やっぱり女は怖かった…グロテスクな欲望を美しく描く映画で“女の狂気”に触れる

コラム

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映画『エヴォリューション』(C)LES FILMS DU WORSO • NOODLES PRODUCTION • VOLCANO FILMS • EVO FILMS A.I.E. • SCOPE PICTURES • LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

女性を表すのによく使われる言葉に“女は怖い”というのがありますが、女性が胸に秘めている欲望や狂気などの怖さが露わになった作品が、今秋3作品公開されます。自分の幸せを願っていたはずが、いつの間にか欲にとりつかれ、恐ろしい展開へと進むレールに乗ってしまう作品も……。女性を狂気へと駆り立ててしまうのは、なぜなのでしょうか?

“命”を司る女が見せる美しい悪夢…フランス映画『エヴォリューション』(11月26日公開)

『野火』などで国際的な評価を受ける映画監督の塚本晋也と20年来の親友だということでも知られるルシール・アザリロヴィック監督の最新作。少年と女性しかいない、人里離れた不思議な島に住む主人公の少年・ニコラが、徐々に島の住人の秘密に気づきはじめて……。

スペイン・カナリア諸島、ランサローテ島で撮影されたという動く油絵のような溜め息ものの美しい海中シーンから始まる物語。母親と暮らす島のすべての少年たちは、奇妙な医療行為を定期的に受けていますが、「なにかがおかしい」と気づき始めるニコラは、夜半に出かける母親の後をつけます。島に住む女性たちのいわゆる女らしい優しさや包容力が徐々に裏切られていく展開に、背筋が寒くなっていきます。

同作で描かれるのは、美しい女性たちが、幼さが残る少年期までの男性しか必要としない新しい世界。男性に支配されがちなこの世界とは違い、女性が男性(少年)を完全に支配する生態系です。ニコラに特別な感情を抱く看護師の存在が、ストーリーに安らぎを与えてくれますが、自分たちの種の繁栄のために当たり前のように冷酷さを発揮する女たちの世界は目を背けたくなるほど。しかし同時に幻想的な美しさが漂う作品です。

本能に従う女の性(さが)が殺気立つ『五日物語』(11月25日公開)

今作は400年前に誕生した世界最古のおとぎ話『ペンタメローネ(五日物語)』を元に、現代の女性にも通じる3つの女の欲望が描かれた大人のファンタジーです。

子供を授かりたいがために、他の命を犠牲にしてまでも手に入れようとする女王。国王に歌声を見初められ、不思議な力で若さと美しさを手に入れた老婆とその妹。醜いオーガ(鬼)と結婚するはめになった、大人へのあこがれを抱く王女……。

どの女性の欲望も、1人でいることの恐れや寂しさから生まれるものかもしれません。それは誰かと共存しようとする本能があるからこそ感じるものなのではないでしょうか。本能に基づいているからこそ、願いを叶えるために殺気立ち、醜い行動へと駆り立てられてしまいます。元画家である監督による色彩豊かな映像美がより一層、流麗で残酷な女の姿を浮き彫りにしている作品です。

死を意識することで深まる少女たちの友情を描いた『少女』(公開中)

「人が死ぬ瞬間を見たい」という思いに捉われた2人の女子高生、由紀(本田翼)と敦子(山本美月)。そこへ転校生の紫織(佐藤玲)も加わり、2人の友情にも変化が訪れます。

生きがいのように書いていた小説を奪われて自暴自棄になった由紀は、理不尽な扱いをしてきた教師を陥れたり、人の死を見るために小児科病棟でボランティアをはじめたりするなど、自分の願望のままに行動します。女子高生が社会的に弱い立場だとわかると、そこを逆手にとる冷静さも持ち合わせています。やがて登場人物たちは、劇中に度々出てくる“因果応報”の言葉通り、悪意が発端のものは悪行となって自分の元に戻り、良心によって行われたことは希望的な方向へと導かれることを知っていくのです。

他人に共感しやすいのが女性の良いところだったりしますが、特に学生時代はアイデンティティにゆらぎもあり、良くも悪くも他人の影響を受けやすい状態。その年代特有の不安定さが魅力的でもあり、ハラハラもさせられる作品です。

これらの作品を通して見てみると、女性の欲望は自分の存在を示したいという強さの表れでもあります。だからこそ、時に狂気とも似た怖さとなってしまうのでしょう。女性にはもっと承認が必要なのかもしれません。

(文/岩木理恵@HEW)

記事制作 : HEW