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(c)2015 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd.

香港映画黄金期をリードし、世界のアクション作品のクリエイターたちに多大な影響を与えた俳優チョウ・ユンファ。61歳となった現在は、円熟したオトナの魅力をたっぷりと漂わせているユンファですが、かつては友情とバイオレンスに彩られた数々の作品に出演し、たくさんの熱い血を流して生きてきました。

二丁拳銃スタイルをスタンダードにした立役者!

映画やドラマ、ゲームで見かける二丁拳銃でのガン・アクション。両手に握った拳銃からくり出される、激しい銃撃シーンに目を奪われた経験のある人は多いのでは?
キャラクターのタフでハードな面を描く役割であるのももちろん、何よりドラマチックでカッコいい! スタイリッシュなアクションシーンにおいて、今や定番とも言える演出。この二丁拳銃スタイルを世界スタンダードにしたのが、若き日のチョウ・ユンファなのです。

血と銃弾と男の友情。ジョン・ウー監督と築いた”香港ノワール”の世界

男前だけど、その大陸的なフェイスラインと、スタイリッシュかつ激しいガン・アクションとが結びつかない、という人も少なくないでしょう。若い頃の姿は劇団ひとりによく似ており、劇団ひとりも自分でネタにしているほど(オールバック姿はヤバいくらい!)。一方、「香港の小林旭」と呼ばれていたこともあります。1995年の『大陸英雄伝』で演じた、ギャング団を壊滅させた伝説の殺人王――。ライフルを持つその姿は、たしかに、日本映画“渡り鳥シリーズ”で小林旭が演じた主人公を彷彿とさせます! この『大陸英雄伝』でも監督を務めたジョン・ウーこそ、二丁拳銃スタイルのユンファを生み出した張本人。彼のアクション美学はクエンティン・タランティーノを始め多くのクリエイターに衝撃と影響を与えました。

そんなジョン・ウーとユンファの代表作が、『男たちの挽歌』(1986年)。黒社会に生きる男の絆、葛藤、信念が、おびただしい火薬と血しぶきの中で描かれたこの作品の大ヒットを機に、黒社会ものの「香港ノワール」というジャンルが確立します。 スローモーションの映像美、腰を抜かすほど圧巻の銃撃シーン、「もう一度、二人で巻き返そう!」…ユンファのセリフ、どれをとっても胸アツ! 私が男だったら即、サングラスでマッチ棒をくわえ、黒コートをたなびかせます…! もちろん、二丁拳銃で! こんな“なりきりユンファ”を生む世界観、なかなかありません。 さらに狼/男たちの挽歌・最終章』(1986年)では、ユンファ演じる殺し屋と、彼を追う刑事がお互いの男気を認め合い、友情を育みます。壮絶でシリアスなストーリーの中の、実に美しいシーンは鳥肌モノです!

英雄はスクリーンの中だけ? 帝王の庶民派プライベート

アクションスターに留まらないユンファは、『男たちの挽歌』シリーズのようなハードボイルドだけでなく、ラブストーリーからコメディまで、どれをとっても芸達者に魅せてくれます!
“アジア映画の帝王”という意味を持つ「亜州影帝」という異名を引っさげ、1998年、ジョン・ウーを追うようにハリウッド進出。世界のユンファとなりました。 資産100億円超とも言われていますが、移動はバスや地下鉄を利用するなど、いたって庶民派。さらに、市場で買い物をするのが好きで、しかも自撮りが大好き! SNSでは街中でユンファに遭遇した報告も多く、Facebookには「捕獲野生發哥(野生のユンファを捕獲せよ)」というコミュニティまで存在しているのです。

そのユンファが出演する映画『香港、華麗なるオフィス・ライフ』が、8月2日に公開されました。同作は、巨大総合商社が舞台のミュージカル・エンタテイメント。当然ながら香港映画もあの頃のままではないのです! ジョニー・トー監督、女優シルビア・チャンとは『過ぎゆく時の中で』(1991年)の黄金トリオ。ジョニー・トーもまた、香港ノワールで数々の傑作を生み出した名匠のひとりです。1980~1990年代、とてつもない輝きを放っていた香港映画の作り手たち。それぞれの美学を胸に、今現在の香港映画を楽しんでみましょう!

(文/三浦順子@H14)