なぜ彼は売れ続けているのか?七色に輝く俳優・池松壮亮総力特集!

コラム

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2016年の公開作品はなんと9本。トム・クルーズと共演したハリウッド映画『ラスト サムライ』(2003)でスクリーンデビューし、NHK大河ドラマ「風林火山」(2007)などで名子役として活躍したのち、テレビドラマ、映画、舞台で着実にキャリアを積み、特に2014年以降爆発的な人気を得た池松壮亮。なぜ彼は売れ続けているのか……? その理由を分析してみました!

陰のある&クールな役柄が似合う

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「大人ドロップ」DVD(価格:3,800円+税)は発売中 発売・販売元:バンダイビジュアル

子犬のような瞳、少年のようなルックスを持ちながら、どこかアンニュイな雰囲気を醸し出す池松は、やはり陰のあるキャラクターが似合う。その代表格がテレビドラマ「MOZU」シリーズだろう。本作では一卵性双生児、新谷和彦・新谷宏美の一人二役に挑み、幼いころから殺人の衝動を抱えた殺し屋とその兄を熱演。得体のしれない狂気をたたえたダーク&ミステリアスなキャラクターはお茶の間でたちまち人気となり、より幅広い層にその名が知れ渡ることになった。中性的な顔立ちのためか、女装シーンも違和感なくばっちり決まっているのがまたすごい。そのほか、高校最後の夏休みを通して成長する寡黙な主人公を描いた『大人ドロップ』(2013)では、橋本愛ふんするヒロインに「好きです!」と告白するシーンがあり、ときめく女子多数。菅田将暉と共演した『セトウツミ』(2016)ではクールなインテリメガネ高校生にふんし、親友役の菅田と延々と漫才のような掛け合いを展開。「2人の高校生が放課後にしゃべるだけの映画」にもかかわらずまったく飽きさせないのは、現場で打ち解けた菅田とのあうんの呼吸ゆえだ。25歳にして、学ラン姿がフツーに似合っていたのも印象的だ。

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『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)(C) 大場つぐみ・小畑健/集英社 (C) 2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

そして、「ダークサイドの池松」を堪能できるタイトルとして今注目すべきは大ヒット作『DEATH NOTE デスノート』シリーズの10年後の世界を描く続編『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)。本作の役どころは、前作で松山ケンイチが演じたLの後継者とされる天才探偵・竜崎。『セトウツミ』に続く共演となる菅田将暉、東出昌大と顔を並べ、圧倒的な存在感を放っている。Lのミステリアスさを踏襲しながらもワイルドなキャラクターに変化し、池松は水を得た魚のように生き生きと好演。白髪交じりの長髪、青い目、全身黒ずくめの服装、ひょっとこのお面を着けたルックスも含め、“正義の人物だが悪にしか見えない”竜崎のキャラクターは佐藤信介監督と佐藤貴博プロデューサー、池松の3人でディスカッションを重ねて作られた。この、ひょっとこのお面は前作で松山ケンイチがアドリブで用意したもので、原作にはないものだという。

年下キャラがハマる

角田光代原作の『紙の月』(2014)では、大女優・宮沢りえを相手に、人妻との情事にのめり込んでいく大学生を演じた池松。大学の学費の援助をきっかけに食事代、ホテル代、衣服など人妻から貢がれるうちに金銭感覚がマヒしていびつな関係になっていくという、見方によれば「悪い男」だが池松が演じるとニクめず、ラブシーンも決して嫌らしく見えないのが不思議だ。特に、電車の中のシーンで、人妻をじっと見つめる透き通った目を見たらどんな女性だって瞬時に恋に落ちてしまうはずだ。舞台「母に浴す」や映画『愛の渦』で組んだ三浦大輔によるdTVオリジナルドラマ「裏切りの街」では、寺島しのぶ演じる17歳年上の主婦と関係を持つフリーター青年にふんし、体当たりのラブシーンが話題を呼んだ。

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『だれかの木琴』(9月10日公開)(C) 2016『だれかの木琴』製作委員会

そして9月10日公開のサスペンス『だれかの木琴』では、常盤貴子演じるヒロイン・小夜子にストーカーされる美容師・海斗役に。「こんな美容師いそう!」と思わせる文句なしのはまり役だ。海斗が小夜子に「これからも御贔屓に」という営業メールを出したことから、連日メールを送り続け、自宅を突き止めて押しかけ、恋人の店にまで現れるという小夜子の常軌を逸した行動に追い詰められていく。海斗が客である小夜子に絶対服従する一方的な関係にはゾッとさせられるが、美容室で海斗が優しい手つきで小夜子の髪に触れ、変身させていくさまは実に官能的だ。劇中、小夜子の髪を10センチばっさり切るシーンがあるが、これは吹き替えナシだというから驚く。客とはいえここまで大胆なストーカー行為に出られれば法に訴えたくなるはずだが、それをしない海斗の心理も興味深く、今までにない池松の表情が見られる意欲作に仕上がっている。

『舟を編む』(2013)の石井裕也監督によるホームドラマ『ぼくたちの家族』(2013)では、妻夫木聡の弟役に。ある日突然、母親が余命宣告を受けたことをきっかけに秘められた家族の問題が噴出していくさまを描いた本作で、少々マザコン気味で無意識に厄介な問題は兄任せ、という典型的な次男を好演。ちなみに池松自身は長男で、姉は女優の池松日佳瑠。

セクシー!

