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理想と現実は違う!? ピュアな制作愛を阻む、ドロドロ裏事情

『グッドモーニングショー』と同じく、業界の「ある一日」を描いた映画『ラヂオの時間』(1993年)。三谷幸喜の初監督作品で、ラジオドラマのスタジオという密室での、生放送の一日の物語です。「運命の女」という熱海を舞台にした主婦と漁師のメロドラマのはずが、主演女優のワガママが発端で次々と台本を変更。どんどん合わなくなるツジツマをどうにかしていくうちに、石が転がるように大スペクタクルな展開に。ディレクター、プロデューサー、俳優たちのプライドや思惑…、ラジオの制作スタッフたちが火事場で見せる職人技。生放送の現場の緊迫感からの一体感がとてつもなく気持ちいいのです。ディレクターの唐沢寿明と、脚本家デビューしたばかりの主婦役・鈴木京香を中心に、西村雅彦や戸田恵子、井上順など芸達者な役者陣が、ひとクセある業界人を見せてくれます。

映画『ジャッジ!』(2014年)は、妻夫木聡演じる大手広告代理店の落ちこぼれCMプランナーが主人公。世界一のCMを決める広告の祭典「サンタモニカ国際広告祭」を舞台に、CM審査の裏側をコミカルに描いています。すばらしいCM作品にあこがれて入社したものの、実際は多数派工作や駆け引きでドロドロ……。妥協するべきか否かという葛藤と戦うのは『ラヂオの時間』と同じ。どの世界にもある厳しさを、こちらでもリアルに体感できます!

マスコミがあこがれの業界だったバブル時代

“テレビ番組を、このまま終わったコンテンツ(=おわこん)にさせるワケにはいかない!” ――『おわこんTV』(2014年)は、番組製作会社を舞台にした、熱いテレビマンたちの奮闘を描くドラマ。NHK初の業界ドラマということもさることながら、何より注目を集めたのは、「このドラマ、NHK的に大丈夫?」とキャッチコピーにあるように、“番組によるヤラセ問題”にも切り込んでいたところです。

そんな“終わった”テレビがかつて“絶頂”だった時代も振り返ってみると、1980年代のバブルまっただなかは「業界ドラマブーム」! その先駆けとなったのが、1987年TBSの『パパはニュースキャスター』ではないでしょうか。田村正和が演じた「鏡竜太郎」はテレビ局の看板ニュースキャスター。子どもが大っ嫌いな独身至上主義の彼の前に、ある日突然、3人の娘が現れ、優雅な独身生活をかき回されるというコメディドラマなのですが、これが高級マンションに住んでいるわ、愛車はポルシェだわ、カノジョは同じ番組でキャスターをしている浅野温子だわ、バブリーを絵に描いたようなイケイケな設定。このドラマが「マスコミ=華やかでオシャレなあこがれの業界」という観念を広く一般に浸透させたといって間違いありません!
同じ頃、フジテレビでは「業界ドラマシリーズ」として『アナウンサーぷっつん物語』『ラジオびんびん物語』『荒野のテレビマン』などが大ヒット。『ギョーカイ君が行く!』に主演したとんねるずが、バラエティ番組で業界用語を使いまくったり、業界人をパロディにしたこともブームに拍車をかけましたが、業界ドラマも下火になった1991年のTBS『ADブギ』は、華やかな業界の底辺で働くADが主人公。当時、キタナイ・キケン・キツイ「3K」と呼ばれた過酷な現場で、加瀬大周、的場浩二、浜田雅功の3人が恋に仕事に奔走するストーリー。今、ふつうに「AD」といって一般に通用するのも、こうした日の当たらない職種にまでスポットを当てていたからではないでしょうか。

自分の人生も、人を楽しませるための企画!

また、今年11月に公開を控える『ボクの妻と結婚してください。』は、放送作家の樋口卓治の小説が原作。余命6ヵ月を宣告されたバラエティ番組の放送作家が、人生最期の「企画」として、残される妻の再婚相手を探して奔走するストーリーで、内村光良主演で舞台化・ドラマ化されて話題になり、織田裕二主演でついに映画化されます。タイトルからして突拍子もないこの作品は、人を笑わせるために仕事をしてきた男が妻の婚活をするという、前代未聞の企画。放送作家ならではのエンディングノートです。 まだまだ”終わってない”テレビの裏側、じっくり観察しちゃいましょう!

(文/三浦順子@H14)