“奇跡”は“必然”だった…155人全員生還の裏側を描いた『ハドソン川の奇跡』

コラム

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『ハドソン川の奇跡』
『ハドソン川の奇跡』
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved
Courtesy of Warner Bros. Pictures

文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪/Avanti Press

そういうことだったのか、あの表情。クリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演の映画『ハドソン川の奇跡』を見ながら、7年半前に感じた違和感の理由が解き明かされていくようだった。

2009年1月、米ニューヨークで起きたUSエアウェイズ1549便の不時着水事故。155名を乗せた飛行機が離陸直後に全エンジン停止のトラブルに見舞われ、マンハッタン付近のハドソン川に不時着水したものだ。見慣れたニューヨークの景色のなかで、水に半分沈みかけている飛行機、極寒のなか救助される人々の姿、乗員乗客全員が無事であったというニュースに、だいぶ暖かい西海岸にいながら、身震いがするほどの興奮と希望を感じた。そしてその後、管制塔から近隣の空港に緊急着陸するよう指示されたにもかかわらず、自らの経験値と状況判断でハドソン川への着水を実行したという機長の姿が明かされるにつれて、人々の熱狂は最高潮に。サリー機長ことチェスリー・サレンバーガー機長は、瞬く間に英雄となった。

“Yes We Can”と“Hope”を掲げ、アフリカ系アメリカ人として初の大統領に就任したバラク・オバマ大統領の就任式を5日後に控えた時期。まるでその言葉を体現するかのような奇跡の報道に夢中になる一方で、メディアに引っ張りだこのサリー機長の顔に、動揺と困惑、ともすれば苦渋ともいえそうな表情が映ることに違和感を持ったことを覚えている。

サリー機長の側に立ち“後遺症”を体験

『ハドソン川の奇跡』
『ハドソン川の奇跡』
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved
Courtesy of Warner Bros. Pictures

『ハドソン川の奇跡』は、メディアを見て熱狂していた私たちが、反対にサリー機長の側に立ち、この生還劇とその“後遺症”を体験することを可能にした。「自分の仕事をしたまで」の自分が1日にして英雄と呼ばれるようになる違和感。家族と無事を喜ぶ間もなく、警備付きのホテルに缶詰めとなる窮屈感。タレントでもないのにフラッシュとスポットライトを浴びる圧倒感。まるで911同時多発テロの映像のように、機体がマンハッタンの高層ビルに衝突する白昼夢を見た直後に、事故について詳細なインタビューを受ける恐怖感。そして、管制塔の指示に従わず、独自で着水を実行したことに対する事故調査委員会の追求により、英雄は容疑者として扱われるように……。不時着以外の方法はなかったのか? 独自の判断で乗客たちを命の危険にさらしたのではないか? 執拗な尋問と繰り返される事故回避シミュレーションは、サリー機長とジェフ副操縦士、その家族を極限の精神状態に追い込んでいたのだ。

真のハッピーエンディングをもたらした重要な存在

『ハドソン川の奇跡』
『ハドソン川の奇跡』
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved
Courtesy of Warner Bros. Pictures

「ヒーロー」と呼ばれるたびに、「ともに危機を乗り越えた乗員乗客、救助隊たち、すべての力が成したこと」と繰り返していたサリー機長。同作は、その言葉も裏付けている。一時は、サリー機長の判断に疑問を呈した管制塔も、容疑者扱いした事故調査委員会も、この生還劇に真のハッピーエンディングをもたらした重要な存在なのだ。

サリー機長役のハンクスは言う。「今の政治的ムードのなかで、人々は機関や企業、互いへの信頼を失っているが、それはナンセンスだ。すべてが堕落しているわけではない。この作品は、責任を全うしようとする人々や組織があることを証明しているんだ」。英雄の葛藤を感じ、関わったすべての人々の献身を知った今、“ハドソン川の奇跡”は、最高に希望に満ちた“ハドソン川の必然”だったのだと思う。

『ハドソン川の奇跡』
9月24日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー
監督:クリント・イーストウッド(『アメリカン・スナイパー』『硫黄島からの手紙』)
出演:トム・ハンクス(『ダ・ヴィンチ・コード』『フォレスト・ガンプ/一期一会』)、アーロン・エッカート(『ダークナイト』)、ローラ・リニー 他
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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