あのYEN TOWN BANDが7月20日に約20年ぶりのアルバム「diverse journey」をリリースしました。……といっても、今の10代や20代にとっては「誰?」といったところでしょうか。

円都(イェン・タウン)に生きる人々の物語

1996年9月に公開された岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』の劇中に登場する架空のバンドなのですが、メンバーが豪華で、同映画で主人公のグリコ役を演じた歌手のCharaがボーカル。そのほかのメンバーは劇中では俳優らが演じましたが、実際にはMy Little Loverなどで活動した音楽プロデューサーの小林武史がキーボードとギターを担当。他にもギターは、ノイズロックバンドの「Copass Grinderz」のメンバーで、椎名林檎やSuperflyなど様々なミュージシャンのライブサポートやレコーディングを務める名越由貴夫といったアーティストが参加しています。

『スワロウテイル』を観ていない方のために解説しておくと、舞台は“円都(イェン・タウン)”と呼ばれる日本のある街。アジア各国からやってきた違法労働者たちと日本人が雑多にひしめき合い、飛び交う言葉もさまざまな国の言語が入り交じるブロークンな言語で、まるでどこかの国に実在する貧民窟のように、自身の居場所もない人々が生き抜くための「金=円」を手にすることに心血を注ぎ、そのためには時には騙し合い、奪い合い、窃盗や殺人、売春にまみれながら、ふりかまわずたくましく生き残ることでわずかな希望を見出す姿を描いた物語。

その街に巣食う人々はとにかくエネルギッシュで、そうでなければ暴力と犯罪渦巻く無法地帯で生き抜くことはできないわけですが、ディストピアとも言えるそんなスリリングな状況でありながら、混沌とした中に漂う強烈な生活臭が日本人にとってはどこかノスタルジックに感じられます。ファンタジーでありながら、「こんな世界に実際になりそうじゃね?」と思わせる妙なリアリティがある、相反するいびつな世界観が構築されてもいるわけです。

昨年12年ぶりに復活ライブを開催

なんて、ごちゃごちゃ言ってしまいましたが、そんな中でYEN TOWN BAND、とりわけChara演じる娼婦グリコが、歌手になるという“夢”を叶えようとする姿、そしてその歌う歌は、混沌とするイェン・タウンをディストピアとするか、それともユートピアとするのか、まさにその境界線を示しているかのようにも思えます。観る人によっては、音楽が、歌がもっている可能性がギリギリの極地で試されているような気がするかもしれません。いずれにせよ、それだけこの映画の中で占める音楽の存在は大きいもの。

実際に、映画で使用された楽曲「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」およびそれらを収録したアルバム『MONTAGE』は大ヒットを記録しました。発表した音源はこれらシングル1枚、アルバム1枚のみでしたが、昨年に約12年ぶりに復活ライブを行ったかと思えば、同年12月にセカンドシングル「アイノネ」をリリース。そして今年6月にサードシングル「my town」をリリースしました。

約20年ぶりに本格的に活動を再開した“伝説”のバンド。この先、活動を継続するかは定かではありませんが(というより、多分ないでしょうけど)、とにかく待望のセカンドアルバム……といっても期待半分、怖さ半分ですが、聞かないわけにはいかんでしょう!

(文/花@HEW)

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