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美女がオオカミとベッドイン!? 変態系ドイツ映画の注目株『ワイルド わたしの中の獣』

コラム

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ドイツ映画には、極端かつ変態的に尖っている作品が多い。作家性の強い監督が多いというより、ぶっ飛んだ主義・主張・嗜好をオブラートに包むことなく、極端な表現で映像として具現化できる才能を持つ人が多いのかもしれない。そんな変態系ドイツ映画では、題材をパワフルに描くパターンとリリカルに描くパターンの2種類がある。

前者の体育会系代表格としては、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『小人の饗宴』『フィツカラルド』、クリストフ・シュリンゲンズィーフ監督の『ドイツチェーンソー大量虐殺』『テロ2000年 集中治療室』、アンドレアス・シュナース監督の『Violent Shit』シリーズなどがある。一方後者の文系代表格はユルグ・ブットゲライト監督の『ネクロマンティック』『死の王』、マリアン・ダーヴィト・ファイダ監督の『モスキート/血に飢えた死体マニア』、エックハルト・シュミット監督の『トランス/愛の晩餐』などが挙げられる。

野生のオス・オオカミにビビビ!

2016年12月24日に公開された、映画『ワイルド 私の中の獣』は後者に属する、実写版「美女と野獣(一匹オオカミ)」の物語だ。ヒロインは、家と会社を行き来する単調な日々を送っているアラサーOLのアニア。ルックスは悪くないが、無口で感情の起伏も薄く、上司からはお茶くみ強要というプチパワハラも受けている。社内で即戦力として重宝されているわけでもなく、恋人もいない。そもそも何を考えているのかもわからず、周囲から何かを期待されるという事もない。

そんなアニアが公園を散歩している時に、オスのオオカミと偶然出会う。目が合った瞬間に“ビビビ!”。まさかの一目ぼれである。そこからのアニアはすべてにおいて上の空。パソコンを開けば仕事もそっちのけでオオカミの画像をググり、生肉や生きたウサギを使ってオオカミと再会しようとするなど、まさに恋は盲目、相手は獣。そしてこう思う、「カレと同棲したい!」。相手はオオカミだが、アニアは猪突猛進。伝統的なオオカミの捕獲方法を勉強し、ハンドメイド麻酔吹き矢を使って意中のカレ(オオカミ)を部屋に招き入れる。オオカミへの熱い思いが高まれば高まる程、アニアの性格もライフスタイルも野獣化。それに比例するかのようにオオカミもアニアにメス性を感じはじめ、ついに友達以上恋人未満の関係を超えてしまう。

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美女のブリブリ熱演にショック!

獣との禁断の愛という題材もさることながら、それを体現し、本物のオオカミと文字通り共演したアニア役の女優リリト・シュタンゲンベルクの女優魂が凄い。オオカミに乗っかられたり、股間や顔を舐めまわされたり、いくら調教されているオオカミとはいえ、襲われたり噛みつかれたりしたら女優として一貫の終わり的シーンもある。さらにアニアの野獣化の一環としての泥水飲み、性欲の強化、上司の席でのブリブリ。このブリブリ場面はあまりにも唐突かつ淡々とした演出の中で行われるので、逆に強いインパクトとして残る。しかも表現としてブリブリしている顔だけを映して逃げるのではなく、行為そのものをきちんと描写するチョイスに監督の素晴らしき変態センスが光る。

その監督こそ、映画もサントラも日本でヒットした刑務所ロックバンド映画『バンディッツ』(1997年)に出演した女優のニコレッテ・クレビッツ。「この作品はあなたを誘惑し、夢中にさせるはず。この映画のアイディアは頭で思い浮かんだのではなく、直感から生まれたもの」なのだという。ドイツ映画界に新たなるアナーキーな才能の持ち主が出現した。

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(石井隼人)

記事制作 : 石井隼人