【映画の料理作ってみたらvol.12】蒸しても焼いてもおいしい餃子! 皆で食べるとなおおいしい

コラム

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文=金田裕美子

餃子が嫌い、という人には会ったことがありません。好きか嫌いかを問われれば、たいていの人は「好き」と答えるのではないでしょうか。中国や日本の餃子だけでなく、ネパールのモモやトルコのマントゥ、イタリアのラビオリなど、小麦粉で作った皮に肉や野菜を包んだ料理が世界各国にあることを考えると、これは人類のDNAに組み込まれた何かが関係しているのでは、という気さえしてきます。

中華

ま、そこまで壮大な話ではないですが、今回は餃子を作ってみたいと思います。日本ではラーメンとセットで、というイメージが強い餃子、本場中国では、春節などに食べられる縁起のよい食べ物なんだそう。普段は遠く離れて暮らしている家族が集まって、皆でわいわい言いながら餃子を包み、これまたわいわい言いながら湯気の立つ山盛りの餃子をつつく……想像するだけでも楽しい光景です。

アン・リー監督の台湾映画『恋人たちの食卓』には、娘3人を男手ひとつで育てた料理人のお父さん(ラン・シャン)直伝だという豆腐餃子を次女のチアチエン(ウー・チェンリン)が恋人に作るシーンがあります。

『恋人たちの食卓』
『恋人たちの食卓』
CENTRAL MOTION PICTURES / THE KOBAL COLLECTION

荻上直子監督の『トイレット』では、英語を話す3人の孫たちとまったく言葉の通じないばーちゃん(もたいまさこ)が、彼らと一緒に餃子を作り、食べることで家族の絆を深めていきます。

『トイレット』
トイレット表紙
『トイレット』
発 売元:ショウゲート 販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD¥4,700(本体)+税、Blu-ray¥5,800(本体)+税
©2010 “トイレット"フィルムパートナーズ

テリー・ギリアム監督の『フィッシャー・キング』では、ホームレスのパリ―(ロビン・ウィリアムズ)が想いを寄せる孤独な女性リディア(アマンダ・プラマー)と中華料理店でデートするとき、不器用な彼女が箸でつかんだ餃子をすっ飛ばすのを見て自分もわざとすっ飛ばし、だんだんエスカレートして、しまいにはテーブル上でホッケーの試合のごとくブロッコリーをコロコロ転がして大笑い、お互いの距離をぐっと縮めます。

『フィッシャーキング』
『フィッシャー・キング』
TRI-STAR/HILL-OBST / THE KOBAL COLLECTION

こう見ると、餃子は単なる食べ物としてだけでなく、人と人との絆を深める小道具として映画に登場することが多いようです。やわらかくてあったかい、ほっこりした食べ物だからでしょうか。そんななか、極めつきの餃子映画(?)だ! と私が断言するのが、チャン・イーモウ監督の『初恋のきた道』です。

『初恋のきた道』
『初恋のきた道』
2016年12月31日より午前十時の映画祭7で上映
©2000 COLUMBIA PICTURES FILM PRODUCTION ASIA LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

中国東北部の貧しい村に初めて学校ができることになり、町からまだ若いルオ先生(チョン・ハオ)が赴任してきます。「村で一番器量の良い娘」であるデイは、遠くから見たルオ先生に一目で恋心を抱きます。先生と村の男たちが校舎を建てる間、女たちは食事を差し入れ、デイも先生に食べてもらいたい一心で張り切ってお弁当を作るのですが、誰がどのお弁当を食べたのかはわからずじまい。校舎が出来上がると、先生は村の各家庭で順番に食事することになります。

待望の自分の家の番がきて、お昼を食べに来た先生が「きのこの蒸し餃子は好物だ」と言うのを聞いたデイは、「夕食はきのこ餃子を作るから」と心を込めて餃子を用意します。しかし何か政治的らしき理由で突然町から呼出しを受けた先生は、デイに別れも言えないまま馬車で村を去ることに。それを知ったデイは、お昼に先生が使った青い花模様のどんぶりに入った熱々の餃子に蓋をして布で包み、家を飛び出します。近道になる山の斜面を、お下げを揺らし、息を切らしながら必死で馬車を追いかけるデイ。でも途中でつまずいて転び、どんぶりは割れ、餃子は地面に転がり出てしまいます。その場にへたり込み、遠ざかる馬車を見送りながら声を上げて泣くデイ……。

