【映画の料理作ってみたらvol.16】夏だ! 映画だ! くだものシロップでかき氷だ!

コラム

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文=金田裕美子/Avanti Press

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こめかみにキンキン! 大進化中のかき氷

夏本番です。巷では気温が25℃以上になるとアイスクリームがよく売れ、30℃を超えると今度はかき氷が売れるようになるんだそうです。ここのところの気候はまさにかき氷日和。今回は暑い夏に欠かせないかき氷を作ってみます。

子どもの頃にお祭りなどでよく食べたのは、どぎつい赤や黄、緑色のシロップのかかった、いわゆるフツーのかき氷。「果汁?なんですかそれ?」と言わんばかりの人工的ないちごやレモン、メロンのフレーバーでした。でもあのジャンクな感じが楽しく、冷たいシャリシャリの食感が何とも魅力的で、こめかみのあたりにキンキン痛みを感じつつ「もう一杯食べたい!」と思ったものです。

大人になってからはあまりかき氷を食べる機会がなかったのですが、ふと気づくとここ数年、ニッポンのかき氷は大変な進化を遂げていたのでありました。希少な天然氷や、果物から作った本格的なシロップを使い、一年中営業しているかき氷屋さんがいくつも登場。カフェでランチ(ドリンク付き)が食べられるくらいの値段設定にもかかわらず、何時間も待ってやっと入店できるといった人気店も現れました。

シロップやトッピングの種類も果物ベースだけでなく、コーヒー、紅茶、きなこ、さつまいも、キャラメル、プリン、さらにはマスカルポーネをたっぷり使ったティラミスまで、もう無限にあります。ティラミスはまだデザートだからわかりますが、トマトやバジル、パルミジャーノ、オリーブオイル、胡椒などを使ったイタリアンかき氷なんてものもあるんだとか。なんだか進化しすぎて異次元に突入しているような……。あらかじめミルク味をつけた氷を削ってマンゴーなどをのせる、ふわふわの台湾かき氷の人気ももうすっかり定着しています。ここは私も、ただ氷を削ってスーパーで買ったいちごシロップをかけるわけには参りません。シロップから手作りしたいと思います。

『めがね』の氷あずき、『海のふた』のみかん水のかき氷

かき氷が登場する映画といえばまず思い出すのが『めがね』です。同作の荻上直子監督は、『かもめ食堂』で観た人すべてを(多分)「おにぎり食べたいっ」という気分にさせたお方。ここに出てくるかき氷もとびきり美味しそうで、またもや「ああ食べたい…」という気分にさせられたのでした。

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小さな南の島に、タエコ(小林聡美)がスーツケースを抱えてやってきます。泊まるのは、やたらマイペースな主人ユージ(光石研)が営む宿、ハマダ。ここには春になると島にやってきて、浜辺でかき氷屋を開く謎の女性サクラ(もたいまさこ)もいて、タエコが浜辺を通る度にかき氷を勧めます。はじめは「氷は苦手なんで」と頑なに断っていたタエコですが、島になじんでいくに従って少しずつ気持ちが変化していきます。

サクラのかき氷屋のメニューは、氷あずきのみ。飲み物もありません。大きな鍋に煮たあずきをお玉ですくってガラスの器に入れ、上から氷をシャッシャッシャッ。最後に透明な「スイ」をかければ出来上がり。真っ白な砂のビーチでのんびりこのかき氷を食べている人たちの顔がなんとも穏やかです。ちなみにこの映画のロケ地、与論島にある「味咲」というお店では、映画にちなんで氷あずきが「めがね」という名前でメニューに載っているとか。

もうひとつ、かき氷が第2の主役ともいうべき映画が『海のふた』。よしもとばななの同名小説の映画化です。舞台美術の仕事を辞めて故郷・西伊豆のひなびた町に帰って来たまり(菊池亜希子)は、海辺の倉庫を改装してかき氷屋を始めることに。手伝ってくれるのは、お母さんの親友の娘で、しばらく一緒に暮らすことになったはじめちゃん(三根梓)。ひと夏を共に過ごすうち、ふたりはお互いにかけがえのない存在になっていきます。

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まりの店のかき氷シロップも、ストイックに糖蜜、みかん水の2種類のみです。糖蜜はさとうきびを搾って煮詰めるという手間ひまかけたもの。みかん水はその名の通り、伊豆の名産でもあるみかんから作ったもの。でも店を訪れるお客さんたちは、「え、いちごはないの?」とちょっと不満そうです。

私も『海のふた』のみかん水と、『めがね』の氷あずきを作ってみることにします。でも、この店のお客さんと同じように、いちご味も食べたい。やっぱかき氷の基本はいちごシロップでしょ。それとメロンも。旬の桃やすいか、マンゴーなどフルーツなら何でも美味しいシロップができそうだし、抹茶やコーヒーもいい。それならいろいろ作っちゃえ! ということで、欲張って数種類のシロップに挑戦です。

季節のくだものでかき氷のシロップ作ってみよう!

