Youはどうして日本が好き? 映画祭には地域住民だけの特権があった!

コラム

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文=中山治美

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第18回ウディネ・ファーイースト映画祭カルチャーイベント着付け

世界各地で行われる映画祭は、大なり小なり行政からの支援が必要不可欠だ。つまり、市民の税金。そこでいかに市民を巻き込み、開催に理解を示してもらえるかが大きな課題となる。どこもあの手この手の“仕掛け”を用意している。韓国・釜山国際映画祭だったらスターにタダで会えちゃう海雲台ビーチの名物トークイベントを、カンヌ映画祭だって業界関係者以外入手困難なプラチナ上映チケットを地元住民に配布していたりする。

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太極拳のワークショップに参加するウディネの人々

北イタリアで開催された第18回ウディネ・ファーイースト映画祭(4月22日~30日。以下FEFF)の場合は、映画祭と並行して市内各地でアジア関連のカルチャーイベントを実施している。その数100! 日本関連のイベントが最も多く、優勝者の副賞が日本旅行というコスプレ大会を筆頭に、マーシャル・アーツや剣道のデモンストレーションから、折り紙、俳句、書道、日本酒の試飲、和菓子の講座に、映画観賞の疲れを癒すべく按摩や指圧、フットケアマッサージもある。料金も無料から18ユーロ(約2200円。1ユーロ=122円換算)と、市民が気軽に参加出来る価格設定にしている。これらが、イベントといえばサッカー・セリエAの地元チーム「ウディネーゼ・カルチョ」の試合観戦ぐらいという市民に好評だ。

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剣道のデモンストレーション

FEFFは、欧州ではなかなか見る機会の少ないアジアの大衆映画専門の映画祭として1999年に創設された。しかし映画祭名が示す通り、ウディネの人たちにとってアジアは遠い、遠い、東の国。憧れはあっても、アジア文化に触れる機会はほぼない。そこで市民に少しでも理解、関心を示してもらい、映画祭に足を運んで欲しいとの思いから第8回(2006)にイベントがスタートした。

講師は現地在住のアジア人、すでに現地協会やクラブのある折り紙や盆栽、俳句はイタリア人が務める。日本関連のイベントである「風呂敷」利用法と、布で作った着物で着飾る「こけし作り」のワークショップの講師は、ファッションの国らしくいずれもファッション・デザイナー。共に、余った布の再利用法を考えていた際に、日本の“もったいない”精神に出会ったという。特に風呂敷は包み方だけではなく、三角に切った2枚の布をミシンで縫い合わせて風呂敷にするところから始める。講師が説明する。「風呂敷はご自宅にある布で作れます。ワインも本も、これ一枚で何でも持ち運べるのです。もう、スーパーのビニール袋は必要ありません」。

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風呂敷ワークショップ

書道教室の参加者の中には、硯と筆を持参してきた女性もいた。フィレンツェにある日本関連ショップで購入したという。書道に関心を持った理由を尋ねると、返ってきたのは「日本語の文字はとても美しいと思うのよ」。

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書道教室

どうしてもニュース番組やバラエティなどでは外国人の好きな日本というと、分かりやすくマンガに寿司、今ならラーメンが取り上げられるが、Youたちはもっと深く、日本人の生活や心に近づきたいと願い、その価値を見出しているようだ。共に講座に参加してみると、筆者自身、改めて自国の文化の魅力に気づかされることも多い。

ちなみにFEFFでは第4回(2002)にウディネP-1グランプリと題したピンク映画、第10回(2010)には新東宝映画を特集しており、サブカルチャーの普及にもかなり貢献している。その影響か、今年は「SHIBARI」と題した“緊縛”のワークショップも夕方16時から行われた模様。他の上映と重なり、取材にうかがえなかったのが心残り。いずれにしてもイベント参加者が今後日本映画に触れた際、「時代劇の町民が持っているのが風呂敷ね!」とか、「皆が食べている黒い物体が“おにぎり”ね!」など、鑑賞がさらに楽しくなることを願わずにはいられない。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)