Facebook初代CEOが放つ新サービスは「映画の敵」なのか

コラム

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文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪

ホームシアター
写真はイメージです

ハリウッドの新作映画を、劇場公開日に自宅で見られるようにする新サービス「スクリーニング・ルーム」が、米映画界に賛否両論を巻き起こしている。利用者は、Apple TVやRokuのような150ドルのセットトップ・ボックスを購入。劇場公開日に新作を50ドルでオンライン視聴できるほか(48時間再生可能)、同作を後日劇場で鑑賞できる映画チケット2枚も付いてくるというものだ。

音楽共有サイト、ナップスターの共同創業者で、Facebookの初代CEOとしても知られるショーン・パーカーが発表したもので、スティーヴン・スピルバーグやJ・J・エイブラムス(『スター・ウォーズ フォースの覚醒』)、ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ)、ロン・ハワード(『アポロ13』)、マーティン・スコセッシ(『ウルフ・オブ・ウォールストリート』)、フランク・マーシャル(『生きてこそ』)ら、そうそうたるフィルムメイカーが賛同している。

ジェームズ・キャメロン
スティーヴン・スピルバーグ、第88回アカデミー賞授賞式にて
Photo by Aaron Poole / (C)A.M.P.A.S.

テレビ番組やオンライン動画とは異なる“シネマ”の魅力を熟知し、その芸術を追求してきた著名フィルムメイカーたちが、劇場&ホーム同時公開という画期的な新技術を支持する理由は何なのか?それは、同サービスが、劇場から観客を奪うものではなく、すでに“劇場に足を運ばなくなっている人”を対象としていることが大きい。仕事が忙しくて映画館に行く時間がない、子どもができてから映画鑑賞はご無沙汰、身体的な事情で交通機関を利用したり、長い列に並ぶことができない……。それでも、話題の新作がソーシャルメディアで語り尽くされる前に、自分の目で見たいという人々だ。こうした新サービスに反対しがちな劇場側への配慮もなされている。利用者が支払う50ドルのうち20ドルは、劇場配給側に支払われ、映画チケット2枚を提供することにより、利用者が劇場に足を運び、ポップコーンやソーダなどの売店を利用するよう導くというのだ(劇場経営は売店売上に支えられている)。

ジェームズ・キャメロン
ジェームズ・キャメロン、第82回アカデミー賞授賞式にて
Photo by Richard Harbaugh / (C)A.M.P.A.S.

一方で、ジェームズ・キャメロン(『アバター』)やクリストファー・ノーラン(『ダークナイト』)らは反対派。「劇場体験の神聖さに忠実でありたい。魂を込めて作り上げた芸術なのだから、最高の形で観客へ届けるべき」と強い姿勢を見せている。また、同サービスには万全の海賊版対策がなされているというが、その点を疑問視する声も多い。最終的には、メジャー・スタジオと劇場主たちが同意しなければ実現しないサービスであり、稼働にはまだまだ時間がかかりそうだ。

クリストファー・ノーラン
クリストファー・ノーラン、第86回アカデミー賞授賞式にて
Photo by Aaron Poole / (C)A.M.P.A.S.

映画界は大きく移り変わっている。娯楽大作が費用を回収するには2億5000万ドルを稼ぐ必要があるといわれており、いかなる収入源も無視できない。Netflixを始めとするオンライン配信会社は、オリジナル映画を続々と製作・配信予定だ。ソーシャルメディアによって、公開即日にストーリーがネタバレすることもある。これらの状況を考えれば、たとえスクリーニング・ルームではなくとも、劇場&自宅同時公開に向けたビジネス・モデルの登場は避けられないのかもしれない。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)