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「海を感じる時」ブルーレイ(価格:4,800+税)&DVD(価格:3,800円+税)は発売中 発売・販売元:キングレコード(C)2014『海を感じる時』製作委員会

池松のフィルモグラフィーの中で、ある意味最も衝撃的と言えるのが高級マンションの一室で繰り広げられる乱交パーティーに集う男女の一夜を描いた『愛の渦』(2014)。演劇ユニット「ポツドール」を率いる演出・脚本家の三浦大輔が同ユニットの舞台を自ら映画化した本作で、無口なニートにふんした池松は女子大生役の門脇麦との激しいラブシーンに挑んだ。肉体的欲望がいつしか精神的なつながりを求めるようになっていく青年の心境の変化を、ほぼセリフなしで体現した。劇中ほとんど裸でいることもあり、「むき出し」の感情が強調されている。その後、立て続けに濡れ場の多い映画『海を感じる時』(2014)で主演。自我が薄弱で受け身なイメージの強かった『愛の渦』から一転し、自分に思いを寄せる後輩・恵美子(市川由衣)に関係を迫りながら、「女性の体に興味があっただけで相手は誰でもよかった」と言い放つツンデレな高校生役に。いずれもテアトル新宿で上映され、『海を感じる時』の9月13日から17日まで1日4回上映した興行収入の累計は、1日5回上映していた『愛の渦』に対して107%を記録。同劇場での記録的ヒットを打ち出した。

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「無伴奏」ブルーレイ(価格:4,800+税)&DVD(価格:3,800円+税)は10月5日発売 発売・販売元:キングレコード(C)2015「無伴奏」製作委員会

その後、直木賞受賞作家・小池真理子の半自伝的小説を『スイートリトルライズ』(2009)などの矢崎仁司監督が映画化した『無伴奏』(2015)では成海璃子、そして斎藤工とのラブシーンがセンセーションを巻き起こした。祐之介(斎藤)との秘めた関係を続けながらも、響子(成海)との出会いにも喜びを見いだしていく……。男女の間で揺れ動き苦悩する大学生という難役だが、ガラスのようにもろい繊細さを持つ哀しいキャラクターを見事に演じており、茶室での斎藤とのラブシーンには監督をして「池松くんの目から涙がこぼれたときなんかは、すごいものを映したなあと思いました」と言わしめた。

役の幅が広い

池松が売れ続けている理由の一つは、主役にとどまらない作品選びではないだろうか。『横道世之介』(2012)、『私たちのハァハァ』(2015)、『シェル・コレクター』(2016)、『海よりもまだ深く』(2016)、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)など2番手、3番手以降の役も引き受け、自己主張しすぎることなく、なおかつ埋もれることなくおのおののポジションをきっちりこなしている。リリー・フランキー主演の『シェル・コレクター』では貝類学者(リリー)の息子で、ボランティア活動に燃え環境汚染を正そうとする血気盛んな青年役に。若さゆえの妄信的な判断により奇病を治癒するとされる猛毒の貝を手に入れようとする、という池松自身のクールなイメージからはかなりかけ離れた役に挑んだ。一方、女子高生4人がロックバンド「クリープハイプ」のライブに駆けつけるため、北九州から東京へと旅するロードムービー『私たちのハァハァ』では、池松らしい謎めいた役で登場。「全然、池松君出てこないじゃん」としびれをきらす人もいるかもしれないが、ご安心を。ヒッチハイクをする女子高生たちを乗せた運転手の一人として登場し、あまりに警戒心のない彼女たちを「(大人の男は)危ない」とたしなめるシーンで女子高生の一人と濃厚なキスを披露! この矛盾した言動にはドキッとさせられるものの、あまりにも運びが自然でうっとりさせられてしまうという、何とも不思議なシーンに仕上がっている。キャバクラの店長を演じた真利子哲也監督『ディストラクション・ベイビーズ』では、堅気ではない“ワル”な魅力がさく裂している。

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『永い言い訳』(10月14日公開)(C) 2016「永い言い訳」製作委員会

本木雅弘主演、西川美和監督の『永い言い訳』(10月14日公開)では、「妻が死んでもこれっぽっちも泣けない」作家・津村(本木)のマネージャー役に。妻とともに亡くなった親友の子供たちの世話をすることで立ち直ろうとしているかのように見えた津村に、「奥さんが亡くなってから一度でもちゃんと泣きましたか?」と鋭い言葉を投げかけ、津村にさらなる変化をもたらすキーパーソンだ。そんな池松に対し、本木は「あのベビーフェイスからは想像もできない大人の仕事人。尊敬しています」と賛辞を送っている。脇役をいかにこなせるのかが、俳優として最も力量が試されることなのかもしれない。

