菅田将暉、広瀬すず…… “アンダー30”俳優の活躍が目立つ理由とは?

コラム

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文=高村尚/Avanti Press

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「キネマ旬報」表紙

「オリコン」「日経エンタテインメント」などエンタメ誌が相次いでアンダー30(U-30)の俳優特集を行い、若手俳優の注目度がいつになく高まるなか、老舗映画雑誌「キネマ旬報」が2号にわたり、「スクリーンで逢いたい若手俳優 男優篇」「同女優篇」を特集した。男優篇の表紙は菅田将暉、女優篇は広瀬すず。確かになにか言いたい気分にさせる熱量を感じる。なぜいまU-30なのか? 特集を行ったキネマ旬報編集部に聞いた。

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『四月は君の嘘』9月10日(土)全国東宝系にてロードショー
出演:広瀬すず、山崎賢人、石井杏奈、中川大志
© 2016フジテレビジョン 講談社 東宝 © 新川直司/講談社

表紙を飾った菅田、広瀬の魅力とは?

「キネマ旬報」が行った投票で上位に挙がった名前は、男優が池松壮亮、菅田将暉、神木隆之介、山崎賢人、大賀、坂口健太郎、若葉竜也ら。女優は、黒木華、門脇麦、広瀬すず、小松菜奈、二階堂ふみ、石井杏奈(E-girls)、松岡茉優ら。彼らの多くが、
①子役から活躍している
②モデルのキャリアがある
③「仮面ライダー」、もしくは朝ドラに出演
のいずれかに当てはまる。これは若くしてすでにそれなりの場数を踏んできたことを意味する。その間に彼らは、“可愛い”や“カッコいい”だけでは生き残れない“実力”がものをいう世界(=芸能界)で頭角を現すための、“確かな演技力”や“個性”を、なんらかの方法で勝ち取ってきた。

菅田将暉が獲得した“なんらかの方法”とは、共演者に合わせるように演技しながら、実は相手を自分のホームへと引きずり込む芝居(わざ)。『ディストラクション・ベイビーズ』の柳楽優弥や、『セトウツミ』の池松壮亮らとの芝居が顕著な例だ。それをファンは「演技がどうなっていくのか予想できない」と評価する。

広瀬すずは、ここ1~2年で、「現場に立ったときに自分が感じた気持ちを大事にする」という演技法を獲得した。いまの彼女の演技には、まさに役を生きているといった感がある。顕著なのは、9月17日に公開される『怒り』と、去年公開された『海街diary』のラスト。彼女に求められる演技はとてもよく似ているのだが、観客への響き方はまったく異なる。その違いはぜひ『怒り』を見て体験してほしい。広瀬に揺さぶられた心はなかなか静まらない。

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『何者』10月15日(土)全国東宝系にてロードショー
出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生
© 2016映画「何者」製作委員会 © 2012 朝井リョウ/新潮社

U-30の俳優が台頭してきた理由

U-30の俳優が目立つ背景には、デジタル放送による多チャンネル化でドラマの製作本数が増えたことがある。加えて、日本映画の製作本数が増加した影響も大きい。2005年に356本だった邦画の公開本数は、2015年には581本と225本も増えた。増えたジャンルは、若手監督が撮るエッジの効いたインディペンデント映画や、ティーンエイジャー向け漫画原作の青春映画など。U-30が活躍する役が一気に増えたのだ。

そうやって成長を続ける若手俳優らを応援する“ファン”という市場も拡大した。韓流を支えていた経済的&時間的な余裕がある“妙齢な女性層”が、U-30の応援団に回ったのだという。それゆえか彼らの出演する舞台や本など関連商品の売れ行きも好調だ。拡大する市場がU-30の活躍にさらに拍車をかける好循環。

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『溺れるナイフ』11月5日(土)TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー
出演:菅田将暉、小松奈菜、重岡大毅、上白石萌音
© ジョージ朝倉/講談社 © 2016「溺れるナイフ」製作委員会

演技だけじゃないその魅力

今後も『四月は君の嘘』『少女』『何者』『溺れるナイフ』など、U-30出演の話題映画は次々公開される。「キネ旬」のU-30インタビューを読むと、皆、それぞれストイックに演じることを考え、上を目指しているのがわかる。でも、彼らの魅力は演技だけじゃない。「役者という人生だけで終えるつもりはなくて、自分の人生として幸せじゃないとつまらない」という菅田将暉、「ユング心理学入門」を持って取材場所に現れる村上虹郎、「日本や社会のこととか、知らないといけないことは知るようにしている」という門脇麦と、誰におもねることない彼らの生き方や考え方、行動もしなやかで面白いのだ。オリンピックではないが「最近の若いやつは……すごい」と思わずにいられない。彼らが面白いとおもうことをやっている限り、これからも刺激的な日本映画が見られるのだと思うとワクワクする。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)