Sick woman with thermometer is lying in bed. She has cold, flu and high fever.

「病と向き合うこと」は、人類が抱える普遍的な課題です。葛藤や苦悩の先に、生きる意味を見つめたり、あるいは、大切な何かに気付いたり…。そこには、破壊と再生の物語があり、人と人が織り成すヒューマンドラマがあります。それゆえに、古くから映画の題材としても取り上げられ続けてきたのです。

こうした『病を扱った映画』ですが、現在から過去の作品を遡っていくと、それはあたかも、時代を映す鏡のように機能しているのが分かります。中には、広く知られていない病気の認知に繋がり、社会貢献・道徳教育の役割を果たしたケースも。ここでは、そんな時代によって変遷していく「病を扱った映画」を紹介していきます。

1:醉いどれ天使(1948年公開)⇒肺結核

黒澤明が監督を務めた本作が公開されたのは、終戦間もない昭和23年。主演に抜擢された三船敏郎が、肺結核に冒された破滅的な生き方をするヤクザ役を熱演し、一躍スターの仲間入りを果たした作品です。 戦前は「国民病・亡国病」と呼ばれて恐れられていた肺結核。映画公開から3年後の昭和26年に結核予防法が制定され、抗生物質(ペニシリン)を用いた化学療法が普及して以降、「治る可能性が高い病気」になりました。

2:『生きる』(1952年公開)⇒胃がん

こちらも、クロサワ作品。『醉いどれ天使』から4年後、本作公開の前年に結核予防法が制定されて治療法が確立したことが、もしかしたら、志村喬演じる主人公の病名を「胃がん」にした理由かもしれません。 現在なら早期発見して切除したり、ステージが進行していたとしても化学療法などで延命措置もできるのでしょうが、本作ではそういった込み入った治療の描写はありません。あくまで手の施しようのない「不治の病」として描かれています。

3:『私を抱いてそしてキスして』(1992年年公開)⇒エイズ

80年代にアメリカで存在が明らかになったエイズ。南野陽子が患者役を熱演した本作は、日本映画で初めてエイズ問題を真正面から取り扱ったヒューマンドラマです。 当時、あまり知られていないその実態や症状が分かりやすく伝わるような内容になっており、病への過度な偏見・誤解を解くことにも貢献。結果、日本映画で初めて、厚生省(当時)の推薦を受ける作品となりました。

4:『明日の記憶』(2006年公開)⇒若年性アルツハイマー病

90年代から、日本において急速に進行している社会全体の高齢化。総務省が発表したデータによると2013年時には、4人に1人が65歳以上だと判明。それに伴い認知症・アルツハイマー病は多くの人が罹患するかも知れない国民病の一つのような扱いになり、その症状も広く世間で共有されるようになりました。
本作は、そんなアルツハイマー病が若くしてかかる可能性があることを示した作品であり、渡辺謙演じる広告代理店のやり手営業マンと、その家族の絆を描いた感動作です。

5:『ツレがうつになりまして。』(2011年公開)⇒うつ病

90年代以降、特に2000年代に入ってから急激に増え始めたのが、うつ病、パニック傷害、統合失調症、双極性障害などの精神疾患を扱った映画です。こうした傾向は、それだけ社会の中で、心の病をわずらう人が増えており、誰でも罹りえる一般的な病気として認知されてきた証拠といえるのでしょう。
この『ツレがうつになりまして。』というタイトルを、よく見てみてください。ツレ=夫がうつに罹っていることを「なりまして…」と少々かしこまりながらも、サラッと職場の先輩にでも告げるようなこの表題こそ、うつ病を初めとした精神疾患が、身近な病であるということを物語っているように思いませんか?

いかがでしたか? 時に病気の認知に貢献したり、生と死の問題を考えさせたり、人のあたたかさを感じさせたりする、病をテーマにした映画。時代の変遷と共に、扱う病名は変われど、そこには普遍的な何かが描かれており、私たちの心を揺さぶり続けるのでしょう。

●文 ロックスター小島

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