【映画の料理作ってみたらvol.13】『グラン・ブルー』のスパゲティ・アル・マーレ&白ワイン ガブ飲みレシピ

コラム

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文=金田裕美子

映画を見ていて、出てきた料理を「あれ食べたい!」と思うことはしょっちゅうですが、「映画と同じあの場所で、あれ食べたい!」と強烈に思うことがあります。『ローマの休日』を見て、オードリー・ヘプバーン扮するアン王女を真似てローマのスペイン広場でジェラートを食べてみたくなった人、実際に行って食べた人は、世界中にものすごくたくさんいると思われます。私ももちろんやりました。イタリアを旅行する人なら誰もが行くであろうローマと違い、私が「あそこであれ食べたい!」という一心で、それだけの理由で実際に訪ねてしまったのは、イタリア、シチリア島のタオルミナ。映画『グラン・ブルー』に登場する海辺の高級リゾート地です。ぜひともここで映画のように「スパゲティ・アル・マーレ」を食べながら白ワインをガブ飲みしたい。今回は、あの憧れだったスパゲティを作ります。

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『グラン・ブルー』Columbia/Photofest © Columbia Pictures

『グラン・ブルー』の物語は、ギリシャの島から始まります。フランス人漁師の息子ジャックとガキ大将のイタリア人エンゾは、共に素潜りが得意。お互いにライバル意識はあるものの、リスペクトし合ってもいました。数十年後、エンゾ(ジャン・レノ)はフリーダイビングの世界王者として君臨し、向かうところ敵なし状態になっています。「俺と競い合える相手がいるとしたら、あのチビのフランス人、ジャックだけだ」と考えたエンゾは、ジャック(ジャン=マルク・バール)を探し出し、タオルミナで開かれるフリーダイビングの国際大会に参加するよう説得します。

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『グラン・ブルー』Columbia/Photofest © Columbia Pictures

誘いを受けてタオルミナのホテルにやってきたジャックとエンゾは、海辺の断崖から張り出したテラスのようなレストランで食事をします。ここへ偶然を装ってやってくるのが保険調査員のジョアンナ(ロザンナ・アーケット)。仕事で出会ったジャックのことが忘れられず、ニューヨークからはるばるシチリアまで彼を追いかけてきたのです。そんな彼女のためにエンゾが注文するのが、「スパゲティ・アル・マーレ」。これです! これを、この海辺のレストランで、どうしても食べたかったのです。

このシーンの撮影に使われているのは、タオルミナの岬の斜面に建つホテル、カポタオルミナ内のレストラン。私が「ここに行きたい!」と思い立った当時は、インターネットでロケ地を簡単に検索、なんてことがまだできなかったので、ビデオでエンドクレジットを必死に見てホテル名を書きとめ、イタリア政府観光局で連絡先を調べ、ファックスで宿泊予約をし……と行くまでに結構な手間がかかりました。そしていざ、期待に胸を躍らせながら『グラン・ブルー』の世界へと旅立ったのでした。

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アタホテル カポタオルミナ © ATAHOTELS S.P.A.

しかし。ここで思わぬ事件が勃発しました。タオルミナに向かう列車に乗り遅れ、一応ホテルに「到着が夜遅くなります」と連絡を入れたところ、驚愕の答えが返ってきたのです。「当ホテルは現在冬期休業中です」。ええーーーっ? どゆこと?「あのー、そちらのルイジさんから予約確認のファックスもいただいているんですが」「と言われましても、営業していないので、どうにもできません」。……結局、営業している別のホテルを紹介してもらい、野宿は回避できたのですが、ホテルが休業中ということは、当然あのレストランも休業中。旅のハイライトのはずだった「スパゲッティ・アル・マーレ@カポタオルミナ」計画は無残にも海の底深くに沈んでいったのでした。ちなみに、日本に帰ったらホテルから「予約を受けちゃいましたが、この期間は休業中でした、すみませーん」というファックスが届いていました。遅すぎるのよーーっ。

というわけで、タオルミナで食べる夢は未だ実現していないスパゲティ・アル・マーレを作ってみたいと思います。せっかくだから、パスタは手打ちで行こう! パスタといえばデュラム小麦のセモリナ粉よね、ということで早速セモリナ粉を1キロ購入して参りました。デュラム小麦はグルテンの含有量が多い硬質の小麦、セモリナ粉はその粗挽きです。イタリアでは、乾燥パスタの原料にはデュラムセモリナを100%使うことが義務づけられているんだそうです。

が。レシピ本などを見てみると、手打ちパスタを作る場合は、普通の小麦粉の方が適しているらしい。さらに、イタリア北部と違い、シチリアなどの南部では手打ちより乾燥パスタが使われることが多いとか。ダメじゃん、手打ち。どうすんだ、1キロ。とりあえずセモリナ粉は横に置いておいて、乾燥パスタを使用することにしました。

