涙でぐちょぐちょでした。

井上:この物語にはいつの時代にも変わらない、大事なことが詰まっています。

鈴木:人によって受け取るものが全然違うと思うんです。子供は猫の冒険として読むだろうし、新しいことを始めたばかりの人であれば、新しい仲間と夢に向かっていこうとするルドルフの姿から何かを受け取るでしょう。親世代や仕事をしている人も、また違うものを感じるはずで、そこが「子ども向け映画」では終わらない物語だと思います。

取材・文: 浅見祥子 写真:高野広美