就活生の“あるある”な嫉妬と願望!? 『何者』は現代の若者のリアルな姿だ

コラム

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(C)2016映画「何者」製作委員会 (C)2012 朝井リョウ/新潮社

佐藤健に菅田将暉、有村架純、二階堂ふみ、岡田将生、山田孝之……。今をときめく人気俳優たちが集結したポスターを見て、「よくわからないけど青春モノかな?」と軽い気持ちで映画『何者』を見たら、とんでもない心の傷を負ってしまうことになるかも。あまりにも痛々しい就活生たちの姿。でも自分も確かにこんな感じだった! 鑑賞後は自分の過去のアレコレを思い出して、枕に顔を埋めて「ウワー!」とジタバタしたくなること必至です……。

“仲間”の内定先がブラック企業でありますように

原作は『桐島、部活やめるってよ』で知られる朝井リョウによる、第148回直木三十五賞の受賞小説。平成生まれで就職も経験した作者だけあって、現代の就活生たちのリアルを露悪的なまでに描いた作品です。

物語の中心となるのは5人の就活生、演劇サークルに打ち込んだ“冷静分析系男子”拓人(佐藤健)、就活について深く考えていないように見える“天真爛漫系男子”光太郎(菅田将暉)、ある理由から大手志望の“地道素直系女子”瑞月(有村架純)、結果にまったく繋がっていない“意識高い系女子”理香(二階堂ふみ)、社会のルールに乗りたくない“空想クリエイター系男子”隆良(岡田将生)たちです。そして彼らを見守るのが、すでに内定先が決まっている大学院生・サワ先輩(山田孝之)。

皆で力を合わせて就活を進めようと団結しているようで、裏では誰かがリードしていないかと疑心暗鬼。自分が遅れをとっていることを知られないよう虚勢を張ったり、その場にいないメンバーのことを笑い合ったりと、マウンティング地獄とでもいえるような状況です。

やがて内定者が現れたとき、集団の歪みは加速していきます。これは辛い!となったのが、“仲間”の内定先の評判をネットで調べていたのがバレるシーン。「ブラック企業だったら安心できる」という登場人物の醜い嫉妬が露呈する場面ではありますが、就活中に同じことをしてしまった人は多いんじゃないでしょうか……。

この“あるある”ネタは笑えない…

登場人物の誰に一番イライラするか?というところから、自分の内面も見つめられそう。まぁ大体の人が、拓人か理香か隆良かの3択になりそうですが。他人の行動をなんでもかんでも○○アピールと受け取ったり、その日の頑張りをいちいちツイートしたり、行動しないわりに口だけは一人前だったり、こういう人たちっているよなぁ。でも「あっ、これ自分もやっているかも」と縮こまる瞬間も多い……!

活発にTwitterを更新し、全世界に向けて「自分はこういう人間だ」と発信する彼らですが、なんだか地に足がついていない感じ。とにかく周囲の人間より優位に立とうと振る舞っていますが、だからこそ何かに急き立てられているような印象もあったりして。

描かれている人間関係は非常に狭いものなのに、それでも容赦なく“人間の醜さ”を暴き出しているこの作品。監督・脚本が三浦大輔と聞いて納得です。三浦は演劇ユニット「ポツドール」主宰者で、脚本を担当した『愛の渦』や『恋の渦』といった舞台がこれまで実写映画化されています。『恋の渦』はヤンキーグループの人間模様から「見ていて不快かもしれないけれど、お前にもこういう部分があるだろう?」と突き付けるような作品でしたが、『何者』はその就活生版といったところでしょうか。本当に「不快だけど、気持ちはすごくわかる」という微妙な感情を掻き立てるのが上手いクリエイターです。

見ていて胃が痛くなるような『何者』ですが、鑑賞後は爽やかな気持ちにさせられます。100発殴られてようやく目が覚めたような感覚と言いましょうか……。「この映画によって生き方が変わった」という人も多く現れそうです。ただ先述の通り、考え方が変わるのは、その前に与えられる“痛み”が強いものだからこそ。“劇薬”という言葉がピッタリな作品です。

(文/原田イチボ@HEW)

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記事制作 : HEW

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