パスタには様々な形の様々な種類がありますが、形も名前も同じ乾燥パスタにも大きく分けて2種類あります。表面がつるつるしたものと、ざらっとしたのもの。これはパスタの製造段階で、練った小麦粉を絞り出す際に使われるダイス(口金)の違いによるもので、テフロン製ダイスのものはつるつるに、ブロンズ製ダイスのものはざらっと仕上がるらしい。今回使用するディ・チェッコのパスタは、ソースがからみやすい、ざらざらの代表格です。

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ディ・チェッコのスパゲティーニ

さて「スパゲティ・アル・マーレ」、スパゲティの部分はディ・チェッコを使うとして、「アル・マーレ」の部分はどうするか。「マーレ」はイタリア語で「海」という意味です。海のスパゲティ。でも映画でジャックやジョアンナが食べているスパゲティには、アサリしか入っていないように見えます。それって「スパゲティ・アラ・ヴォンゴレ」じゃないのか。タオルミナにあるいくつかのレストランのサイトを見てみましたが、「アル・マーレ」なんてメニューは発見できませんでした。「スパゲティ・デル・ペスカトーレ(漁師風)」や「スパゲティ・アイ・フルッティ・ディ・マーレ(海の幸)」ならありますが、両方ともトマトソースが使われています。私は映画と同じように、トマトを使用しないビアンコ(白)に、数種類の魚介類を入れてみたいと思います。

用意したのは、アサリ、ムール貝、エビ、ヤリイカ、イイダコ。アサリは砂抜きし、ムール貝は表面をたわしでよく洗い、貝から出ている糸のような部分を取り除きます。エビは殻をむき竹串などで背ワタを取り除きます。ヤリイカはワタと軟甲を抜いて皮をむき、輪切りに。イイダコは胴を裏返して墨袋を取り除き、包丁で切れ目を入れて目と嘴を外し、塩でもんで洗い、大きければ適当な大きさに切り分けます。これで魚介類の下準備完了。

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アサリ、ムール貝、エビ、ヤリイカ、イイダコ

お湯を沸騰させて塩を入れ、スパゲティを茹でます。

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鍋にアサリとムール貝を入れ、ワインを注いで蓋をして殻を開かせます。

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アサリとムール貝、別々に殻を開かせます

別の鍋にオリーブオイルを熱してみじん切りのにんにく、赤唐辛子を入れて香りを出し、エビ、イイダコ、ヤリイカを加えて炒め、先ほどの貝類と貝の蒸し汁、パセリを加えます。

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ここに茹であがったスパゲティを水気を切って入れ、ソースがしみ込むように全体を和え、塩、コショウで味を調えます。

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できればイタリアっぽい絵皿に盛って、パセリを散らせば出来上がり。今回はいただき物のイタリア製タコ皿(?)に盛ってみました。

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完成です!

シチリアは陶器の名産地でもあります。タオルミナのお土産物屋さんにも、カラフルな陶器の絵皿がたくさん売られていました。私はタオルミナで友人のために絵皿を買ったのですが、これを持ったまま移動遊園地のバンパーカー(車同士をぶつけ合って楽しむアトラクション)に乗って地元の子供たちとやたらにエキサイトしてしまい、車を何度もぶつけた挙句にお皿を真っぷたつに割ってしまたのでした(バカ)。

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タコのお皿はこんな感じ

パスタの具材用に買ったヤリイカが余ったので、こちらも輪切りにして水気をよく拭き取り、塩コショウしてからセモリナ粉をまぶして油で揚げ、カラマーリ・フリットも作ってみました。手打ちパスタ用に張り切って買ったものの行き場を失ったセモリナ粉が、ここでちょっとだけ活躍です。

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セモリナ粉でカラマーリ・フリット

あのレストランのシーンで、エンゾとジャック、そしてジョアンナがスパゲティ・アル・マーレと合わせて飲んでいるのはシチリアの代表的なワイン、コルヴォの白です。軽くすっきりした味わいが魚介のパスタにぴったり。映画のなかで緑色だったコルヴォのラベルは、現在は白に変わっていて、ちょっと時の流れを感じてしまいました。それにしても、「スパゲッティ・アル・マーレ@カポタオルミナ」リベンジはいつの日か実現するのでしょうか……。遥かかなたの青い海に思いを馳せつつ、よく冷えたコルヴォをガブ飲みしたのでした。

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青空のもとコルヴォを飲みながら食べたいものです

【レシピ】

《スパゲティ・アル・マーレ》
・スパゲティ、塩、水
・アサリ、ムール貝、ヤリイカ、エビ、イイダコ、オリーブオイル、にんにく、赤唐辛子、パセリ、塩、コショウ

《カラマーリ・フリット》
・ヤリイカ、セモリナ粉、塩、コショウ、揚げ油、レモン

《映画っぽい雰囲気を盛り上げる小道具》
・コルヴォ〈白〉、シチリアの陶器、イルカの置物、海の見えるテラス

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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