ロブ・ゾンビがまたやった!“12時間限定”ハロウィン殺人かくれんぼ 『31』で原点回帰

コラム

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ロブ・ゾンビは凄い。インダストリアルメタル・ミュージシャンとしての成功もさることながら、映像作家としての才も恐ろしく高い。長編映画監督デビュー作の狂った遊園地ホラー『マーダー・ライド・ショー』(03)で早くも監督としての手腕を見せつけ、続編となる『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』(05)では、バイオレントなゾンビ監督流アメリカン・ニューシネマを作り上げた。

その後はスラッシャー映画の金字塔をリメイクした『ハロウィン』(07)を全米1位に登場させ、シリーズ第2弾『ハロウィンII』(09)、魔女系オカルト『ロード・オブ・セイラム』(12)と順調に監督作を増やしている。その映像センスと演出力が評価されて人気海外ドラマ「CSI:マイアミ8」のゲスト監督に招待されたほか、日本未公開ながら奇抜な内容のテレビアニメも監督。自身の楽曲のPVも演出する八面六臂の活躍ぶりで、手掛けた映画のほとんどで自ら脚本を書き、劇中音楽も担当している。

12時間限定のハロウィン殺人かくれんぼ

ジャンルを超えて才能を発揮できる器用な人は職人となり「それはやらなくても…」な企画に次々と手を付ける事が多いが、ゾンビ監督は長編監督デビュー作から変わらぬ地平にいる。ホラー、バイオレンス、血の臭いがするものを自らに引き寄せて作り上げる。前作『ロード・オブ・セイラム』は何気ない会話からディテールを浮かび上がらせることに重点を置き過ぎてパワーダウン感は否めなかったが、10月22日公開の映画『31』は『マーダー・ライド・ショー』にあったパワフルなテンションが宿る爽作となった。美味しいアイスを沢山売っているお店の話ではない。

ゾンビ監督に一貫しているのは、1970年代テイスト。ヒッピー文化が色濃い牧歌的雰囲気の中で、血まみれの惨劇が巻き起こる。今回も映像の質感、ロケーション、劇中曲すべてにおいて“1970年代の自由奔放なアメリカ”が演出される。キャンピングカーに乗り込み、カーニバルのドサ周りをするヒッピー風の男女が、ハロウィン当日の道中で囚人服集団から襲撃を受ける。廃工場のような施設に監禁された彼らは力を合わせて脱出を試みるが、グロテスクなピエロの格好をした狂人が刺客として次々と投入され、12時間限定の殺人かくれんぼをスタートさせる。

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牧歌的70年代から急転直下の惨劇

巻頭20分ほどは車中の会話で構成され、ロードムービー調の節々から70年代アメリカの自由奔放さがゆったりながらも強調される。しかし夜になり、道のど真ん中に謎の案山子を見つけた途端、画面は一転血まみれに。70年代のアメリカという今では非日常となった中に、さらなる非日常がぶち込まれる。サバイバル劇に転じてからの荒々しいテンションはそれまでの牧歌的雰囲気がウソのようで、不穏さ皆無からの急転直下の展開にいたる緩急は抜群。そのテンションの一翼を担っているのが6人からなる狂人ピエロたちだ。

『ブルース・リー/死亡遊戯』(78)のレッド・ペッパー・タワーの戦いのように、一人倒すと次のフロアで新たな敵が登場するという流れだが、それぞれのピエロのキャラクター性が濃く、バラエティにも富み、シンプルな展開を飽きさせることがない。絶命の瞬間まで外国語で騒ぐナチス男Sick-Head、電気ノコギリのSchizo-HeadとPsycho-Head、ドイツ人男女2人組Death-HeadとSex-Head、説教好きの二刀流Doom-Headと、その造形にゾンビ監督の底知れぬ悪趣味イマジネーションが発揮されている。

幽霊?怪物?いいえ、怖いのは人間です

その狂人ピエロたちを、理解不能なモンスターとして描き切らないのもミソ。2人組は相方を人質に取られると取り乱し、許しを請いて泣き叫ぶ。Doom-Headに至っては荒れ果てた日常の生活スタイルが描写されるし、ピエロメイクを施した後に気持ちを高めるために、自分の顔を鼻血が噴き出すほど殴るというイカれた人間味も見せる。どうやらピエロたちは地元民らしく、この殺人かくれんぼを主宰する3人の変態富豪老人によって金で雇われているようだ。追う側も追われる側も必死。そして12時間が過ぎると、変態富豪老人たちもコスチュームを脱ぎ捨てて、清楚な紳士・淑女として家に帰る。何よりも恐ろしいのは幽霊でも怪物でもない、隣に住む人々なのだ。

劇中選曲チョイスに定評がある監督としてマーティン・スコセッシやクエンティン・タランティーノが有名だが、ゾンビ監督も負けず劣らず上手い。今作ではジェイムス・ギャング、レナード・スキナード、キティ・ウェルズ、アーネスト・タブなどのサザン・ロックやカントリー・ソングが使用される。特にエアロスミスの「ドリーム・オン」は歌詞とストーリーのリンクがあり、使い方がクールだ。

ホラー、バイオレンス、悪趣味以上に妻が好き

闘うヒロインを演じるのは、ゾンビ監督の愛妻で彼の映画でしかほとんど見ないシェリ・ムーン・ゾンビ。露出過多のファッションでハッパをキメるアバズレ度100%キャラが、惨劇を通して闘うヒロインに成長していく過程を体当たりで演じる。今後も夫と良好な夫婦関係を築いてもらい、持ち前のハイトーンボイスを武器に21世紀のスクリーミングクイーンとしてゾンビ監督作でどんどん活躍してほしい。

(石井隼人)

記事制作 : 石井隼人