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『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』公開中-(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED

批評家たちから絶賛された『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年)のリチャード・リンクレイター監督の最新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』が11月5日(土)から公開されています。彼の作品には、『スクール・オブ・ロック』(2003年)を代表とする、笑って泣ける「青春グラフィティ」的要素が色濃く流れていますが、この他にも長い年月をかけて特定の人物を追う「経年描写」、映画の可能性を探る「実験トライアル」など3つの大きな特徴があります。今回はそんな映画への遊び心を失わないリンクレイターの世界を紹介します。

1:青春時代のキラメキをノスタルジックに描く「青春グラフティ」

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(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED

「ノーテンキで怖いものなしの主人公が、大人になるために捨てなければならないことがあることを自覚しつつバカ騒ぎに興じる」〜そんなリンクレイター作品が愛される理由に、永遠には続かないからこそ貴重な、「青春」の1ページを切り取るというほろ苦い演出手法があります。

日本でも話題を集めた『スクール・オブ・ロック』は、ロックへの夢を諦めきれない主人公デューイ(ジャック・ブラック)が、代用教員として入った有名私立学校で生徒を巻き込みバンドコンテストで大活躍する青春音楽映画ですが、コメディながら泣けると評判になりました。

またベン・アフレック、ミラ・ジョボヴィッチ、マシュー・マコノヒー、レニー・ゼルヴィガーらが出演する『バッド・チューニング』(93・日本未公開)では、ロック、セックス、ドラッグに興じる高校生を。そして最新映画『エブリバディ~』では野球推薦で大学に進学する主人公が、飲酒やディスコ、恋を経験しながら新生活への期待を膨らませる入学までの3日間を瑞々しく描いています。

二度と戻ることのできない人生の一瞬のキラメキを抽出するリンクレイター作品。笑えるのに妙に泣けるのは、懐かしくも温かく見守る監督の優しい眼差しを感じるからかもしれません。

2:登場人物と一緒に年を重ねる役者も作品の味!……“経年描写”

6才の少年が18才になるまでの12年間を追った『6才のボクが、大人になるまで。』は14年度の映画賞を席巻しました。その勝因はやはり出演者が1本の作品の中で12年間同じ役柄を担当しつづけたことです。主人公メイソン役のエラー・コルトレーンをはじめ、監督の娘であり姉役のローレライ・クリスレイター、母役パトリシア・アークエット、父親役イーサン・ホークが年に1度集まり、少しずつ撮影を重ねるという大胆な発想には驚かされました。

この他にも、リンクレイターの代表作「ビフォア」シリーズがあります。1作目『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』(1995年)でイーサン・ホーク演じるアメリカ人青年ジェシーがヨーロッパ旅行中にジュリー・デルピー扮するフランス人女性セリーヌと恋に落ち、2作目『ビフォア・ミッドナイト』(04)で音信不通だった2人は運命の再開を果たします。そして3作目『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)で夫婦となった2人の倦怠期がセキララに描かれますが、このシリーズではジェシーとセリーヌの9年ごと、約18年の関係の移り変わりがスクリーンにヴィヴィットに展開しています。

これらは実際に年月が経過することで、役柄を演じた役者の成長も作品に絶妙な味わいを与えています。

3:映画の可能性を探る……“実験トライアル”

経年描写も映画の手法としては実験的ですが、やはり実写映像にデジタルペイントをほどこしアニメ化した『ウェイキング・ライフ』(2002年)、『スキャナー・ダークリー』(06)は実写とアニメの中間的な実現で、かなり異色な試みだと言えるでしょう。

ちなみに、夢と現実の狭間の区別が曖昧な青年を描いた『ウェイキング~』の主人公とパートナーの名前は「ビフォア」シリーズの主人公と同じジェシーとセリーヌで、同じくイーサン・ホークとジュリー・デルピーが扮しているほか、オープニングで登場する少女役を『6才の~』に出演するローレライ・リンクレーターが演じています。

これまでインディーズ映画からハリウッド大作までさまざま作品を手がけたリンクレイターですが、「僕の映画は、同じユニバースの中でつながっているんだ」とインタビューで語っているように、作品のバックグラウンドやテーマ、出演する俳優などどこかで共通項が見受けられます。

その言葉通り、大学入学前3日間を描く最新映画『エブリバディ~』は、高校時代を舞台とする『バッド・チューニング』と6才~高校卒業までの『6才のボクが、大人になるまで。』の精神的続編という位置づけです。そしてこの作品は大学卒業からを描いた「ビフォア・シリーズ」へとつながっていきます。それぞれの違いや類似点を探してみたくなる「リンクレイター・ユニバース」、まずは最新映画からかじってみてはいかがでしょうか?

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)