まずは基本のプレーンなシロップ、「スイ」。これ、もちろんただの砂糖水ではありません。じゃ何が入ってるの? かき氷ブームの火付け役ともいえる湘南の超人気かき氷専門店、埜庵(のあん)さんのレシピを紹介している本『お家でいただく、ごちそうかき氷』を参考にさせていただきました。ちなみに埜庵の石附浩太郎さんは、『海のふた』に「かき氷監修」として参加されています。

スイの材料は、水、グラニュー糖、てんさい糖、水あめ、黒糖、そして粉ゼラチンと粉寒天。ゼラチンと寒天が入るのは、シロップにとろみをつけるためでしょうか。

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鍋に水を入れ、粉ゼラチンと粉寒天を加えてよくふやかします。火をつけてゼラチンと寒天をよく溶かしたら、水あめ、黒糖、てんさい糖を投入し、沸騰したら火を止めます。グラニュー糖を加え、完全に溶かして冷ませばスイの出来上がり。

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まずは氷あずきを試してみます。使ったかき氷機は、お祭りなどでよく見かける金属製のどーんとした手動かき氷機……を模した小型のプラスチック製。刃の角度を調節できるので、氷の粗さも好みに合わせて変えることができます。レトロな感じが可愛くて良いのですが、なんせプラスチックなので軽い。片手で機械を押さえていないと本体が動いてしまってハンドルが回せません。でも氷を均等に盛るには、器を回しながら削る必要があります。腕の本数が足りない。そこで、「かき氷やるよー」という言葉に釣られて集まった友人たちに無理やり手伝わせることにしました。

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器にゆで小豆(市販のものを買ってきちゃいました)を入れ、その上に氷を削ります。というか削ってもらいます。1人は削り係、もう1人は器回し係。バイトでかき氷を作った経験があるという器回し係は、生後6カ月の赤ちゃんをおぶっての大奮闘です。さらにそれを写真に撮る人、なぜか横で踊りだす人……なんだか凄い光景になってきました。しかしさすが経験者、途中で少し氷の形を整えたりしながら、きれいに盛ってくれました。美しい氷の上からスイをかけ、実食。

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まずはスイの部分だけ。おー。ただ甘いだけじゃない、香ばしいというか、とっても懐かしい味です。これだけでも十分いける。さらにざくざくと食べ進め、あずきに到達。ほおお。優しい甘さのスイとあずきのマリアージュが絶妙です。『めがね』の人々は、あの美しい砂浜でこんなに美味しいかき氷を食べていたのね……行ってみたい、与論……。などと遠い目をしている場合ではないのでした。次っ。

かき氷の王道、いちご、そしてメロンのシロップ、本物の果実編に行ってみます。レシピを見ると、フルーツの半量を基本のプレーンなシロップで煮て、残りの半量を生で加えてミキサーでブイーン、というのがフルーツを使ったシロップ共通の作り方のようです。

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いちごは旬じゃないので冷凍のものを用意。メロンは果実が黄色でなく緑色の、安心ですメロン略してアンデスメロンを用意しました。イチゴは半量を薄切りにしてシロップと一緒に鍋に入れ、火にかけます。メロンも半分に切って種の部分は網で漉し、実の半分を適当な大きさに切ってこちらもシロップと漉した果汁と一緒に鍋に入れて火にかけます。両方とも煮えたら火を止め、それぞれ残りの半量の果実と一緒にミキサーでブイーン。冷めればシロップの出来上がりです。

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まずいちごを食べてみます。うまく氷を盛っても、うまくシロップをかけるのはなかなか難しい。かけたところが溶けてへこんでしまうのです。かき氷屋さんはどうしてあんなにふんわりきれいにできるのか。今度かき氷屋さんに行ったらじっくり観察してみます。まあ私のはちょっとブサイクですが……美味しいっ。あの人工的シロップとはえらい違いです。これは立派な高級スイーツ。いちごシロップだけでも爽やかで美味しいし、ここに練乳をかければ濃厚ないちごミルクに。どちらも甲乙つけがたい美味しさです。

