Eastern monk concept of path

「僕なら『HERO』をもっと面白くできる」

2001年ごろ、元シャ乱Qのつんくがやっていた深夜のバラエティ番組で、ゲスト出演していた三谷幸喜はこう語っていました。『HERO』とはご存知、木村拓哉が主演を務めたかつての月9ドラマ。おとなしくて生真面目そうな彼からは似つかわしくない、少々大胆な発言ではないでしょうか? でも確かに、『HERO』は登場人物同士のコミカルな掛け合いが多い作品。喜劇作家出身の三谷幸喜が筆を執れば、軽妙なやり取りにより重きを置いた、コメディ色の強いドラマに仕上がっていたはず。その際、お気に入りの俳優たちも何人か出演させるのでしょう。 三谷がよく自作に登場させる役者のことを「三谷組」と呼ぶそうです。そこには自身が立ち上げに関与した劇団「東京サンシャインボーイズ」の役者仲間もいれば、それ以外のすでに成功を収めているスターもいます。今回は後者に焦点を当てて、三谷作品によって新たな魅力を開花させたタレントたちを紹介していきます。

1:香取慎吾

三谷幸喜は、このSMAPのメンバーを相当買っているようで、今までにドラマ『合い言葉は勇気』『HR』『新選組』、映画『THE 有頂天ホテル』『ギャラクシー街道』など、数々の作品で重要なポジションを任せています。カメオ出演のちょい役で起用した作品も入れると、更に膨大な数になるでしょう。 もともと、『SMAP×SMAP』のコントなどで、人を笑わす演技の心得があったと思われる香取ですが、三谷と出会ってからは一気にその才能が開花。初めて三谷とタッグを組んだ2000年放送の『合い言葉は勇気』以降、コミカルな作風のドラマ・映画への出演が相次ぐようになったのは、偶然ではないでしょう。

中でも特筆すべきは、ドラマ『HR』。学園もののシチュエーション・コメディとして、毎回約30分間7台のカメラを使ってほぼノンストップで撮影されたという本作。ほとんど一発勝負の過酷な現場だったため、ゲスト出演者から「二度と出たくない」とよく言われていたそうです。そんなドラマの主役を張っていたのだから、三谷の“常連”となるのも理解できます。

2:山本耕史

その香取と大河ドラマ『新選組!』で局長‐副長の間柄だった山本耕史。彼が最初に世間から注目を浴びたのは16歳の時。フジテレビの大ヒットドラマ『ひとつ屋根の下』に出演した際です。ここで山本が演じたのは、気弱で心優しい青年。そのイメージで長らく語られていた山本でしたが、三谷は彼の違う魅力に気付いていたといいます。何でも「こいつ(山本)は"悪い奴"だ、その部分を引き出したい」と、脚本の執筆が決まる4年前から目をつけていたのだとか。そのため、かなり前の段階からスケジュールをあけるように、山本へ要請していたといいます。
結果、山本が演じた、厳しくも人間味溢れる土方歳三は、彼のキャリア最大の当たり役に。適性を見抜いた三谷の慧眼が光る逸話です。

3:佐藤浩市

佐藤浩市も三谷作品の常連の一人。映画『THE 有頂天ホテル』『清須会議』『ギャラクシー街道』に出演し、『ザ・マジックアワー』では主演を務めています。三谷曰く、佐藤は「人間の汚い部分をきちんと表現できる人」とのこと。併せて「浩市さんがCMで演じる、良き上司みたいな雰囲気が大嫌い」とも語っています。その言葉通り、三谷作品での佐藤浩市は爽やかさゼロ。反面、人間臭くて愛嬌のある役どころが多く、他の作品とは一味違った魅力を感じ取ることができるのです。

いかがでしたか? 上記にあげた3人の俳優は全員、2004年の大河ドラマ『新選組!』で共演を果たしています。やはり一年かけてじっくりと撮影に臨むため、脚本を手掛ける三谷としても、俳優個々の魅力を拾い上げやすいのでしょう。そう考えると、今期放送されている『真田丸』からも、また新しい「三谷組俳優」が誕生するかも知れません。

●文 ロックスター小島