『オーバー・フェンス』オダギリジョー&蒼井優 インタビュー

インタビュー

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

10年間、お互い嫌われていると思っていた

1

映画『オーバー・フェンス』は9月17日より全国公開

佐藤泰志の小説を原作とする『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く「函館3部作」の最終章『オーバー・フェンス』。本作で約10年ぶりに再共演を果たしたオダギリジョーと蒼井優が、二人が“雪解け”した撮影現場を振り返った。

10年ぶりに訪れた雪解けの機会

Q:『蟲師』以来となる再共演に期待したこと、改めて印象に残ったことはありましたか?

オダギリジョー(以下、オダギリ):いまだに覚えているのは、『蟲師』の控室で二人きりになったとき。かなりやばい状況になりました。撮影当時の蒼井さんはきっと10代で、そもそも10代の女の子と何を話していいかわからない。下手に話し掛けて「怖い」と思われてもイヤで、結果的に大沈黙で終わったんですよね。

蒼井優(以下、蒼井):そうですね(笑)。

オダギリ:「蒼井さん、きっと僕のこと嫌っているんだろうな」と思いながら、その後の10年を過ごしてきました。それが今回、飲んだりしゃべったりするうちに、雪解けというか(笑)。僕があのとき話し掛けなかったことから、蒼井さんも「オダギリさんに嫌われていると思っていた」と伺って。お互いが勝手にそう思い込んでいたんですね。和解できたことが、すごく良かったです。

蒼井:(笑)雪解けした瞬間、すごく盛り上がりましたよね。私は人見知りが最も激しかった時期で、オダギリさんの「どうしていいかわからない」という空気をすごく感じながら、「私もわかりません」と。「何で先輩に気を遣わせてしまっているんだ」と思いながら、長い時間が経ったんです。だから今回、私との共演をよくOKしてくださったなと(笑)。

オダギリ:そこまで思ってたんですか?(笑) 10年の間に、蒼井さんは舞台でいろいろな経験を積まれたんでしょうね。それがハッキリと見えて、『蟲師』でご一緒したときの10代の蒼井さんとはやはり違いました。演技の幅が大きく広がったような気がして、一緒に芝居をしていて何度も驚かされました。

蒼井:オダギリさんを見て、「こんなに力が抜けていていいんだ。こんな時間まで主役の方が飲んでいていいんだ」って(笑)。「不良先輩」って、みんな呼んでいました。

オダギリ:自覚が足りないところがあるかもしれないです(笑)。

蒼井:いいえ。今までご一緒した主演の方は、監督と一緒に作品の中心にいる感じがしました。でもオダギリさんは、中心から一番離れた場所から見守っている感じがしたんです。「こういう作品との関わり方もあるんだ」とすごく気が楽になりました。

鳥の求愛ダンスのときだけ自由になれた

2

Q:妻(優香)に見限られ、故郷・函館の職業訓練校に通う白岩(オダギリ)と、鳥の動きを真似るホステスの聡(蒼井)。演じられたキャラクターについては、どのように捉えていましたか?

オダギリ:言葉にするのは難しいのですが、聡はいろいろなバランスを崩していることが見てとれる。一方、白岩は何となく全てを笑ってごまかしながら、何でもない日常を過ごしているキャラクターです。だけど実は、白岩も大きく破綻しているんです。白岩はその破たんを隠そうとしているだけで、聡と似ている。だからこそ惹(ひ)かれ合うと思うんです。似た者同士が惹(ひ)かれ合うことを強く印象に残すために、あくまでも表面的には普通であることにこだわりました。

蒼井:私は、やり過ぎないように気をつけようと思っていました。でも実際に撮影が始まってみると、自分と役との境目がわからなくなっていきました。しまいには白岩の冷たい視線が、オダギリさんの視線なのかわからなくなって(笑)。役に対して客観性を持てなくなったことが、とても不安でした。

オダギリ:(笑)。

蒼井:こんな経験は初めてでしたが、あるときから諦めました。このままいったらどういうキャラクターになるのかと、落とし込むつもりでやっていきました。鳥の求愛ダンスをするシーンがあるんですが、大変かなと思っていたら、そのときだけ自由になれたんです。

計算を超えたうねりを引き起こした

3

Q:聡の部屋で二人の感情がぶつかり合うラブシーンは、生々しくて胸がヒリヒリしました。

オダギリ:最終日に撮影したんです。この映画の大きなターニングポイントとして存在する、どれだけ大切なシーンかをわかった上で、それまでの撮影を終えてきました。いわば逆算が生むシーンとして最後に撮れたことは、撮影方法としてすごく面白かったと思います。きっとお互いに計算を超えた部分で、何かが生まれ、あるうねりを引き起こしたシーンでした。

蒼井:リハーサルを何回かやったのに、結局本番は全く違うことになりました。あのシーンは、みんながドキドキしてヘンな汗をかきながら、捨て身で撮影しました。ひどい化学反応を起こしたシーンでしたね(笑)。

オダギリ:僕はたぶん、リアルにうろたえていたんじゃないかな(笑)。なかなかああいう経験はしないと思います。

蒼井:今後もないでしょう……と言えるくらいです。

【オダギリジョー担当】ヘアメイク:砂原由弥 スタイリスト:西村哲也
【蒼井優担当】ヘアメイク:ナライユミ スタイリスト:森上摂子(Shirayama Office)
取材・文: 柴田メグミ 写真: 尾藤能暢

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)

関連映画