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次はメロン。ふーむ。美味しいけど、なんだかぼんやりしたお味です。酸味や香りの強いいちごと違って自己主張の弱いメロンは、シロップになってもやっぱりちょっと気弱な感じ。レシピ本には、メロンリキュールやメロンエッセンスを加えるといいと書いてあります。いちごシロップには高価でないいちごジャムを加えるといい、とも。なるほど。例の人工的赤・黄・緑のシロップは、実はみんな同じ味で、それぞれに色と香りがつけてあるだけなんだそうです。同じ味でも、色と香りで私たちが勝手に「いちご味だ」とか「メロン味だ」と受け取っているだけなのです。本物のメロンを使うと、はっきりした緑色にはならないし、香りもそんなに強くない。人工的なシロップにはない「味」だけで勝負!です。「これぞメロン!」というシロップを作りたい時は、緑色のメロンリキュール「ミドリ」などを加えるといいかもしれません。

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お次は『海のふた』のみかん水。映画では甘夏を使っているようですが、私は高知でその爽やかな美味しさに感激した「小夏」を使ってみます。これは地方によって日向夏とかサマーオレンジとも呼ばれる、皮が黄色くつるつるしたみかん。まずはよーく洗って半分に切り、搾り機で果汁を搾ります。残った皮の部分はざく切りにして鍋に入れ、シロップを加えて煮詰めます。これを漉したものと搾った果汁、プレーンなシロップを氷にかければ出来上がり。

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皮から出た苦みと果汁の爽やかな酸味、シロップの甘さが一体となって、これは美味しい! すーっと汗がひく感じ。見た目は地味ですが、かき氷って、こんなに上品になるものなんですね。

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爽やかなみかん水の次は、こってりピニャコラーダ。ココナツミルクに練乳とプレーンシロップを加えてよく混ぜます。そしてこちらもパイナップルの半量をシロップで煮て、生のパイナップルと共にブイーン。パイナップルは甘味も酸味も香りも強いので、生のままブイーンでもいけるかもしれません。

氷にココナツミルク&練乳をかけ、その上からパイナップル・シロップをかけます。おー、これはトロピカル・テイストで気分がアガるよ、アミーゴ! アガったついでに調子に乗ってラムもどぼっと加え、大人の味に。かき氷に釣られて集まり、手伝わされたみなさまの一番人気はこのピニャコラーダでした。

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もうひとつおまけ。かき氷じゃないけれど、最近の映画で最も印象的だった氷菓子は、何といっても『ズートピア』の「動物の足型アイスキャンディ」す。キツネのニックはゾウの店で巨大アイスキャンディを手に入れ、それを溶かして何十個もの小さな型で凍らせて転売する詐欺まがいの商売をしています。アイスキャンディは英語でpopsicleと言いますが、ニックが売っているのはpaw(動物の足)という言葉に引っかけたpawpsicle。かわいい。Pawpsicleと同じような形をしたアイスキャンディ型を発見したので、赤い色のジュースを入れて作ってみました。が。型からジュースは漏れるし、キャンディ部分はカチカチに凍らずにバーが外れてしまい、うまくいきません。凍らせるだけでお手軽に作れるのかと思ったら、これが意外と、というか一番難しかったのでした。

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何度も失敗したのちにやっと成功した1本

『めがね』も『海のふた』も暑い季節が舞台になっています。でも、今や夏だけの食べ物ではなくなったかき氷。お手軽な市販のシロップもいいですが、本格的なシロップも思ったより簡単に作れます。それぞれの季節のフルーツだけでなく、クリームやゼリー、コーヒー、梅酒など、いろいろ試してみるのも楽しそうです。

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【かき氷のシロップ・レシピ】
●基本のプレーンシロップ(スイ)
 水 水あめ てんさい糖 黒糖 グラニュー糖 粉ゼラチン 粉寒天
〈氷あずき〉 氷 ゆであずき スイ
〈いちごシロップ〉 いちご(冷凍でも) プレーンシロップ (いちごジャム)
〈メロンシロップ〉 果肉が緑色のメロン プレーンシシロップ (メロンリキュール)
〈みかんシロップ〉 みかん(種類はお好みで) プレーンシロップ
〈ピニャコラーダシロップ〉 ココナツミルク 練乳 プレーンシロップ パイナップル
〈『ズートピア』の足型アイスキャンディ〉 グレープジュースなど赤系のジュース 足型の型
●映画っぽい気分を盛り上げる小道具
 レトロな手動かき氷機 浜辺の小屋 浜辺で弾くウクレレ

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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