「攻殻」実写版 主演女優めぐりハリウッドも大激論!

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

文=ロサンゼルス在住ライター 鈴木淨

スカーレット・ヨハンソン
“Ghost in the Shell”で主役に扮したスカーレット・ヨハンソン
(C)Paramount Pictures

日本の人気SFコミック「攻殻機動隊」のハリウッドによる実写映画化作品“Ghost in the Shell”の撮影が進行中だ。同作は今年初め、スカーレット・ヨハンソンの主演が発表され賛否を呼んだ。主人公の名は「草薙素子(くさなぎ・もとこ)」。原作への忠実性を求めるファンは、白人女優ヨハンソンの配役を疑問視している。

特に日本国内でこういった声が上がるのはよくわかる。しかし最近、“Ghost in the Shell”で主役に扮したヨハンソンの画像が初公開されたことをきっかけに、米国でもこのキャスティングへの不満が高まり、討論がヒートアップしている。同作が、現在ハリウッドで批判されている「ホワイトウォッシング(Whitewashing)」の象徴として議論の的になっているのだ。

「ホワイトウォッシング」への批判

「ホワイトウォッシング」とは、マイノリティの配役を減らし白人中心にすること。多数派である白人観客にアピールし、より多くの興行収入を得る狙いだ。4月半ばに初公開された“Ghost in the Shell”の画像では、ショートの黒髪で草薙素子に“寄せた”ヨハンソンが確認できる。

米国における「主演スカヨハ」への批判は、大きく2種類に分けられる。一つは、やはり原作ファンからの声。アニメ版も世界的人気を誇るシリーズだけに、コアな支持者は白人がヒロインを演じることに納得できないようだ。コミック作家のジョン・ツーイは「これは本質的に日本の物語だ」とツイートし、作品が生まれた文化的土壌を軽視しないよう求めた。これは、同じく日本の人気コミックを原作とするハリウッド版「AKIRA」の企画に対する多くの意見と一緒。何度も発足しては立ち消えになっている同企画も、概してメインキャストに白人俳優を据えている。

そしてもう一つは、ハリウッドのマイノリティ差別に反対する人々からの批判。これが主に現在の議論を加熱させている。

マイノリティの役が奪われる?

女優兼活動家のチポ・チャンは、「ホワイトウォッシングの問題は難しい。マイノリティのアジア人俳優が演じられるかも知れない、ほんの一握りの登場人物を奪い取ってしまうから」と英BBCのインタビューで語っている。

米ドラマ「エージェント・オブ・シールド」などで知られる中国系女優のミンナ・ウェンは、ヨハンソンの見た目をアジア人風にした“Ghost in the Shell”の画像について、「スカーレット・ヨハンソンに対しては何もない。むしろ私は彼女の大ファン。でも、アジア人役のホワイトウォッシングには大反対」とツイート。米ドラマ「フアン家のアメリカ開拓記」の中国系女優コンスタンス・ウーら、その他ハリウッドで活躍するアジア人女優も同様にこの配役を非難している。

日本人や世界中の原作ファンからは「日本人以外のアジア人女優に草薙素子役を演じられるぐらいなら、ヨハンソンの方がずっといい」という声もあるが、この機に乗じてはっきり自分たちの権利を主張する彼女たちは、たくましいと言うべきだろう。アカデミー賞の俳優部門にノミネートされた20人が2年連続ですべて白人だったことなどから、今ハリウッドではマイノリティへの差別に厳しい目が向けられているのだ。

ビジネスとしての映画製作

しかし、映画製作側にいる大半の業界人は、このような批判に冷ややかな態度でいる。ビジネスとして成立しなければ、何も作れないからだ。特に“Ghost in the Shell”のようなSF大作は興行的リスクが大きい。米エンタメ業界誌「ハリウッド・リポーター」のレベッカ・サン記者は、こう指摘している。「ネット上では、(ハリウッド映画での実績がある)菊地凛子が実写版の草薙役に理想的だという意見が多い。その他のアジア人女優の名前も挙がっている。だけど、その全員が束になっても、ヨハンソンの“スター・パワー”の足元にも及ばない」。このような“現状”では仕方がないというのが結論のようだ。

ハリウッドでの議論は別として、日本人や原作ファンの中には、同作にヨハンソンのような大物がキャスティングされたことはむしろ良かった、という意見も目立つ。もともと世界情勢が現在と異なる近未来のストーリーで、主人公の草薙も人間の部分が少ないサイボーグ。白人俳優が主役でも、豪華な「ハリウッド版」として割り切って見るには作品として合っているのかも知れない。少なくとも、『DRAGONBALL EVOLUTION』のようなことにはならないのではないか(失礼)。

それに、“Ghost in the Shell”を製作するパラマウント・ピクチャーズは、ヨハンソンの役名を原作通り「Motoko Kusanagi」とするかどうか、まだ名言していない。公開された画像とともにリリースされた資料には、「the Major(少佐)」とだけ書いてある。名前が日本人名でないのなら、違和感も減少しそうだ。

同作は北野武(荒巻大輔役)、桃井かおりらをキャスティングし、日本人観客へのアピールも図っている。彼らが『LUCY』などでサイバーパンクなイメージも備えたヨハンソンとどんな化学反応を起こすのか? 『スノーホワイト』のルパート・サンダーズが監督し、現在ニュージーランドで撮影中の“Ghost in the Shell”は、2017年3月31日米公開予定。

ちなみに、同作におけるヨハンソンのギャランティは1000万ドル(約11億1000万円)と報じられている。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)