文=増當竜也/Avanti Press

7月29日の公開に向けて、いよいよラストスパート。庵野秀明総監督による、この夏の話題作『シン・ゴジラ』の全貌が明らかになるのもあと少しだ。現在、本作品に長谷川博己、竹野内豊、石原さとみをはじめ、何と328人のキャストが出演すると既に発表されている。

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『シン・ゴジラ』
(C)2016 TOHO CO.,LTD.

東宝特撮映画の伝統、若手スター総動員

彼ら彼女らがどのような位置づけで、それぞれゴジラと対峙していくのか興味は尽きないが、いずれにしてもこれだけの数の俳優を動員して、ようやく日本映画界最大のキャラクターであるゴジラと人間側とのバランスが均等になるといった、スケールの大きさを物語っているかのようでもある。

昭和の時代に作られてきたゴジラ・シリーズをはじめとする東宝特撮映画は、宝田明や平田昭彦、佐原健二、高島忠夫、夏木陽介、久保明、女優では河内桃子や白川由美、星由里子、水野久美などなど、東宝映画の若手スターたちをフルに動員することで成立させていた。そもそも当時の東宝スターは総じて都会的な容貌の者が多く、そんな彼らが出演する特撮映画は他社のそれとは一線を画したスマートかつハイカラな印象をもたらしていた。『シン・ゴジラ』の長谷川、竹野内、石原の人選も、そんな昭和東宝時代を彷彿させるものになり得ているように思える。また当時はそういった若手スターの中に志村喬や池部良、藤田進、田崎潤などのベテラン名優を配することで作品に厚みを持たせ、重厚さを引き立たせていたのだが、今回そういった役どころは柄本明や大杉連、國村準、平泉成、余貴美子、渡辺哲ら、現代の映画界が誇るベテラン勢が大いに担ってくれていることだろう。

小出恵介や高良健吾、斉藤工、前田敦子など、今をときめく若手実力派スターの登場も(ほんの一瞬のゲスト的な出番なのか、かなり重要な役どころなのかも含めて!?)映画ファンには見逃せないところであるが、実はそれ以上に、個人的に気になっているのが緒方明、犬童一心、塚本晋也といった映画監督を本業とする面々の出演だ。映画監督が映画に出るとその場をさらう名演を示すことが往々にしてあり、特に塚本監督に至っては、昨年監督・主演した『野火』(15)で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞しているほどの実力の持ち主だけに、庵野総監督が彼らをどう扱っているのか、興味シンシンなのである。

岡本喜八監督へのオマージュ?

かつての映画会社は、それぞれ自社のスターを総出演させた超大作を定期的に発表していた。時代劇の“忠臣蔵”ものなどはその最たる例ではあったのだが、ここでふと思い出すのが、庵野総監督が東宝の岡本喜八監督の大ファンであることだ。

戦後日本映画界のアルチザンとして、今なお多くのファンを湛える岡本監督だが、その作品群の中には終戦直前の宮城事件を描いた『日本のいちばん長い日』(67)や、第二次大戦末期の沖縄戦を描いた『激動の昭和史 沖縄決戦』(71)といった戦争映画大作、またはUFOを目撃した者たちの血が青くなってしまうことから、世界中の国家権力が動き出すSF陰謀劇『ブルークリスマス』(78)のように、あえて特定の主人公を設けず、未曽有の事態に諸所の人間たちが対処していく群像劇スタイルの作品も多い。

あくまでも予想ではあるが、今回の328人キャストといったはからいが、岡本喜八監督の群像劇スタイルに対する庵野総監督なりのオマージュであり、リスペクトという一面を備えているのだとしたら、映画ファンとしてこんなに嬉しいことはない。

328人がそれぞれの立場でゴジラと向き合いながら、壮大かつスリリングなドラマが進んでいく……いわば“ゴジラのいちばん長い日”とでもいうような、群像劇の魅力に満ちた『シン・ゴジラ』になっていることを、大いに期待したいものである。

『シン・ゴジラ』
脚本・総監督:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技統括:尾上克郎
2016年7月29日 全国東宝系にてロードショー
(C)2016 TOHO CO.,LTD.