カンヌより豪華!? なぜかスターが集まる北イタリアの小さな映画祭

コラム

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文=中山治美

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左から最高責任者サブリナ・バラチェッティ、『モヒカン故郷に帰る』の
松田龍平と沖田修一監督、コーディーネーターのトーマス・ベルタッキ

スロベニアとの国境に近い北イタリアにウディネはある。人口は約10万人。この中都市で開催された第18回ウディネ・ファーイースト映画祭(4月22日~30日。以下FEFF)は、昨今アジアのスターが結集することで注目されている。

日本からは、映画『ヒメアノ~ル』(5月28日公開)の吉田恵輔監督&森田剛、『高台家の人々』(6月4日公開)の斎藤工、『モヒカン故郷に帰る』(公開中)の沖田修一監督&松田龍平、SF映画特集「BEYOND GODZILA :Alternative futures   and  fantasies in japanese cinema」を代表してベテラン大林宣彦監督が!

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『高台家の人々』で登壇した斎藤工と最高責任者サブリナ・バラチェッティ

香港からはサモ・ハン・キンポー、韓国からはキム・ギドク監督『悪い男』で知られる俳優チョ・ジェヒョンが、それぞれ監督作を引っ提げてやってきた。アジア映画界に限っていえば、今年のカンヌ国際映画祭より豪華メンバーかも。

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監督・主演作『我的特工爺爺(The Bodyguard)』で喝采を浴びるサモ・ハン・キンポー

ウディネのあるフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州は、生ハムのサン・ダニエーレや白ワインとグラッパが名産。「食事が美味しいらしい」という情報を聞きつけて参加を熱望する人も多いという。映画会社にとっては、ここでの受賞を弾みに公開に漕ぎ着けたいという狙いがある。理想は第15回(2013)の、亀梨和也が現地入りして華々しくワールドプレミア(世界初上映)を行い、インターネット投票によるマイ・ムーヴィーズ観客賞を受賞した『俺俺』(三木聡監督)の例。今年も『ヒメアノ~ル』と『高台家の人々』がワールドプレミアだった。しかしやはり、映画祭の創設者であり、最高責任者サブリナ・バラチェッティとコーディーネーターのトーマス・ベルタッキの尽力なしにはFEFFの成長は語れないだろう。

数多ある国際映画祭の中では、1999年スタートのFEFFは新興の部類に入る。認知度が低ければ作品を出品さえしてもらえない。2人は自らが宣伝灯となって釜山や香港など各国映画祭を積極的に行脚し、人脈を築いていった。昨年、ジャッキー・チェンが自家用機で駆けつけたのはその賜物だろう。

上映作品のFEFFにとどまらない展開も用意している。それが2008年に設立した、ベルタッキが代表取締役を務める映画会社tucker filmの存在だ。FEFFで話題となった作品を買い付けて劇場公開やDVD販売を行っており、滝田洋二郎監督『おくりびと』(08)、中島哲也監督『告白』(10)、武内英樹監督『テルマエ・ロマエ』シリーズなどのイタリア公開を実現。さらに福田容介監督『福福荘の福ちゃん』(14)では製作にも参加した。今年からはFEFFにマーケットを設け、アジア映画の欧州での発信基地を目指していくようだ。

何より各国の大衆映画を集めているとはいえ、こだわりの作品群は映画ツウをも唸らせるものがある。上映作品は各国の映画に通じた専門家がコンサルタントを行っており、日本はThe Japan Timesなどにも執筆している米国の映画評論家マーク・シリング。アジア映画評論の大御所であるマックス・テシエも参加し、フィリピンを担当している。目利きによるセレクションが観客への信頼に繋がっていることは間違いなく、今年も会期中に約6万人を動員した。常連客も実に多い。

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マイ・ムーヴィーズ観客賞を受賞した『バクマン。』の大根仁監督

賞は、観客の投票による“観客賞”のみというのが来場者の熱気に火をつけている。今年は『モヒカン故郷に帰る』が会場の観客が選ぶ観客賞で第3位のブロンズ・マルベリー賞と、特別会員によるブラック・ドラゴン観客賞の2冠を受賞。大根仁監督『バクマン。』がインターネット投票によるマイ・ムーヴィーズ観客賞を受賞した。その価値はプライスレス。堂々と胸を張っていい。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)