『殿、利息でござる!』阿部サダヲ&瑛太 インタビュー

インタビュー

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■本当にこんな人がいたの!?…な時代劇

 

映画『殿、利息でござる!』は5月14日より全国公開

磯田道史による小説「無私の日本人」の一編「穀田屋十三郎」を中村義洋監督が自ら脚色に参加して映画化した本作。お上に大金を貸してその利息で町をよみがえらせようと奔走する命知らずな男・十三郎と計画立案者の篤平治を演じた阿部サダヲ&瑛太が、笑えて泣ける人情喜劇でもあるこの時代劇への思いを語った。

■果てしなく続く“中村組”の撮影現場

Q:オファーを受けたときの感想は?
阿部サダヲ(以下、阿部):まず監督から「次にやってもらう役はいい人だよ」とだけ聞いて、時代劇だから馬に乗ったり派手な立ち回りがあったりすると勝手に思っていました。それで台本を読むとそうしたシーンが全くなくて、とても格好いい男たちの話で新鮮でした。同時に、実話を元につくられているということにも驚きました。本当にこんな人がいたの!? って、もういちど聞き返しちゃうくらい。ここまで調べ上げるなんて、原作者の磯田さんもスゴイなぁって。

瑛太:僕は、本当にこんな計画を篤平治さんが発案したのかな? って思いました(笑)。篤平治ってどこかトボけているし、「知恵者と呼ばれている」と言っても自称だし。でもそういう人物を演じるのだから、これは責任重大だなと。

Q:阿部さんの演じた十三郎は、父親と弟に対して葛藤を抱えた人物ですよね。その辺りをどう感じながら演じましたか?
阿部:確かに台本を読んだときは父親と弟との関係にいちばんグッときたのですが、それを感じながら演じたのは途中からです。前半は観客の方に、なぜこの人は死んでもいいと思うようなことしかやらないんだろう。何なんだこの人? とどうしたら思ってもらえるのかを考えていました。

瑛太:僕は監督に「えぃたのままで演じてくれ」と言われて、最初は混乱しちゃったんですよね。「えぃた」って誰だろう? と思って(笑)。『アヒルと鴨のコインロッカー』のときはいつも優しくて笑顔だったのに、今回は初日から追い込まれるというか細かく演出していただきました。それで改めて自分で決めつけちゃいけないんだなと、原点回帰できた気がします。後から考えると、それは監督が「この現場はそんな簡単にはいかないぞ」ってことを示したかったんじゃないかなという気もしましたけど。

阿部:僕も『奇跡のリンゴ』のときは厳しく演出されましたよ。

瑛太:“中村組”の現場って果てしないんですよね、同じカットを何十回も撮影したりして。基本はシーン全体のリハーサルをやったあとに各カットを撮っていくのですが、最後に阿部さんが登場する場面が1カットだけあって、阿部さんは全体のリハの後でず~っと待っていたんですけど、朝方になってしまって。すると「そこは、後日で」って。

阿部:朝になっちゃったね! と監督が言っていました(笑)。

■驚くべき共演者、羽生結弦

Q:お互いに共演した感想は?
阿部:一緒にやっていると心地いいというか、楽なんですよね。気を使わないでお芝居ができるってすごいことです。こうしたらいいんじゃないか? と事前に話し合う必要があると、その時点で相手とは役者同士の関係性になってしまいますよね。そうではなく、いつでも自然に篤平治と十三郎でいられるというか。

瑛太:僕は阿部さんのことを、そりゃあもう、言葉にならないくらいに好きです(笑)。こないだも舞台(『逆鱗』)でご一緒していたのですが、楽屋もず~っと同じでした。最後の北九州だけ別々だったので、調子が悪かったです。

阿部:ほとんど一緒にいなかったじゃない(笑)。

瑛太:いや楽屋でほかの共演者の方と阿部さんの会話を聞いて、ときどき自分もそれに入ってみんなでわ~っと笑ったりすると、それが本番へのウォーミングアップになるんです。それに阿部さんのお芝居は誰にもマネできないし、マネしようとしても絶対にバレます。ジョニー・デップのマネをしたらバレるのと同じで……僕は阿部さんのことならず~っと語っていられます(笑)。

Q:殿様役を羽生結弦さんが演じると聞いたときはどう思いましたか?
阿部:ビックリしましたよね。それで撮影ではもっとこう、スポーツ選手っぽいお芝居をするのかと思ったら、ちゃんと殿様のお芝居をされていました。どこかで稽古したわけではなく、自分で役づくりしてこられたみたいですけど。

瑛太:僕は人のオーラが見えたりしないですけど、見えましたもんね、オーラが。ぱ~っとこう、光輝くものが。あの年齢で世界一の人ですもんね。「いつか一緒にスケートをやりましょう」と言ってもらい、2ショットの写メを撮ってもらいました。うれしかったです(笑)。

■脇キャラのいい顔も記憶に残る映画

Q:完成した映画を観た感想は?
阿部:とても観やすい! と思ったし、長さもちょうどいいですよね。メインの登場人物だけでなく、人足(にんそく)さん達もそれぞれに見せ場があって活躍しているし、観た後にとてもいい気持ちになりました。途中で十三郎がいなくなったりして、結局これは篤平治の映画なんだなって思ったんですけど。

瑛太:違いますよ!(笑)

阿部:最後もまさか忌野清志郎さんの曲で終わると思っていなかったので、それもいいですよね。

瑛太:映画を観ながら泣いている人もいました。鼻をすする音がしたシーンは、僕の記憶では阿部さんと弟のシーンでしたよ。でも僕自身は、苦しいなと思いながらも流されてしまう篤平治と現場での自分の心理状態が重なりました。反省ばっかりですけど、いっぱいいっぱいな感じが映っていて、それは良かったのかなという気がしました。映画全体としては阿部さんの言うように、メインだけを描くのではなくみんながいい顔をしているし、ちゃんと記憶に残っていく。そういう作品がいい映画なんじゃないかなって思います。

Q:町を救おうと私財を投げ打つ旦那衆は、自らの戒めのために「つつしみの掟」を結びます。最近、自分はつつしみが足りないと思ったことは?
阿部:この映画をやってからなるべくつつしむようにしているんですけど、瑛太君と舞台でずっと地方を回っていて、一緒にご飯を食べるときも「決して上座に座らない」と思っていました。でも、こないだ焼肉屋に行ったときに上座に座ってしまって……ダメだな俺と思いました。

瑛太:僕はこの作品で阿部さんといるときは絶対に下座です。

阿部:申し訳ない。自分はつつしみを忘れていましたね……(見回して)ここ上座?

瑛太:(笑)。

取材・文: 浅見 祥子 写真:尾藤能暢

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)