文=平辻哲也/Avanti Press

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『U-31(ゆーさんじゅういち)』8月27日(土)よりシネマート新宿・心斎橋 他、全国順次ロードショー
©2016 綱本将也・吉原基貴/講談社/「U-31」製作委員会

明暗分ける夏場の闘い

リオ五輪が盛り上がる中、Jリーグの戦いも激しさを増している。昨年から2ステージ制が復活したJ 1では、2ndステージ優勝、年間優勝、残留争いと順位ごとの争いに見応えが増した。連戦も続き、スタミナ勝負の夏場はJ1からJ3まで、どのカテゴリーにあっても、シーズン終盤の命運を決める大事な時期だ。

そんな中、Jリーガーの苦悩を描いた映画『U-31(ゆーさんじゅういち)』(監督・谷健二)が8月27日から全国で順次公開を迎える。2002年から2004年にかけて、青年漫画誌「モーニング」に不定期連載された綱本将也氏(42)の原作、吉原基貴氏漫画による同名コミックの映画化。テレビ朝日系「特命戦隊ゴーバスターズ」のブルーバスター役を演じた馬場良馬(31)が主演した。

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『U-31(ゆーさんじゅういち)』ではJ2徳島ヴォルティスのサポーターで知られる大杉漣も共演
©2016 綱本将也・吉原基貴/講談社/「U-31」製作委員会

ほかにJ2徳島ヴォルティスのサポーターで知られる大杉漣がジェム千葉社長役、サッカー番組の出演多数の勝村政信が広報マン役、スカパー「Jリーグハイライト」の司会、平畠啓史がサッカー雑誌の編集長役。芸能界きってのサッカー好きがキャスティングされている。

主人公は全盛期を過ぎ、「引退」の二文字がよぎるようになった31歳のJリーガー、河野敦彦。強豪の「東京ヴィクトリー」から戦力外通告を受け、古巣の弱小クラブ「ジェム千葉」に久々に復帰。移籍の条件として、エースナンバー背番号「10」を要求した河野は、元日本代表の肩書を売り物に動員を増やそうとする経営側の思惑に翻弄されたり、若手からの反発を受けながらも、黙々と練習をこなし、再起を誓う……というストーリーだ。

練習場もユニフォームも本物

河野敦彦(馬場良馬)
エースナンバー「10」を背負う河野敦彦(馬場良馬)
©2016 綱本将也・吉原基貴/講談社/「U-31」製作委員会

映画化にあたっては、コミックのモデルとなったJ2の「ジェフユナイテッド市原・千葉」が全面協力。千葉・蘇我にある練習場のユナイテッドパーク、併設のクラブハウスをロケ地として提供し、ユニフォームのサプライヤーであるKappa(カッパ)にも協力を求め、ユニフォーム、練習着はジェフ千葉と同じものが使われた。

JリーグではJ1の浦和レッズやFC東京がドキュメンタリー映画を製作しているが、劇映画としてJリーグのクラブがここまでフィーチャーされるのは初めてだろう。映画は今年1月、ジェフ千葉のホームスタジアム「フクダ電子アリーナ」で、クラブの新体制を披露する「キックオフイベント」で発表された。

「GIANT KILLING」の原作者、綱本氏によるコミックは、試合のシーンが重要な要素を占めるが、映画版では、年齢からくるサッカー選手ならでは、の苦悩が中心に描かれる。サッカー未経験の馬場は流通経済大学サッカー部の練習に混じって、役作りに臨んだという。「自分自身31歳という年齢で、役者を続けるかどうかを思い悩んだこともあって、気持ちでは分かる部分があった。千葉出身ということで、ジェフには親しみもあったし、選手を演じられて、光栄でした」と振り返る。

町田也真人「いつ終わるか分からない」

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映画『U-31(ゆーさんじゅういち)』に主演した馬場良馬(左)と ジェフユナイテッド市原・千葉の町田也真人選手(右)
photo by Tetsuya Hiratsuji

今季24人が退団し、19人が入団という大幅な入れ替えを行ったジェフ千葉。数少ない生え抜きとなった4年目のMF町田也真人選手(26)は昨季までの背番号「28」から心機一転、「14」を背負った。映画のリアリティについて、こう話す。「サッカー選手は毎年、契約更新があるので、いつ(選手生命が)終わるのか分からない。平均的に25、26歳で終わってしまうスポーツなので、そういう恐さと闘いながら過ごしています。試合に出て、勝たないと意味がない。そのために毎日できることを続けています」。背番号については「10番はサッカー選手なら、誰でも憧れる番号。自分は(オランダ出身の名選手ヨハン・)クライフが好きなので、『14』を下さいとお願いしました」と明かす。

俳優出身の広報マンが映画化に協力

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ジェフ千葉の経営企画部広報グループマネージャー、前田信治さん
photo by Tetsuya Hiratsuji

なぜコラボが実現したのか。ジェフ千葉の経営企画部広報グループマネージャー、前田信治さん(55)に聞いた。

「昨春ごろ、ぜひとも映画化したいとの熱いオファーを頂きました。原作はジェフのアシストスポンサーになっていただいている綱本さんの作品ですから、読んでいましたし、やるからには全面的に協力したいと思いました」。

前田さんは日本大学芸術学部映画学科演技コース出身。同期には脚本家で演出家の三谷幸喜さん、1学年上の同コースには真田広之、船越英一郎がいた。卒業後、大手芸能事務所「バーニングプロダクション」に入社し、小泉今日子のサブマネージャー、アイドル時代の長山洋子のチーフマネージャーを担当。27歳の時に退社し、大学時代の同級生が主宰していた東京の劇団を中心に俳優として活動。31歳の時に千葉に戻り、一般企業を経て、ジェフ千葉に入社したという異色のキャリアの持ち主だ。綱本氏とは大学の先輩後輩という関係もあった。

あまりに手厚いバックアップだけに、劇中の「ジェム千葉」ではなく、「ジェフ千葉」でよかったのでは、と思うほどだが、「あまり重ねすぎると、映画のリアリティがなくなってしまうので、あくまで『ジェム千葉』でお願いしました。それに、ジェム千葉はJ1のクラブ。我々も早くJ1にいかないと……」と前田さん。

設立25周年の名門、復活なるか

今年クラブ設立25周年を迎えたジェフ千葉は2010年にJ2に降格してから既に7年目。今季はニューイヤーズカップ優勝、柏レイソルとの千葉ダービー「ちばぎんカップ」に勝利する幸先のいいスタートを切ったものの、2月末に開幕したリーグ戦では苦戦続き。当初目標にしていた自動昇格圏内の1~2位どころか、プレーオフ圏内の6位以内からも遠のいてしまった。第25節のホーム清水エスパルス戦(7月24日)で3対4とまさかの逆転負け。関塚隆監督(55)を解任し、長谷部茂利コーチ(45)を監督代行に就任させた。

だが、反撃はこれからだ。今季キャリアハイの8ゴール(第28節現在)を挙げている町田も力を込める。「プレーオフは最後に勢いがあるチームが勝つ。最後に6位までに入っていくことができれば、流れに乗れる。そうなれるよう監督も選手も変わろうとしています。ジェフはJリーグ創設当時の10クラブの一つ。その誇りを持って闘っています。サポーターのみなさんも同じ気持ちで応援してくれていると思っています」。

サポーターの願いは一つだ。立ち上がれ、千葉。何を隠そう、ホーム戦では毎回ゴール裏から声を上げている筆者も、町田の活躍には期待している。

『U-31』
8月27日(土)よりシネマート新宿・心斎橋 他、全国順次ロードショー