細田守監督が明かす、東映を辞めた今も解けない呪い

コラム

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細田守監督

久美雪/Avanti Press

「これは呪いですよ。東映を辞めた今も解けない」。『サマーウォーズ』や近作『バケモノの子』などを発表し、現代のアニメ映画を牽引している映画監督、細田守が発したこの言葉の裏には、先人への深い敬意と映画へのこだわり、そして観客への愛情が隠されていた。

細田がこう打ち明けたのは、現在開催中の第29回東京国際映画祭で企画されたアニメーション特集「映画監督 細田守の世界」内のひとつで、27日(木)の夜に行われた「作家性の萌芽 1999-2003 (細田守監督短編集)」上映後に行われたトークショーでのこと。この回は、細田が東映動画(現在の東映アニメーション)時代に携わった『劇場版デジモンアドベンチャー』(92)など計6作品を取り上げており、トークショーの対談相手はアニメ特撮研究家の氷川竜介が務めた。

本特集のプログラミング・アドバイザーでもある氷川は「作家性の萌芽」というタイトルをつけた理由について「極端な言い方をしてしまうと、東映さんにいる間はある意味、作家ではないわけですよね。だから作家性の萌芽というようにつけさせていただきました。とはいえ、芽が出ているので作家でもある」と説明。それを受けて細田は、「要するに東映の座付き演出家なわけです。東映の職務的な命令のなかで作りながらも、こうやって振り返ってみると、結構自分自身が出ちゃっているところはあるかもしれませんね」と萌芽としている意味を紐解いた。

東映の“座付き演出家”としていくつもの作品に関わっていく細田だが、映画へのこだわりはどのように生まれたのだろうか。トークショーの細田の発言にその一端を垣間見ることができた。「映画を作っていなかった頃から、映画を作りたいって思っていました。僕の師匠の角田紘一さんていう宮﨑駿さんと同期のアニメーターがいるんですけれども、その人がずっとテレビなんかやるんじゃない、劇場こそがアニメなんだから劇場をやれと。そういう洗脳をさんざん受けてきたことが、映画を作りたいっていうこだわりの基になった」。

氷川が「東映自身が歴史ある映画会社だっていうことも?」と問いかけると、細田は「東映の昔の人は、テレビで人気を博しているのは東映じゃない、やっぱり東映長編を作っていた東映が本当の東映であると。だから、新人が入ってきたら、テレビで簡単な作画をやって自己満足するのではなく、劇場の複雑な作画をやって、監督の要求に応えてこそアニメーターだっていうみたいなね。そういうことを頭から信じ込んでいたっていうことだと思うんですよね。それで映画をやらないといけないみたいな気持ちになってきたんだと思います」と答えた。

細田守監督
東映時代に手がけていた作品をリアルタイムで見ていたお客さんがいると知り、おもわず立ち上がって確認する細田

話が進む毎に東映動画時代の経験が、細田の礎を築いてきたことが分かってくる。そして極めつけとも言える話が細田の口から飛び出した。「東映に入って、角田さんに会って、大泉の飲み屋に連れて行かれて、その時の言葉に従って生きている。これは呪いですよ。東映に入ってかけられた呪いが、東映を辞めた今も解けないでいるっていう。今、こうやって映画を作れているから良いですけど、どんな運命が待っていたかわからないですから、なんとも言えないですけどね」。

悲観的ともとれる発言だが、だからこそ自分が携わった作品を見てくれるファンに対する感謝は並々ならぬものがある。トークショーの最中もリアルタイムで作品を見ていたという来場者がいることを知ると満面の笑顔で感謝を述べた。

「ここにいるみなさんが見てくださっていたって思うと本当にうれしいというか、ありがとうございますというか、一緒に時間を歩んできたような気がして、すごくうれしい気持ちですね。『デジモン』みたいな短編でも映画は映画だと思っていたし、『おジャ魔女どれみ』みたいなテレビのたかだか1本でも映画を作ろうっていう気持ちで作っていたし、そういうことをずっとやってきたのかもしれません」。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)