この映画の原題は「我的父親母親」、つまり「私の父と母」。デイの息子のナレーションから映画が始まるので、デイとルオ先生は最終的には結ばれることが最初からわかっているのですが、それでもこの号泣シーン、何度見ても私も号泣。デイがあまりにも健気でいじらしい、恋する乙女なのです。

デイを演じているのはこの時19歳のチャン・ツィイー。先生が家を訪ねて来た時の恥じらいを含んだ笑顔のアップや、紅葉した村の美しい風景をバックに走る姿などは、いかに彼女を美しく撮るかを最大限に意識したアイドル映画のよう。実際、この1作で彼女は一躍世界的な脚光を浴びることになります。

おさげ髪を揺らしながらきのこ餃子作ってみよう

さて、そんなデイの恋心を象徴するかような熱々のきのこ餃子をさっそく作ってみたいと思います。まずは皮から。デイの住む村に「餃子の皮 大判20枚入り」なんて便利なものが売られているとは思えないので、私も小麦粉から作ります。小麦粉の配分は、もっちり感が出る強力粉と、粘度が低くのばしやすい薄力粉を各100gずつ、計200gで餃子30個分。

餃子1

粉をふるってボウルに入れ、箸で混ぜ合わせます。ここで粉を溶くのですが、水を加える方法と、熱湯を加える方法があるらしい。水で溶くと寝かせている間に酵素が働いて皮のコシが強くなり、熱湯で溶くと酵素が働かずコシが弱くなるので皮を薄くのばしやすいのだとか。デイの蒸し餃子は田舎ふうで、皮が厚くコシが強そうだったので、水で溶くことに決定。しかし……餃子というと、どうしてもなじみの深い焼き餃子をイメージしてしまいます。あのカリッとした食感もすてがたい。優柔不断な私は熱湯バージョンの皮も作り、焼き餃子にも挑戦することにしました。こちらも強力粉と薄力粉各100gずつ。この粉の量に対して、水は100ccです。

水は2、3回に分けて、熱湯は一気に粉に回しかけて菜箸で混ぜます。粉全体に水分がいきわたり、ポロポロになってきたら、ボウルの中でひとまとめにして手でこねます。まだ粉の塊がザラザラしていて、「本当にこれがいつの日か皮に変身するのだろうか」という不安が襲ってきますが、ここでめげてはいけません。手のひらの付け根あたりに力を入れてぎゅっぎゅっと押しつけます。そういえば高校時代、美術の彫塑の授業で粘土の「菊練り」がうまくできず、先生にやらせたことを思い出し、「北山先生、その節はすみませんでした」などと考えているうちになめらかになってきました。

餃子2

生地が充分になめらかになったら丸くまとめ、濡れ布巾をかけて30分休ませます。

餃子3

生地が休憩に入っている間に、具を用意します。きのこ餃子というくらいだから、具はきのこ。しかしひと口にきのこといっても、しいたけからまつたけ、はたまたトリュフまで、世の中には数多くの種類が存在します。デイの餃子には何が入っていたのでしょうか。映画には、具をまな板の上で細かく叩いている映像はあるものの、きのこの種類の特定はできません。そしてこれを見る限り、肉類は入っていないようです。貧しいデイの村では、おそらくお祝いなど特別な機会以外に肉を食べることはほとんどないのでしょう。でも本当にきのこだけ? なんか寂しくない?

餃子4

どうしたものかと思っていたら、北京出身の料理研究家、ウー・ウェンさんがこの映画をイメージして考案したというきのこ餃子のレシピを見つけました。やはり肉類はなし。きのこの種類はまいたけとしめじ。そこに卵が入ります。ほおお。きのこと卵だけの餃子。どんな味がするのでしょう。

レシピに従ってまずフライパンに油を熱して溶いた卵を入れ、固まったら酒をふりかけて皿に取り出し冷まします。まいたけとしめじは1cmに刻んでサラダ油で炒め、塩、しょうゆ、酢で味を調えて冷まします。冷めたら先ほどの卵と合わせ、片栗粉とこしょうを混ぜます。これできのこの餡は出来上がり。大変に簡単です。

