鮮血を浴びて美人女優が壮絶演技! 日本映画の枠を超えたパニック巨編『アイアムアヒーロー』

コラム

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『アイアムアヒーロー』

文=紀平照幸

ついに日本映画もここまで来たか、と思わせてくれた快作が『アイアムアヒーロー』です。原作はいまだ連載が継続中の花沢健吾原作の人気マンガですが、そのコミックス8巻あたりまでを巧みに脚色し、一本の映画として完成させています。監督は『GANTZ』『図書館戦争』の佐藤信介。

主人公はうだつの上がらないマンガ家アシスタント、鈴木英雄(大泉洋)。しかしその平凡な日常は、謎の感染症が蔓延し、感染者が突然ZQN(ゾキュン)と呼ばれるモンスターに変貌して人間を襲い始めた時に崩れ去っていきます。行きがかり上、女子高生・比呂美(有村架純)を助けた英雄は、郊外のアウトレットモールに逃げ込み、藪(長澤まさみ)らの生き残りと合流しますが、そこもZQNに包囲されて……、というストーリーはこの種のジャンル映画の典型。が、本気度が今までの日本映画とはひと味違うのです。

『アイアムアヒーロー』

平穏で退屈な日常が崩壊し、一気にパニックになっていく様子を英雄の視点から捉えたミクロからマクロへの見事な転調。次に何が起きるか想像もつかない出来事の連続で、観客も一気にZQNパニックに飲み込まれていくのです。そのパニック・シーンも住宅街を閉鎖し、多くのエキストラを動員して大スケールで描かれます。比較的低予算映画の多いこのジャンルとしては破格の演出。韓国ロケを行なったことにより、日本では実現しない高速道路でのカーチェイスも撮影されました。レーティングがR15+(15歳未満の観賞禁止)ということもあって、描写にも容赦なし。首が吹き飛び、鮮血が飛び散る。美人女優たちもその中で「ここまでやるか?」という凄絶な演技を見せてくれます。「とにかく観客を驚かせてやろう」という意気込みが伝わってくるのです。

『アイアムアヒーロー』

すでに世界三大ファンタスティック映画祭に出品され、第34回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭でのグランプリ獲得をはじめ、シッチェス・カタロニア、ポルト両国際映画祭では観客賞ほかに輝いています。本場の、目の肥えたファンも認めた作品なのですね。「日本では銃が珍しいので、非常時にもかかわらず、英雄がいつまでも銃刀法のライセンスにこだわっている」といった日本ならではの笑いのポイントも、海外のファンには好評。そう、この映画には残虐な中に奇妙なユーモアが流れているのが特徴なのです。

それはZQNの描写に顕著です。彼らはいわゆるゾンビとは違い、生前の記憶や習慣に縛られ、言葉を発する者もいます。形状も変化していたりして、一見すると笑いを誘うような者も……。そんなユニークさも海外で認められた一因でしょう。モールではZQNがうろつくのを屋上に逃げ込んだ人々が見下ろしながら日常生活を送っている、しかしそんな状況でも人間同士のエゴのぶつかり合いは止められない、といった人物描写もしっかり描かれます。その中で英雄はどう戦い、英雄(ヒーロー)になることができるのか……? 最後まで息を抜けない、緊迫感が持続するサバイバル映画なのです。

『アイアムアヒーロー』
2016年4月23日(土)公開
配給:東宝
レーティング:R15+
©2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会
©2009 花沢健吾/小学館

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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