老作家のエロティックな妄想を体現!大杉漣、単独インタビュー

インタビュー

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金沢三文豪の一人、室生犀星(むろおさいせい)が晩年に発表した幻想小説『蜜のあわれ』が映画化。メガホンを取ったのは、映画『狂い咲きサンダーロード』(’80年)でジャパニーズ・ニューウェイブの急先鋒と称され、クエンティン・タランティーノが敬愛していることでも知られる鬼才・石井岳龍(いしいがくりゅう)。本作では、室生犀星を投影したと言われている老作家(大杉漣)と、彼が愛でる少女の姿に変貌する金魚・赤子(二階堂ふみ)との無邪気でエロティックな触れ合いを妖艶な映像で描き出している。金魚の少女に翻弄される老作家をチャーミングに演じた大杉漣さんにお話を伺った。

Q:本作を拝見致しまして、こういった叙情的な作品はハリウッドには作れないと思いました。このジャンルなら、日本映画は無敵だなと。
そうですね。室生犀星さんは思い切った本を書かれたと思います。70歳でこういう妄想を抱けるなんて。僕はこの作品に出合って、室生犀星さんに対するイメージが大きく変わりましたね。

Q:脚本の段階から、老作家は大杉さんを想定して書かれていたそうですね。
脚本の当て書きをしていただけるなんて、役者冥利に尽きますね。自分はその期待にちゃんと応えられたんだろうかと思ってしまうほどですが、本当に嬉しいことです。

Q:本作のオファーをいただいたときのお気持ちは?
僕は石井監督の『狂い咲きサンダーロード』や『爆裂都市 BURST CITY』(’82年)が好きで、以前から憧れていまして面識もあったんですが、出会ってから三十数年経ち、やっと石井組の現場に立てたなと。互いにそれなりの年令になったんですが、監督は今でもエッジの効いた生き方をされています。現場では、大胆と繊細を行きかう演出がたまらなく好きでした。またひとつ自分の宝物としての映画が出来たなという感じですね。

Q:本作には大杉さんをはじめとして、二階堂ふみさん、真木よう子さん、高良健吾さん、永瀬正敏さんなど、現在の日本映画界を背負って立つ俳優さんたちがたくさん出演されていて、とても豪華ですね。
決してバジェットの大きな作品ではないけれど、全員が志を持っていて、誰ひとり欠けても成立しないような現場でしたね。全員がそれぞれのパートの中で精一杯力を出し合った作品になっていると思います。

Q:大杉さんが演じることで、老作家のエロティックな部分がとてもチャーミングに見えました。役者として演じがいのある役だったのでは?
映画のファースト・シーンで、赤子から「おじさま」と呼ばれたときに、この映画の質が決定づけられた気がしました。老作家のエロティックな妄想をそのままエロティックに演じるのではなく、可愛さ、可笑しさ、切なさを交え、人間としての品位を保って表現したいと思ったんです。

Q:老作家のモデルは室生犀星自身だと言われていますが、そこは意識されましたか?
室生犀星さんの写真は拝見致しましたが、彼を模写するのではなく、僕の中から室生犀星さんを生み出したいという気持ちで演じました。ただ、メガネにはこだわりました(笑)。老作家のイメージに合ったメガネを一週間探しまわったんですよ。

Q:大杉さん自らですか?
はい。仕事の合間に探したんですが、嬉しい作業でしたね。昔風の丸いメガネを売っているところは東京に何軒もないんですよ。偶然、飛び込みで入ったメガネ屋さんで室生犀星さんのお話をしたら、ご主人がイメージに合うメガネを見つけて下さって、加工もしてくださったんです。本作で使用したメガネとの出会いは、僕にとっての映画の出発点になりました。

Q:まさに、大杉さんが『蜜のあわれ』の老作家を現代に蘇らせたという感じですね。
現場でそのメガネをかけて、衣装を着て座った時に、石井監督が「犀星さんがいる」っておっしゃってくださって。嬉しかったですね。しかも撮影の途中から僕のことを大杉さんではなく「犀星さん」と呼ぶようになったんですよ(笑)。

Q:石井監督には大杉さんが犀星さんに映っていたんでしょうね。最後に、本作を楽しみにしている映画ファンの方々へメッセージをお願い致します。
二階堂さんの金魚っぷり、そして老作家の狼狽ぶり、こんな日本映画があるんだってことを見ていただきたいですね。見どころは、最初から最後まで。『蜜のあわれ』というタイトルがすべてを表現していて、人間が生きていく中で、甘い蜜に惹かれていく。人間が老いていくあわれもあるんですが、切なさと愛おしさもある。老いも若きも楽しめる映画に仕上がっていますので、ぜひとも老作家と少女の初恋のようなファンタジーを楽しんでいただきたいです。

(取材・文/田嶋真理)
(撮影/横村 彰)

『蜜のあわれ』
4月1日より東京・新宿バルト9ほかにてロードショー。
室生犀星の幻想文学を映画化!金魚と作家と幽霊が織りなす、艶やかで濃密な恋の物語
金魚に変身する美少女・赤子と暮らし始めた老作家。2人は次第に愛を深めていくが、老作家への思いを遂げられず亡くなった女性の幽霊が現れたことで、関係に変化が訪れる。
出演:二階堂ふみ、大杉漣、真木よう子、高良健吾、永瀬正敏ほか
監督:石井岳龍 
http://mitsunoaware.com/
© 2015『蜜のあわれ』製作委員会

記事制作 : dmenu映画