『金メダル男』内村光良監督 インタビュー

インタビュー

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まだまだ「映画男」とは言えません

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映画『金メダル男』は10月22日(土)より全国公開

あらゆるジャンルで一等賞になることを目指す男の半生をコミカルに描いた『金メダル男』。自身の一人舞台を原案に、原作・監督・脚本・主演の1人4役を務めた内村光良が、自身の核でもある“お笑いと映画”について語る。

テレビや舞台とは違う映画のお笑い

Q:内村監督も本作の主人公の泉一と同じく、“神童”と呼ばれていたそうですね。

そうですね(笑)。しつこいぐらいにめげない、諦めない、そういうポジティブな気持ちがハンパない一人の男の半生を描いた話ですが、僕と泉一は同年齢ですし、野球部と剣道部を掛け持ちしていたことなど、僕が実際に経験したエピソードも織り込んでいます。だから、自分の色が一番出ている映画だと思います。好き嫌いはあると思いますが、僕の笑いの趣向がいちばん露骨に出ている映画になったといえます。

Q:『ピーナッツ』『ボクたちの交換日記』に続く、3作目の監督作でもコメディーというジャンルを選んだ理由は?

自分が監督するとなると、やっぱり笑いが欲しくなっちゃうんですよ(笑)。でも、コメディー映画を撮るのは楽しいのと同時に、プレッシャーでもあります。本職の部分なので、言い訳ができませんから……。長年やってきているので、舞台の笑いとテレビの笑いについてはわかるんですが、やっぱり映画の笑いは違うんです。至近距離の舞台やテレビと違って、スクリーンを通して観ることで、笑いの間が変わってきます。監督を2作やらせていただいて、音感や視覚的にわかりやすい、ベタなものがいちばん受けることもわかりました。だから、そういう笑いも入れたり、シュールでわかりにくい笑いも入れていたり、かなり挑戦的な作品になっていると思います。

Q:2011年に上演された一人舞台からの映画化にあたり、難しかったことは何でしょうか?

たとえば無人島の描写とか、舞台の場合はある程度お客さんの想像力にお任せすることができます。でも映画の場合、それを全部映像化しなければいけない。そういったところを脚本で直していく作業が大変でもあり、楽しくもありました。ちなみに、舞台版では無人島で巨大トカゲが襲ってきたんですが、CG部さんが「それは予算的にちょっと……」と言われていたので、映画版では巨大ハゲタカに変えました(笑)。

キャラクターの演出はギャップから?

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Q:今回の映画版では、『ラッシュアワー』でのジャッキー・チェンばりのアクションも披露されていますね?

プロデューサーと「映画的な見せ場がほしい」という話になっていたんですが、サウナに入っているときに、ショッピングセンターでのアクロバットのPRというアイデアが思い浮かびました。垂れ幕にぶら下がって落ちてくるアクションですが、やっぱり怖いんで、あんまり何度も落ちたくなかったんですよ。でも、別アングルから撮らなきゃいけなかったので、なんだかんだで6~7回はやっています。最終的に大好きなジャッキー・チェンへのオマージュみたいな仕上がりになりましたね(笑)。

Q:少年時代の泉一を演じた知念侑李さんなど、キャストのみなさんは普段のイメージと異なる印象を受けましたが、それは内村監督の狙いですか?

そうですね。知念くんはテレビ番組の「スクール革命!」でずっと一緒なので、ある程度人柄はわかっていたんです。でも、そこから一歩先というか、「イケメンの彼にもっと変な顔をしてもらったら?」「優等生イメージが強い彼にドタバタ動いてもらったら?」といったことを考えて演出しました。木村多江さんは「幸薄いイメージが強いけれど、この人で笑わせたら面白いはず」と思ったところから。ダンスで全国大会にも行っている土屋太鳳ちゃんは「知念くんとアホな鳥ダンスを踊ってくれたら面白そうだな」とか、平泉成さんは「カツラを被ってもらえば、どこかチャーミングに見えるかも」という、ギャップみたいなところから演出しました。

Q:ほかにも豪華キャストが劇中、続々登場しますが、印象的なエピソードはありますか?

お客さんを飽きさせないように、次から次に出てもらった方が楽しいと思ったので、いろんな方に協力してもらったのですが、ココリコの田中(直樹)は、朝イチで栃木県に来てくれて、ワンテイクですぐ東京に帰っていきましたね。ムロツヨシくんが演じた劇団の座長は、若くて精悍なイメージだったんですが、なんか違いましたね(笑)。だから、撮影前に「やせてくれ!」とお願いして、カツラを着けてもらって、なんとかカタチになりました。あと、普段はテレビ局のワチャワチャしたところでしかお会いしてないので、あまり気付かなかったのですが、(笑福亭)鶴瓶師匠は黙っているだけでも画になる映画の人だと、モニターを見ながら思いました。メガネは自前のものを「どやろ?」って持ってきてくださって。アフロ頭時代にかけていたメガネを着けてもらったときは、頭に黒い粉を振って毛量を増やしてもらっています(笑)。

やっぱり自分は「お笑い男」

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Q:劇中、泉一はアイドル・北条頼子の「私のサンクチュアリ」の歌詞に心動かされますが、北条頼子のモデルは? また、内村監督にとってのサンクチュアリ(聖域)とは?

北条頼子は、キョンキョン(小泉今日子)や(中森)明菜さん、柏原芳恵さんなどの1980年代にいたような女性アイドルのイメージがベースですが、一発屋で終わってしまう悲しい感じも入っていますね(笑)。あと、聖域ですが、映画館やスタジオコントのセットとか……。僕、とにかく暗いところが好きです(笑)。映画館の暗闇にスッと映写される瞬間のワクワク感とか、お客さんが入ってないちょっと暗めのスタジオでスタッフと一緒に粛々と作業していく感じとか、もうたまらないですね。

Q:前2作に続き、本作も世の負け犬たちに温かいエールを送る作品に仕上がっていますが、内村監督がお笑いを始めた後、挫折から立ち直ったきっかけを聞かせてください。

映画には何度も助けられていますし、いろんなことを教わったと思いますね。でも、「この一本!」というのは、やっぱり決められない。仕事のスケジュールが空いたときにヒッチコック(監督)の映画ばかり観ていたとか、『男はつらいよ』シリーズや『007』シリーズを全作観ていたとか、なんか片っ端から観ちゃうんですよ。そうやって映画に癒やされていると、また仕事のスケジュールが埋まり始める。合間をみてネタは書いていましたけど、「なんとかなるんじゃないかな?」って、どこかで楽観的な自分がいるんですよ。焦らずにそれぐらいがちょうどいいと思うんです。

Q:内村監督自身は「何男」だと思いますか?

お笑いの仕事を32年もやっているということは、やっぱり「お笑い男」じゃないでしょうかね。上京したときは、お笑い芸人になるとは思っていなかったので、今振り返ると、ここまでお笑い人生にどっぷり漬かっているのは不思議な気がします。映画を3本監督したとはいえ、まだまだ入口に立っている程度で、学ぶべきことも多いので、「映画男」とは言えませんね(笑)。ただ、1本、2本と経験したうえでの3本目なので、台本の直しや現場でのカット割、急な変更、編集にも悩まなくなった。胸を張ってスタッフの前に立って旗を振れることで、ちょっとは腕が上がったと思えるようになりました。

取材・文:くれい響 写真:尾藤能暢

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記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)

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