NHKの並々ならぬ意欲を感じる「精霊の守り人」

コラム

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「精霊の守り人」
女用心棒バルサ(綾瀬はるか)と王子チャグム(小林颯)
「精霊の守り人」

文=木俣 冬

最近、NHKのドラマが見逃せない。いよいよクライマックスを迎える連続テレビ小説「あさが来た」、BSの視聴率が上がるという異例の現象が起きている大河ドラマ「真田丸」と、クオリティーの高いドラマを連発している。先日まで放送されていた、松尾スズキが近松門左衛門を演じた木曜時代劇「ちかえもん」も虚実皮膜の描き方が意表をついていてすこぶる面白かった。

そこへ来て、大河ファンタジー「精霊の守り人』が始まった。人間の世界「サグ」と、精霊の世界「ナユグ」というふたつが重なりあって存在している世界で、女用心棒のバルサ(綾瀬はるか)が、水の精霊に卵を産みつけられた王子チャグム(小林颯)を守りながら逃亡の旅をする剣と魔法のファンタジーだ。100年に一度現れて、人間に卵を産みつける水の精霊に対し、魔物として倒そうとする人間と、水の精霊は人間の危機を救ってくれるのだと言う者の戦いは、神の国であるとされる新ヨゴ国の建国神話の真実を掘り起こし、国の存在を揺るがしていく。

原作を実写で再現するのは至難の技

高くそびえる山、深い谷、CGを駆使して描いた架空の世界の中で、綾瀬はるかのしなやかな身体が躍動する。日本のテレビドラマでここまでファンタジーが楽しめるようになったかと第1回から圧倒された。

バルサやチャグムに関わってくるキャラもいい。陰謀を企てていそうな王宮の人々、星を読む占い師たち、自然と共に暮らす先住民たち、バイタリティーあふれる老女、精霊……とファンタジーに欠かせないキャラの立った登場人物が目白押しだ。それらを、藤原竜也、木村文乃、平幹二朗、林遣都、吹越満、東出昌大、高島礼子ら豪華俳優陣が演じてみせる。なかでも老いた呪術師を演じる高島礼子の化けっぷりはクレジットを見ないと誰だか分からないほどだった。

原作は、上橋菜穂子の書く人気ファンタジー小説で、文字であれば、いくらでも架空の国、架空の時代を描くことができるけれど、それを実写で再現するのは至難の技だろう。だがそれをこのドラマでは、王宮や市場、森などの美術や小道具、フォークロア調の衣裳などをきめ細やかに作り込み、なかなかのものにしている。

市場の活気や森の空気感はジブリアニメのようだ。『ハリー・ポッター』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズといったファンタジックな世界は、映画であっても日本ではジブリアニメくらいでしかなかなか実現できないなか、テレビの実写ドラマがそこに挑むとは意義深い。

3年間かけて、3部作、全22回で、原作の「守り人シリーズ」全12巻分をドラマ化するという壮大な構想になっているのも、NHKの並々ならぬ意欲を感じる。

貫禄の綾瀬、迫力の吉川、胸に迫る清原
作品を支える出演陣の魅力

「精霊の守り人」
バルサの育ての親ジグロを演じる吉川晃司(右)
「精霊の守り人」

まずは、シリーズ最初の「精霊の守り人」編が4回にわたって放送される。孤独な女用心棒バルサの紹介編ともいえそうで、王子の命を狙う追手や魔物とのスリリングな攻防と平行して、彼女がどうして泥にまみれた用心棒になったのかという生い立ちの謎も描かれる。大河ドラマ「八重の桜」でも、強い闘士・八重を演じ切った綾瀬が、今回はますます凛々しく存在し、その激しいアクションも注目のひとつだ。重心をかなり低くした槍の構えなど、相当トレーニングしたであろうと感心するばかり。水の中にも果敢に入っているのも立派。もちろんスタントも使っていると思うが、第2回で槍のトレーニングをしている場面は、長めに綾瀬のアクションを映していたので、次第に成長しているのだろう。なんといっても、綾瀬の目ヂカラや立ち姿の鋭さは、類い稀なものだ。

アクションといえば、バルサが子どもの時、ある事件がもとで彼女を連れて逃げ、彼女に槍の訓練を施した育ての親・ジグロ役の吉川晃司だ。大ヒットした映画『るろうに剣心』の人斬り・鵜堂刃衛役でも見せた高い身体能力を、今回も182cmの長身を駆使し、迫力と風格ある戦闘シーンを見せてくれる。

「精霊の守り人」
バルサの少女時代を演じる清原果耶
「精霊の守り人」

もうひとり注目したいのが、バルサの少女時代を演じている清原果耶。「あさが来た」の女中役で女優デビューした清原が、綾瀬に迫る勢いの強さを発揮している。第2回で、はじめて人を殺してしまった時の心の大きな震えも胸に迫った。未成熟な少女の姿は桜の花のように旬が短い。14歳の清原の、このかけがえのない時期を見ることができる貴重なドラマという点でも見逃せない。

彼女と比べると、デビューから16年目の綾瀬はるかはもうずいぶん成熟し貫禄がある。清原演じるバルサが初めて人を殺めた後、長い旅の中で達観してしまったのだろう。果てしない孤独が綾瀬からにじみ出る。こうして生きるために戦い続けるバルサがどこへ向かっていくのか、3年間、楽しみだが、なによりもビジュアルスタッフの苦労は相当のものであろう。心からねぎらいたい。

「精霊の守り人」
放送90年大河ファンタジー「精霊の守り人」
毎週土曜日 NHK総合午後9時~
第3回 「冬ごもりの誓い」4月2日放送
第4回 「決戦のとき」4月9日放送

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)