vr%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3
『VR ミッション:25』池袋HUMAXシネマズ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中
(c)The Call Up Limited 2015

10月に発売されたヴァーチャル・リアリティ・システム「プレイステーションVR」。ヘッドセットを装着すると、360度に渡って目の前に仮想空間が広がり、ゲームの世界に足を踏み入れたかのような感覚で臨場感に溢れた冒険やバトルが楽しめると話題になっています。これまで特別な施設やイベントでしか体感できなかったヴァーチャル・リアリティ(VR)がぐっと身近になるなか、更なる進化や未来を予見させる映画『VR ミッション:25』が11月19日に公開されました。

未来の世界ながらも、始まりは既に実現可能!?

vr-%e3%82%b5%e3%83%96

舞台は近未来のニューヨーク。とある高層ビル内の無人オフィスに、見知らぬ者同士の男女8人のオンラインゲーム・プレイヤーが招待されます。用意されていたヘッドセットとボディスーツを装着すると、彼らの目前には仮想空間が展開。窓の外では軍用ヘリが飛び交い、壁には無数の銃弾の跡が残るなど、一瞬で戦時下の世界に豹変したことに驚くなか、軍人が現われてビルを占拠したテロ集団の排除を命じます……と、ここまでは「プレイステーションVR」の技術でも十分あり得そうな展開です。

バーチャルで済まされない、痛みの恐怖

このミッションのハイスコア獲得者には巨額の賞金が与えられると知りプレイヤーたちは銃を手に取ります。しかし、負傷した際の痛みが「リアル」であり、実際に死に至ることに気付いてしまいます。さらにヘッドセットやスーツは脱着不可能で、「にげる」コマンドも、リセットボタンもなく、本当に追い詰められてしまいます……と、こうなってくるともはやスリラーです。

特筆すべきは、脱着不可能なヘッドセットですがバイザーの上げ下げは可能で、上げると戦地から美しいオフィスに一変する描写がVRらしさを見事に表現しています。それでいてVRで受けた痛みは現実のものになる不条理、クリアするまで絶対にゲームを止められないという圧倒的な恐怖…。序盤の展開、バイザーの上げ下げによる風景の切り替わりは、既に実現されている技術でもあるわけで、もちろんフィクションではあるものの、こんな「死のトラップ」がリアルになるのは時間の問題かもしれません……。

さらに踏み込めば、普段平凡に生活している状態こそ「バイザーを下げている状態」だったら……? そう、ここまでくると『マトリックス』の世界までも身近になってきているのかもしれませんね。

ヴァーチャル経由の人間関係は、リアルに何を及ぼす?

その一方で、ゲームに隠された陰謀をめぐるドラマも面白いのですが、異常なVRの世界でプレイヤーたちが絆を育む姿は、たとえ仮想の世界での出来事だとしても、心が通っている限りその思いや共感はリアルであると考えると、人間ドラマとして温かみを覚えます。

とはいえ、一歩間違えたら恋人がいる身ながらVRで恋に落ち、リアルでそれがバレてしまい、傷つけあう……というドロドロな展開のドラマが生まれる可能性も!?そんな「別のかたちの恐怖」をも連想させられます。いずれにしてもVRが発展し、あらゆる分野に普及しそうな勢いにあるいまだからこそ必見の一本と言って良いでしょう。

既にオランダではヴァーチャル・リアリティ専門の映画館“The VR Cinema”が運営され、10月公開の『GANTZ:O』の世界観を360°仮想体感できるヴァーチャル・アトラクションイベントが評判を集めました。このように映画でVRを描くに留まらず、映画そのものをVRとして楽しめむ機会が少しずつ誕生してきています。この流れがもっと進めば「気づかぬうちに映画のなかにいる」という恐ろしい(面白い)ことも起きうるかもしれません。エンタテインメントの可能性をどこまでも広げてくれそうなVRの進化には期待したいですね。

(文=平田裕介・サンクレイオ翼)