餃子5

しかし……やはり肉入りバージョンも食べたいよねえ……ということで、作っちゃうことにしました。豚肉は肩ロースの塊を買ってきて薄切りにし、さらに細切り、さらに細かく切って包丁で叩きます。こうすると挽き肉を使うよりずっと美味しくなる気が。叩いた豚肉にしょうゆと酒、ごま油等で味をつけ、ショウガとネギのみじん切り、先ほどと同じ炒めたきのこを加えます。豚肉入り餡完成。さらにここにニラを加えたバージョンも作りました。ショウガやニラが入ると、ぐっと「いつもの餃子」の香りがしてきます。

餃子6

餡ができたら、先ほど寝かせておいた皮の生地を叩き起こします。打ち粉をふった台でよくこねてから、生地を3等分に。そのひとつを両手で転がしながら30cmくらいの長さにのばし、10等分します。ひとつずつ丸めてつぶし、打ち粉をふって麺棒で丸くのばします。が。これがなかなかうまく丸くならない。均一に麺棒を使うのが難しく、長細くなったり、謎のキャラクターみたいな形になったり、厚さにむらができたり、しわが寄ったり、破れたり。ううう……。実はこっそり買っておいた「大判20枚」を取り出して「のばしましたー」とごまかしたい気持ちをぐっとこらえ、何枚も挑戦するうちにちょっとずつコツがつかめてきました。

餃子7

片手で生地を回しながら一定の角度に麺棒を動かすと、均一に丸くなってくれるのです。こればっかりは実際にやってみないとわからない感覚なので、みなさまも是非挑戦してみて下さい。一見大変そうですが、何人かでやればブサイクな皮ができてもそれなりに楽しいもんです。私も周囲の人々のご協力を仰いで皮をのばし終え、包みに入ります。

餃子13

ここはまあ、普段家で作る餃子と要領は同じ。謎のキャラクターのような皮も、包んでしまえばそれなりに餃子らしくなります。もちろん円に近いほうがきれいにできますが、そんなにこだわらなくても、大きさや形にばらつきがあるほうが家庭っぽくていいかも。ということにしておきましょう。

餃子8

きのこ餃子はクッキングシートを敷いた皿にくっつかないように並べて蒸し器に入れ、強火で10分蒸せば出来上がり。

餃子9

熱湯でこねた皮で作った焼き餃子は、これまた普段の餃子と同じように油をひいたフライパンに並べ、底に薄い焼き色をつけてから水を入れて蓋をし、6~7分焼きます。

餃子10

蒸し器とフライパンから湯気とともにいい香りが漂ってきて、じゃーん、きのこの蒸し餃子と、肉入り焼き餃子の完成です! デイの青い花のどんぶりに似たものはうちにはなかったので、友人の結婚式でもらった青い魚のついた沖縄のやちむん(焼きもの)に熱々の餃子を盛ってみました。映画には、割れたあの青い花のどんぶりを瀬戸物修理屋さん(!)に修理してもらうシーンがあります。割れた箇所を手際良く金具でつないでいくシーンはちょっと感動的。あのような流しの商売あるということも、私はこの映画で初めて知りました。

餃子11

さて、皮から手作りした餃子を食べてみた感想。きのこと卵の餃子は香味野菜が入っていない分、ほわっと香るきのこそのものの風味を純粋に味わうことができます。一方、肉とショウガ、ネギを入れて蒸したものはいつもの餃子に近く、さらにニラを入れて焼いたものは、白菜やキャベツが入っていないにもかかわらずおなじみの餃子、という感じでした。やはりデイが先生のために懸命に作ったきのこ餃子は、ウー・ウェンさんのレシピのような、シンプルにきのこを味わう優しいお味だったのではないか、という気がします。

餃子12

【餃子のレシピ】
《きのこ蒸し餃子》
皮:強力粉 100g、薄力粉 100g、水 100cc
餡:まいたけ、しめじ、卵、酒、塩、しょうゆ、酢、片栗粉 
《きのこ焼き餃子》
皮:強力粉 100g、薄力粉 100g、熱湯 100cc
餡:まいたけ、しめじ、卵、豚肉肩ロース、ショウガ、長ネギ、酒、塩、しょうゆ、酢、片栗粉、ニラ
《映画っぽい雰囲気を盛り上げる小道具》
・青い花模様のついたどんぶり
・どんぶりを包むチェックの布
・おさげ髪

この記事で紹介している作品

 初恋のきた道
 恋人たちの食卓
 トイレット
 フィッシャー・キング

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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