『海よりもまだ深く』阿部寛&真木よう子インタビュー

インタビュー

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大きい阿部寛が大きく見えない衝撃

映画『海よりもまだ深く』は5月21日より全国公開

是枝裕和監督のオリジナル最新作『海よりもまだ深く』は普遍的な家族のかたちを捉えた感動作。劇中で元夫婦の良多と響子役を演じた阿部寛と真木よう子が、自身の母への思いを含めて同作について語った。

■母への思いを明かす

Q:家族あるあるが満載の本作をご覧になっていかがでしたか?
阿部寛(以下、阿部):すごく身近にいそうな家族構成で、友人からも聞いたことがある内容が盛り込まれているなと。良多は気付いていないけれども、彼の周りの人間は本当に優しい人ばかり。人を思いやる温かみが、孤独だと思って生きている人も、誰かにどこかで支えられていると気付かせてくれるように仕上がっています。清瀬市に実際にある団地で撮影したんですけど、自分が子供の頃に団地に住む友人の家を訪ねた記憶がよみがえったりして、すごく懐かしさを感じましたし、鑑賞後は温かな気持ちになりました。

真木よう子(以下、真木):女性目線で見て、樹木希林さん演じる母・淑子の姿、(自身が演じた)響子の姿からは、どこか孤独で、でも強い生きものであるのが母親なのだなと改めて感じました。それに子供って、大人が思っているよりも、はるかに現実のことをわかっているんですよね。良多と響子の長男・真悟(吉澤太陽)も、両親の離婚はわかっていながらも、おばあちゃんには「いつかまた家族が一緒に暮らせるといいなぁ」とぽそっと漏らす。ああいう子供の気持ちに触れたことで切ない気持ちになりました。

Q:是枝監督は「てにをは」まで熟考された脚本だそうですが、特に今回は名言がたくさんありました。
阿部:たくさんあるけれど、一番は探偵事務所の所長役のリリー・フランキーさんの「誰かの過去になる勇気を持つのが、大人の男ってもんだよ」ですね。それと樹木さんの「男はなぜ今を愛せないの?」は効きますね。僕が演じた良多がそうですけど、実は僕もそうで母親にはいつまでも息子として接していましたからね。僕の母はすでに亡くなっていますが、なかなか素直になれなかったり、そっけなくしてしまったり、いつまでも甘えがあった。撮影では自分のそういう息子の部分を思い出して、母親役の樹木さんとのシーンを撮りました。

真木:心に刺さったのは、樹木さんが息子に対して「ちゃんと私の死を傍で見ておくんだよ」と言った言葉ですね。これは親への思いとして私自身、母が健在で今も一緒に暮らしているし甘えているところがあるので。自分にとって一生母は母だと思っているからこそ、改めてそうだなぁと。傍で看取る自分は苦しむかもしれないけれど、ずっと傍にいたいと思うんですよね。

■ポジティブな言い訳をする

Q:本作の家族の在り方をどのように思い、演じられていたのでしょうか。
阿部:良多はいろいろなところがダメな男なんだけれども、誰にでもこういう面はあるもの。それをやはりフタして隠してしまうのか、オープンにして見せていくのか。演じる際にコミカルさも意識しつつ、かなり誇張して出していきました。

真木:大きい阿部さんが大きく見えない! っていう、すごい衝撃があります。

阿部:ははは(笑)。

真木:響子役には自然と入っていけました。それに是枝組は気負っていく感じがないので、フラットな状態でいられたのも良かったです。元夫とその母親と、元嫁といった距離感を表現するのは難しい部分でしたけど、そこも限定された団地という空間が、良い感じに作用したと思います。

Q:樹木さんとのお芝居は、やはり特別でしたか?
阿部:現場でもいろいろとお話しさせていただきました。樹木さんには女優としてだけでなく人として嘘がない。それだけに作品の中で、さりげなく言うことが人の心に強く残るんでしょう。

真木:樹木さんがアドリブで涙を流されて、その時には私も響子としてだけでなく素で応えました。あの感情はなんでしょうね、申し訳ないでもないし、明確な言葉では表せない複雑な感情が刻まれたシーンになりました。

Q:主人公の良多は「小説のための取材」だと言い訳しますが、お二人が自分に対しポジティブな言い訳をするときは?
阿部:失敗は成功のもと、いい経験をしたと思うようにしています。若い頃はなかなかそういう受け止め方は難しかった。けれども年と経験を重ねることで多少の自信がついた30代からは、そう思えるようになりましたね。失敗を恐れずに、何事も体験することが大事だと思います。

真木:例えば、何かを乗り越えたとき頑張った自分にご褒美として指輪を買ったことがありますよ。好きなものに囲まれると気分がいいですし、リラックスできたりして。最近は大きなクッションを探しています。

■女が男を本気で叩くとき

Q:是枝監督に聞いてみたいことはありますか?
阿部:是枝監督作品で「良多」と言う役名を与えられたのは今回が3度目。すべて別人なんですけど、これまでは裕福な家庭の子で、今回は一般的な庶民。率直に言って監督には、僕はいつまで良多なんだろう、良多はどうなっていくのか、と機会があればぜひ伺ってみたいです。

Q:男女の違いが明確に描写された劇中エピソードでいうと、良多と響子が和室に二人きりにされたときの良多の言動にゾッとしてしまいました(笑)。
阿部:良かった! それは狙い通りです(笑)。あの時の真木さんは僕を本気で叩いています。

真木:そうなんです。画面では若干手元が隠れていますけど、バシッとしっかり叩かせていただいています!

阿部:痛かったです(笑)。でも、本気で向き合ってああでもされないと、良多は救われないから。

Q:お二人には、また夫婦役で再共演を希望します!
阿部:真木さんは幅広い役柄を演じられますからね、いいですね! ぜひ。

真木:いえいえ、わたしもこの役とは全然違う阿部さんを観たいです。こちらこそよろしくお願いします。

ヘア&メイク:AZUMA@MONDO-artist(W)

スタイリスト:土屋詩童

取材・文:南樹里 写真:金井尭子

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)