耳の聞こえない少女と積み重ねていく“今”…青春ラブストーリー映画『聲の形』で号泣!

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

koenokatachi-500

(c)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

「彼女は、自分に刺さった棘だった」――。耳が聞こえない少女へのイジメ、そして成長した彼女との恋というセンセーショナルな題材を扱いながらも、繊細な描写で読者に感動を与えたベストセラーコミック『聲(こえ)の形』がアニメーション映画化。8月26日に公開開始された新海誠監督の最新作『君の名は。』の動員が絶好調で、興収60億円も見込めると話題になっていますが、9月17日より全国公開される劇場版アニメ『聲の形』はその強力な対抗馬となりそうです。

ヒロインが徐々に孤立していく描写の生々しさ

石田将也(入野自由、小学生:松岡茉優)はガキ大将だった小学生時代、耳の聞こえない転校生の西宮硝子(早見沙織)に無邪気な好奇心を持った。ある出来事をきっかけに硝子は転校し、将也は周囲から孤立してしまう。それから5年の時を経て、別々の場所で高校生へと成長した2人。ある日、将也は硝子の元を訪れる――。

漫画ファンの間で評判になった原作の生々しいイジメ描写は、映画でもそのまま。硝子へのイジメに拍車がかかった理由に、「彼女のノートを代わりにとっていると自分が授業をちゃんと聞けなくなる」「音程を正確にとれない彼女の存在により合唱コンクールで敗退してしまう」というものがあります。もちろんイジメが良くないのは当然ですが、小学生が自分で消化するには難しい出来事だろうとも理解できるので、どうすればよかったんだろうと見ていて余計辛い……。とりあえず周りの大人がもっとちゃんとフォローしてあげて……。始めはクラスメイトから何かと構われていた硝子が徐々に疎ましい存在として扱われていく様子はとにかく恐ろしいです。

作画・演出の力で情趣ある“余白”が生まれた

原作は全7巻。繊細な心理描写が人気の作品だけに2時間ほどの上映時間に収まるのかと原作ファンから心配されていましたが、劇場版では、小学校時代の出来事をきっかけに人間不信に陥った将也の成長に焦点を当てた物語に再構成されています。

また、高クオリティな作画に定評がある京都アニメーションが制作、アニメ『けいおん!』で初監督を務め、『たまこラブストーリー』(14年)で文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門新人賞を獲得した同スタジオ所属の山田尚子が監督ということで、原作からカットされた部分を作画・演出の力で埋めています。ささいな仕草や表情、風景描写、音楽から「このキャラは今こんなことを考えている」と観客に理解させる手腕は、お見事の言葉以外ありません。良い意味で“余白”のある作品です。

奥手な2人のもどかしい恋模様にキュン!

将也の成長にスポットが当てられたといっても、硝子とのもどかしい恋模様は十分に堪能できます! 罪滅ぼしのためとはいえ自分に優しく接してくれる将也に惹かれる硝子、自分はかつてイジメ加害者だったという罪悪感があるためか硝子の思いにまったく気づかない将也。奥手な2人が並んで鯉にエサをやり、ぎこちなくも時間を共有するシーンにはキュンときてしまいます。そして、硝子の一世一代の告白、「ちゅき!」の名シーン。原作の大ファンだというaikoによる主題歌「恋をしたのは」が、物語の甘酸っぱい雰囲気を象徴しています。

『聲の形』の根底にあるのは、「人は変われるのか?」というヘビーな問いかけです。だからこそ恋愛モノは敬遠してしまいがちな、ちょっとひねくれた人にも見てほしい。ずっと自分の殻に閉じこもって生きてきた将也の目に映る世界が変わるラストシーンは、むしろそういう人にこそ響くのではないでしょうか? 最後は温かな涙が自然とこぼれる、アニメファン以外にも届いてほしい映画です。

(文/原田イチボ@HEW)

「ちゅき!」の名シーンは必見!?

toho-cinemas_logo

記事制作 : HEW

関連映画