『ONE PIECE FILM GOLD』
『ONE PIECE FILM GOLD』
©尾田栄一郎/2016「ワンピース」製作委員会

文=久保田和馬/Avanti Press

ついに7月23日(土)に公開された『ONE PIECE FILM GOLD』。今年の夏休み興行の目玉作品として、746スクリーンにて超拡大公開された本作は、その期待通り最初の週末2日間で観客動員82万830人、興行収入11億5500万円を記録し、動員ランキング(※興行通信社調べ)で初登場1位をもぎ取った。この数字は、今年の春に公開され、シリーズ最高の興収62.8億円を叩き出した『名探偵コナン 純黒の悪夢』に次ぐ、今年2位のオープニング成績である。さらに公開9日目の31日(日)には、観客動員170万名、興収23億円を突破するなど、快進撃を続けている。

前作公開時との比較で新作動向を読む

『ONE PIECE FILM GOLD』もまた、シリーズ最高の興行成績を挙げることができるのだろうか。2013年のお正月映画として公開され、興行収入68.7億円を記録した前作『ONE PIECE FILM Z』はオープニング2日間で観客動員114万人、興行収入13億7205万円と、300スクリーンで公開されたにもかかわらず今作を大きく上回っている。1スクリーン辺りの動員アベレージも、前作の3分の1と大きく出遅れており、単純に比較すると少々厳しい戦いになる予感が漂う。

とはいえ、夏休みとお正月ではやはり動向が異なる。少なくとも、8月末までの長い期間にわたり、安定した動員を期待できるのである。昨年の夏休みに、本作と同じように全年齢層向けのアニメとして公開された細田守監督の『バケモノの子』は、強力な大作がひしめく中で、ロングヒットを記録。最終的に58.5億の興行収入を記録した。

今年も『ファインディング・ドリー』や『シン・ゴジラ』をはじめ、8月には『ジャングル・ブック』などが控えており、やはり夏休みは映画興行が最も賑わう時期である。『ONE PIECE FILM GOLD』が、シリーズ最高成績を挙げるためには、これらの強力なライバルたちの中で、より多くの座席シェアを獲得する必要がある。簡単に言えば、シネコンのできるだけ大きいシアターを確保し続けられるかどうか、ということである。

2013年の前作公開時、後から公開された大作は『レ・ミゼラブル』のみで、同じく「週刊少年ジャンプ」掲載漫画である『劇場版HUNTER×HUNTER 緋色の幻影』が公開されるまで4週間に渡り、ほとんどの劇場が最大スクリーンで上映。動員ランキングでも1位を守り続けた。しかし今回は、2週目の週末動員で『シン・ゴジラ』に完敗。動員ランキングでは3位に落ちた。やはり、このシーズンは少々分が悪いのだろうか。おそらくこれまでの動向とペースを考えても、興行収入60億円までは安泰なラインだが、それ以上の伸びを見せるためには、リピーターの存在と、公開前から前例のないほど盛大に行われてきたプロモーションの成果にかかっている。

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『ONE PIECE FILM GOLD』
©尾田栄一郎/2016「ワンピース」製作委員会

訪日外国人までも視野に入れた幅広い客層が強み

これまでも根強い原作ファンに支えられてきた本作。原作者・尾田栄一郎が映画に携わるようになってから急激にヒット作となったのだから、やはり原作ファンの存在は大きい。今回はこれまで以上にリピーターが増加することは間違いない。通常の2D版に加え、長編ではシリーズ初の3D版や4D版の上映もあり、長年見続けてきたファンにとっては、より身近で作品の世界観を体験できる初めての機会なのだ。

また、入場者プレゼントとして配布されているコミックス「巻七七七」は500万人分用意されているので、ほぼ確実に観客全員の手に行き届くことになるが、「オールスターゴールドトランプ」は200万人限定なので、早いうちに争奪戦になるにちがいない。

昨年末から精力的に行われ続けたプロモーションは、初週のスタートダッシュからもわかるように、功を奏しただろう。公開後も、「LINE プレイ」や宝くじ「スクラッチ」とのタイアップ、さらには大ヒット記念舞台挨拶なども行う予定で、想像以上に息の長い興行が期待できるのではないだろうか。盛大なプロモーションの真価が発揮されるのは、夏休み興行が落ち着いてからになるだろう。

劇場に集う客層は前作以上に幅広い。これもプロモーションの効果のひとつだ。劇場には夏休みを迎えた小・中学生はもちろんのこと、カップルから大人のひとり客などの一般層まで足を運ぶ。午前中から夜になるにつれて、劇場内の年齢層は徐々に上がっていき、レイトショーの時間でも安定した客入りを見せており、まさに国民的アニメらしい姿だ。

さらに、Tジョイ系列の劇場では、「YOKOSO!EIGAKAN!」と銘打って、中国語と英語の字幕付上映が行われ、新宿バルト9ではアジア系の観客を中心に多くの外国人が熱狂する様子が見受けられた。本作は、すでに7月28日(木)に公開がスタートした香港とマカオを皮切りに、アジア各国から北米など、世界33の国と地域での公開が決定している。日本のみならず、世界中を『ONE PIECE』旋風に巻き込むことができるだろうか。

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『ONE PIECE FILM GOLD』
©尾田栄一郎/2016「ワンピース」製作委員会

『ONE PIECE FILM GOLD』
公開中
原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎(集英社 週刊「少年ジャンプ」連載)
監督:宮元宏彰 脚本:黒岩勉 音楽:林ゆうき 劇中曲:小島麻由美 キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅将
美術監督:小倉一男 美術設定:須江信人 色彩設計:永井留美子 CGディレクター:能沢諭 撮影監督:和田尚之 製作担当:稲垣哲雄
出演:田中真弓 中井和哉 岡村明美 山口勝平 平田広明 大谷育江 山口由里子 矢尾一樹 チョー 山路和弘
ゲスト声優:満島ひかり 濱田岳 菜々緒 ケンドーコバヤシ 北大路欣也
主題歌:「怒りをくれよ」GLIM SPANKY(ユニバーサル ミュージック)
©尾田栄一郎/2016「ワンピース」製作委員会