運動神経抜群

多くのプロ野球選手を輩出した福岡大学附属大濠高校に通っていたころは、野球部に所属しプロ野球選手を目指していた。池松の野球経験を買ったのか、戦前のカナダ・バンクーバーに実在した日系人野球チームを描いた『バンクーバーの朝日』(2014)では、野球チームのメンバーに抜てき。ポジションはサード。野球コスチュームのほか、ホテルのボーイ姿も披露。車のトランクから荷物を出そうとする外国人女性に「運びます!」と駆け寄るも、「触らないで。汚らわしい」と人種差別を受けたときに見せるしゅんとした表情も印象的だ。

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「劇場版MOZU プレミアム BOX」ブルーレイ(価格:7,800円+税)&DVD(価格:6,800円+税)は発売中 発売元:TBS 販売元:TCエンタテインメント(C)2015 劇場版「MOZU」製作委員会 (C)逢坂 剛/集英社※掲載ジャケット写真は通常版

また、『劇場版 MOZU』(2015)ではテレビドラマのシーズン2のラストでは消息を絶った新谷和彦としてカムバック。フィリピンを舞台に、松坂桃李演じる青髪のテロリストとの対決シーンでは俊敏な身体能力を生かし、ジェイソンボーンばりの肉弾戦を披露。池松が登場するまで1時間以上あり、決して出番は多くないが、彼の「MOZU」におけるアクションシーンの集大成といった感の貴重なワンシーンとなっている。

筋金入りのシネフィル

日本大学藝術学部映画学科監督コース卒業というだけあって、かなりの映画好き。『だれかの木琴』は、池松がかねてから東陽一監督のファンで作品への出演を熱望しており、2014年9月に監督と対面する場が設けられたことから実現した。また、イランの鬼才アミール・ナデリ監督による西島秀俊主演の映画『CUT』(2011)の劇場公開時には一般客として来場し、「映画愛に満ちたすごい作品。100年、200年、ずっとこの先残り続けるステキな作品です。日本でこの映画が生まれて本当によかったと思います」と熱いコメントを寄せている。また、残念ながら2016年4月24日に終了してしまったInstagramでも横浜聡子監督作『りんごのうかの少女』(2013)、鈴木卓爾監督作『楽隊のうさぎ』(2013)、今泉力哉監督作『サッドティー』(2013)、ジャ・ジャンクー監督作『山河ノスタルジア』(2015)など観た映画の感想をつづっていた。

2012年には短編映画『灯火』で監督デビュー。テレビドラマ「Q10(キュート)」(2010)で共演した柄本時生とは親交が深く、『灯火』でも共演。その後、「Q10(キュート)」で共演した前田敦子や高畑充希らと共に「ブス会」を結成し度々集まっているようで、昨年5月には「ブス会」メンバーでトーク番組「ボクらの時代」(フジテレビ系)への出演が実現した。

飾らない性格

2014年11月9日に放送された「情熱大陸」(TBS系)では、ひたむきで不器用な池松の人柄が明かされた。無防備に繁華街を歩き、映画『ぼくたちの家族』の舞台挨拶では思いがこみ上げたのかうまく言葉が出てこない一幕もあり、その飾らない性格が印象的だった。「昔からしゃべるのが遅いと言われる」そうで、「本当に理想を言うと何もしゃべりたくない」のだという。激務の合間を縫って趣味の釣りに興じる姿や、撮影スタッフが福岡の自宅を訪れた際には野球に夢中だったころの幼少期、中学時代に合唱コンクールで伴奏する姿(「大地讃頌」)なども映し出され、楽屋に母親や姉ら家族が訪れた際の家族団らんなどプライベートな面にも踏み込んでいる。

最も印象的だったのが、2014年7月に上演された三浦大輔作・演出の舞台「母に欲す」の稽古中の様子。母の葬儀に間に合わなかった兄(銀杏BOYZの峯田和伸)をなじる場面では「感情のつながりがあまりわからない」と三浦から厳しいダメ出しをされていたが、兄と激しいつかみ合いのケンカをしたすえ号泣するシーンではあまりの迫力に三浦も圧倒され、スタッフ一同静まり返っていた。そして、チケットの値段を気にかけ、値段に見合う演技をせねばならないと自身を鼓舞するストイックさ。最後に「いい役者になりたい、いい作品を残したい、いい人間になりたい」と抱負を語る姿からは、どこまでも役者一筋な池松の全てが集約されているようだった。

今年11月5日には『続・深夜食堂』が、2017年春には『ぼくたちの家族』『バンクーバーの朝日』に続き3度目のコンビを組む石井裕也監督の新作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が公開予定。本作は、最果タヒのベストセラー詩集を実写化するもので、新人の石橋静河と共演する。

(構成・文:シネマトゥデイ編集部 石井百合子)

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