女優・黒木華の「何色にも染まれる」魅力とは?

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

去る2016年5月12日。肺炎のため、80歳の生涯に幕を閉じた演出家の蜷川幸雄。自身が手掛ける舞台の演者に妥協を許さないことで有名だった氏。「口よりも手よりも先に、物が飛んでくる」と言われるほどのスパルタ指導は、多くの俳優から恐れられてきました。その蜷川から生前、役者として高い評価を受けていたのが、黒木華です。

■TBS系のドラマ『重版出来!』で連ドラ初主演を飾る

1990年、大阪生まれの26歳。現在はTBS系のドラマ『重版出来!』で主演を務めており、話題となっています。素朴かつ控えめな黒木のルックスは、「昭和顔」ともよく言われます。本作では元アイドルの高月彩良や「でんぱ組.inc」の最上もがといった華のある面々と共演していますが、そんな中でもしっかりとした存在感を放ち、別種の美しさを感じさせます。

■有名映画監督・演出家が絶賛する魅力。岩井俊二は彼女をモチーフに小説執筆も。

黒木華が主人公に抜擢されたのは、ここ数年で知名度が急上昇したからであり、また、その名声を勝ち得た確かな演技力のためと考えられます。事実、彼女は、次に挙げるような名だたる演出家・映画監督から、女優としての魅力についての賛辞を寄せられているのです。

何色にも染まることが出来る女優 -野田秀樹(演出家)
日本一、割烹着の似合う女優 -山田洋次(映画監督)
文学的な香りがする稀有な女優 -岩井俊二(映画監督)

特に、岩井俊二の黒木への思い入れは相当なもの。2012年のCMオーディションで知り合ったのをきっかけに、「文学的な香りがする」と評した言葉通り、彼女をイメージして『リップヴァンウィンクルの花嫁』という小説を書き下ろしています。2016年には同名映画を黒木主演で監督。クリエイター心をくすぐり、「一緒に仕事がしたい!」と思える何かを、この女優は持ち合わせているのでしょう。

■野田秀樹のワークショップに参加したことが女優デビューのきっかけ。

そんな彼女が本格的に女優としてのキャリアをスタートさせたのは、京都造形芸術大学に在学していた2009年。前述のコメントを残した演出家・野田秀樹のワークショップに参加したことがきっかけでした。
そこで野田は黒木に、特別なものを感じたに違いありません。もともと、幼少期より両親や弟と一緒に、地元の芝居へ参加し、役者としての素養を楽しみながら磨いてきた黒木。高校は演劇部が強いと有名な学校へ進学。1年生から主役を務めるなど、その才能は早くから垣間見えていたようです。
ワークショップ参加後のオーディションに合格し、すぐに黒木は野田が手掛ける舞台へ上がることとなります。共演したのは、宮沢りえ、古田新太、中村勘三郎など、錚々たる面々。この時の体験を、後のインタビューで「初めて女優という感覚に、ほんの少しだけ触れることが出来た瞬間」と語った彼女。テレビでしか見たことのないスターとのクリエイションは、当時まだ学生だった女優の卵の願望を、大きく開かせたのです。

■ベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞で一躍、時の人に。

そこから数々の舞台で実績を重ねた後に、2011年、映画『東京オアシス』のメインキャストに選ばれて映画初進出を果たします。2年後に出演した『シャニダールの花』『舟を編む』での演技は特に名高く、数々の新人賞を獲得。極めつけは、2014年の映画『小さいおうち』出演による、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞とベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)の獲得。特に後者は、日本女優で史上4人目の戴冠であり、23歳での受賞は日本人最年少の記録。その快挙を報じるニュースによって、一躍、彼女の名はお茶の間に知られることとなったのです。

芸能界に女優ならいくらでもいます。けれども、黒木華が今、民放ゴールデンタイムの主演に上り詰めたのは、26歳にして、国際舞台でも賞賛された圧倒的な演技力があるからに他なりません。加えて、起用した側の要求にしっかりと応える高い柔軟性も、スターダムへ駆け上がった理由の一つ。 事実、ももクロ主演の映画『幕が上がる』では、灰皿を投げつけるスパルタな教師役なのに、宮部みゆき原作の映画『ソロモンの偽証』では、弱々しく遠慮がちな教師役。同じ教師役でも全く別の人物を演じ分けられる器用さこそが、多くの映画監督・演出家から気に入られる理由なのでしょう。今後も、「何色にも染まることが出来る」彼女の活躍から目が離せません。

●文 ロックスター小島

記事制作 : dmenu映画