2009年に亡くなったSF作家・伊藤計劃氏のデビュー作『虐殺器官』の劇場版アニメが今冬公開されることがついに決定しました。アニメ制作を担当していたスタジオの経営破綻により一度は公開延期されましたが、約1年遅れて今冬ようやく公開されるとの発表に、ファンが喜びの声を上げています。

遺作はフィリップ・K・ディック賞の特別賞を受賞

原作者の伊藤氏は、2009年にガンで34歳の若さで亡くなりました。2007年に『虐殺器官』でデビューしてから2年ほどという短い作家人生でした。それにも関わらず、伊藤氏は今もSFファンから熱狂的な支持を得ています。遺作となった『ハーモニー』は、第40回星雲賞日本長編部門と第30回日本SF大賞を受賞したほか、アメリカのSF文学賞であるフィリップ・K・ディック賞でも特別賞を受賞しました。

そんな氏のデビュー作『虐殺器官』は、米軍特殊部隊クラヴィス・シェパードが謎の男“ジョン・ポール”を追う物語。その男が訪れた土地では、なぜか紛争が激化し、それと共に彼は消してしまう――。かつて有能な言語学者だった“虐殺の王”ジョン・ポールは、各地で何をしているのか? そして彼が企てていることとは?

SF、アクションに加えてミステリー的な要素もあり、ゼロ年代SFの代表的な作品とされています。

公開延期で一度は払い戻し措置

『虐殺器官』は、氏の小説を原作とした連続劇場アニメ化企画『Project Itoh』のなかで、『屍者の帝国』『ハーモニー』と共に映画化が決定し、昨年11月に作品が公開される予定でした。しかし「制作体制見直しの為」として公開が延期され、チケットの払い戻し等の対応がとられることに…。実はアニメ制作を担当していたマングローブが自己破産申請の準備に入っていたのでした。

「『屍者の帝国』『ハーモニー』は公開されたけど、『虐殺器官』はこのまま一体どうなるの?」

新スタジオ・ジェノスタジオによって制作は継続されると発表されましたが、ファンは完全に安心できず、やきもきして過ごすこととなりました。

それから4カ月経った今年3月、公式サイトで新ティザーPVが公開されて、そして6月9日、今冬公開と告知されました!告知PVでは、劇中のシーンも一部公開されていますが、「今回は間に合ったわけだ」という、まるで公開を待ち望んでいたファンに向けられたかのようなセリフで〆られています。

これでファンもようやく安心。YouTubeで公開された告知PVのコメント欄は、

「やっとキター!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!間に合ったねーww」
「来たああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああありがとうございます」
「今回は間に合ったじゃないか!!!!!!」

といった喜びの声であふれています。
今の社会情勢とリンクする?

ところで実は筆者も伊藤氏のファンのひとり。『虐殺器官』は、魅力的なガジェットなどテレビゲーム的な雰囲気も魅力のひとつで、氏の透明感のある文体もあって、SF初心者にも読みやすい作品です。しかしけっして浅い世界観ではなく、“言語”に焦点を当てたアイデアは大変新鮮なもの。各地で紛争が起こっている世界という設定は、テロの脅威が身近なものとなった今こそ考えさせられるものかもしれませんね。

(文/原田美紗@HEW)

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