岡本真夜、ミリオンヒット曲『TOMORROW』15年間の葛藤

インタビュー

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岡本真夜

歌手デビュー20周年を迎えた、シンガーソングライターの岡本真夜。アップテンポの曲調とポジティブな詞によるデビュー曲「TOMORROW」はミリオンヒットを記録し、今では時代と世代を超えて歌い継がれる名曲となった。だが、そんな反響を誰よりも驚いているのが、生み出した張本人の岡本だ。「ライブの選曲から外そうと思った時期もある」。大ヒットの裏には知られざる葛藤があった。

落ち込んだ友人へのエールを込めて岡本が作詞・作曲した「TOMORROW」。今でこそ応援歌の代名詞的楽曲となっているが、岡本含め当時のレコード会社スタッフもこの反響は想定外だった。「レコード会社がタイアップを取るために用意したデビュー曲候補は5曲くらいあったけれど、『TOMORROW』に関しては全然推し曲ではなく、4番目くらいの位置づけだった」と振り返る。

原曲はミディアムバラード調だったが、TBS系連続ドラマ「セカンド・チャンス」の主題歌に決定した際に、ドラマのプロデューサーよりアップテンポへの曲調変更の注文があり、現在の形に。ドラマの放送開始とともに楽曲への評価も高まり、瞬く間にヒットチャートを駆け上った。デビュー作でミリオンヒットを達成。傍からみれば、岡本は華々しいデビューを飾ったことになる。しかし当時の岡本は、この快挙を素直に喜ぶことが出来なかった。

「推し曲ではなかった」とはいえ、自分が生み出した作品にはこだわりと共に魂が込められている。だからこそ「最初に作った形を変えられた事に対して、受け入れる事の出来ない自分がいました。元の形を変えた形でヒットしたことが消化できていないのに、楽曲はどんどん一人歩きしていった感じですね。売り方も私自身が表に出るのではなく、作った楽曲さえ認めてもらえればそれだけで嬉しかったので、街で流れているのを耳にしても、自分の曲なのにそうではないような気がして、ずっと不思議な感覚でした」。

そんな葛藤とは裏腹に「TOMORROW」は広く浸透。当初、岡本は人前に出る形での活動は考えていなかったが、「楽曲があまりにも大きくなってしまって、表舞台に出ざるを得ない状況になった」。デビューした年の第46回NHK紅白歌合戦で初めてメディアに露出し、楽曲を生披露。その反響はいたるところに現れ「買い物先のスーパーで指をさされて逃げた事も」と笑う。

その後も「FOREVER」「Alone」などのヒットを飛ばすが、デビュー曲に対するしこりは解消されず、月日は流れた。転機となったのは、デビュー15周年を記念して行われた自身初の握手会。ファンが次々と口にしたのは「TOMORROW」に対する感謝の言葉だった。「涙ぐみながら“人生を変えてくれた曲です”と言ってくださる方もいれば、“リハビリが大変でくじけそうだったけれど、この曲を聴いて毎日励まされて今がある”という方もいました」。誰のために、何のために自分は音楽を作っているのか。握手会での出来事は岡本の心に深く突き刺さった。

「ライブでの選曲から『TOMORROW』を外そうと思った事も何度もありました。でもそうやって直接声を聞いたことで、自分が思っている以上に皆さんの楽曲になっている事を知りました。そこから、もっと大事にしなければいけない、責任を持って歌い続けなければいけないと思えるようになった」。15年もの間、人知れず抱えていた葛藤は氷解。今では「あの曲がなければ今の自分はない」と肝に銘じ、ファンの気持ちに寄り添うように歌い続けている。

デビュー20周年を迎えた今年3月には、長年の夢であったピアニストとしてデビュー。“mayo”名義でアルバム「always love you」を発表し、同名楽曲は7月公開の映画『夢二~愛のとばしり』のエンディングテーマにも起用された。「デビュー20周年は通過点の一つ。まだまだ自分磨きをしなければいけないし、挑戦したい事も沢山ある。日々努力。これからは歌の岡本真夜と、ピアニストmayoと二足のわらじで頑張っていきたい」。目標は高く、岡本はこれからも一曲一曲を丁寧に歌い、奏でていく。

(取材・文/石井隼人)

『夢二~愛のとばしり』
2016年7月から全国公開予定
出演:駿河太郎、小宮有紗、加藤雅也、黒谷友香 ほか
メインテーマ曲:mayo「always love you」
配給:ベストブレーン

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記事制作 : dmenu映画

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