舞台俳優からアイドルまで 蜷川幸雄に送る追悼の言葉

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

「世界のニナガワ」として国外からも高く評価されていた演出家の蜷川幸雄さんが5月12日に80歳で亡くなりました。演技指導で灰皿を投げつけるというエピソードで知られる蜷川さんですが、その目指す先の高さゆえの厳しさは、演劇界に大きな影響を与えました。偉大な演劇人の訃報に、多くの人々が追悼のコメントを出しています。

5月16日に東京・青山葬儀所で営まれた葬儀・告別式での、蜷川さんと縁深い俳優5人によるリレー形式の弔辞が話題を集めました。『王女メディア』を始めとして蜷川演出作品に長年出演してきた平幹二朗は「まるでシャーロック・ホームズに死なれたワトソンのように途方に暮れています」、大竹しのぶは「あなたの魂の叫びは、世界中の劇場に、観客の心の中に、私たちの中に永遠に残っていきます」、吉田鋼太郎は「もう少ししたらそちらに行きます。シェイクスピアも混ぜて一緒に芝居を作りましょう」、小栗旬は「時々こっそり夢に叱りに来てください」、蜷川さん演出の舞台『身毒丸』で1997年にデビューした藤原竜也は「1997年、あなたが僕を生みました」と語り、故人との思い出を振り返りました。

蜷川さんはアイドルを好んでキャスティングしたため、彼に育てられたアイドルたちからも感謝の声が上がりました。SMAPの木村拓哉は「右も左もわからなかった自分に、人から拍手してもらえる厳しさと素晴らしさを教えていただいた」、嵐の二宮和也は「本当に強い、熱い、情熱を持っているお方でお芝居というものを教えてもらいました」、V6の森田剛は「馬鹿野郎、変態と言われながら、たくさんの愛情をいただきました」とコメントを発表しています。またジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長も「昭和と平成を見事につなげた人が、東京オリンピックを待たずにさよならするなんてずるいよ」と哀悼の意を表しています。さらに2014年に蜷川さん演出の舞台『太陽2068』で舞台初挑戦した元AKB48・前田敦子も「2年前に私を新しい世界に優しく手招きして導いてくださった蜷川さんには、一言で言えないくらい本当に感謝しています」と故人に感謝しています。

他にも宮沢りえは「どうぞ天国にいらしても、私たちの心にゲキを飛ばし続けてくださいますように」、篠原ともえは「丁寧に蜷川イズムを継いでいきたい」と思いを伝えています。また海外公演に力を入れており、歌舞伎の作・演出も手がけるなど日本演劇界に新しい風を起こそうとさまざまな試みを行っている演出家・野田秀樹氏は「演出家は言葉の仕事。言葉だけで稽古場を鼓舞する蜷川さんはすごい」と蜷川さんを称賛するとともに「僕にとってヒーローだったのでショックです」と悲しみを示しました。

蜷川さんはシェイクスピアやギリシャ悲劇という西洋の古典を日本風にアレンジする大胆な着想や、巨大な仏壇の中で演じてみせる『マクベス』などの鮮烈な視覚効果で、国内外の演劇界に衝撃を与えました。

蜷川さんの意志は、彼の魂に触れた演劇人たちに引き継がれて、各々が蜷川さんの死去とともに新たなスタートを切ったことでしょう。実の娘である写真家で映画監督の蜷川実花氏は告別式まで終えて、ブログにこうつづっています。「あとは、あのマグマのような熱い情熱を引き継ぎ、ただただ前を向いて走ります。皆さま、これからよろしくお願いします」――。

(文/原田美紗@HEW)

記事制作 : dmenu映画