【ブルボンヌ新作批評18】全人類にメールで余命が届いた世界で、カトリーヌ・ドヌーヴはゴリラとデキる!『神様メール』

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

神様メール

前回ご紹介した「せか猫」は、若くして余命僅かと宣告されてしまう主人公の物語でしたが、この『神様メール』は、なんと全人類に「余命」がケータイメールで送信されてしまうというストーリー。しかもそれは、人間の運命を弄んで喜ぶロクデナシのパパ=神様にブチ切れた家出娘・エアちゃんのしわざ、というブッ飛んだ設定です。そしてエアの兄は、妹よりずいぶん前に人間界に家出していた神の子JCことキリスト。お兄ちゃんが従えた12人の使徒に、あと6人をくわえて「新・新約聖書」を作るべく、エアはテキトーに選んだ6人を訪ね、それぞれの人生に必要な小さな奇跡を起こしていくのでした。

神様メール

なんて書くとファンタジー設定のひたすら可愛らしい感動モノに聞こえそうですけど、そこはおフランス・ベルギー系の作品らしく、毒と風刺がたんまり盛ってあります。神様パパは人間の不幸が大好きで戦争させたり大事故を起こしたりもしますが、一番熱心なのは「スーパーのレジでは隣の列のほうが早く進む」みたいな不幸のあるある法則。そんなものを2000以上も作ってはウヒョウヒョしてるという、しょっぱいクソジジイなんです。また神の娘・エアが選んだ使徒6人も、使徒にふさわしい崇高な使命感の持ち主かと思いきや、覗き部屋に通う性的倒錯者のおじさんや、寂しさから若い男娼を買って財布の中身をすられる有閑マダムなど、神というより、魔女なアタシがシンパシーを覚える顔ぶれ。個人的には、大女優カトリーヌ・ドヌーヴが演じる有閑マダムに起きる奇跡が、ゴリラと真の愛で結ばれることってのがもう最高にツボでした。冷たい人間の旦那より、優しく逞しいオスゴリラのほうがマシって。東山動物園のシャバーニに惚れたアタシも、カトちゃんに賛成!

神様メール

と今度はただのバカ映画に思えてきてるかもしれませんが、大女優にゴリラをあてがうくらい、ネタも全力投球ってことです。寿命カウントダウンに翻弄される人間たちの悲喜こもごもな姿を細かく丁寧に描いていて、突飛な世界観の中に、生々しい大小のドラマがたっぷり。ほんの短い時間でしたが、ダウン症の息子さんの余命がたくさん残っていて、自分はもうすぐ逝くことを知ったお母さんのエピソードにも胸を打たれました。

神様メール

手持ちの財産を寿命まで日割り計算して風俗に通いつめる人、お堅い仕事をやめて旅に出たり殺し屋になる人。ある意味、神様メールがもたらしたものは、人々が一番、思うがままに生きる世界なのかもしれません。そんな中、神の娘エア自身にとっての奇跡ともいえるのが、最後の使徒・少年ウィリーとの出会い。病気であと54日しか生きられない彼は、両親に何がしたいかと聞かれ「女の子になりたい」と答えます。ワンピースを着て堂々と登校をする表情も、エアと一緒に1日を月の単位で数えて残りの時を噛みしめる姿も、愛しさに溢れていました。つくづく、物理的な寿命の長さより、どう在ったかという「生き様」なのね。

結末はもちろん見てのお楽しみですが、予想の斜め上をいくハッピーエンド、と言っちゃって良いかも。たしかに今の世の中、いや人間の歴史はずっと、真正面から向き合ったらマトモじゃいられないくらいの闇とともにあるし、それはこの映画が描く通り、神様がクソジジイだからなのかもしれません。でもそんな中で、こんなステキな映画を作る人、観る人たちがいることも、きっと「小さな奇跡」の一つ。あなたのスマホにもしも寿命を告げる神様からのメールが届いたら?抱えたままの想いも、本当にしたいことも、「いつか」なんて先延ばしにしてるお尻を、この映画に叩いてもらいましょ!

『神様メール』
全国大好評公開中!
配給:アスミック・エース
(C)2015 - Terra Incognita Films/Climax Films/Apre?s le de?luge/JulieUe Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

記事制作 : ブルボンヌtwitter(外部サイト)

シリーズ