文=鈴木元/Avanti Press

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左から阿部寛と大島優子。『疾風ロンド』全国ロードショー
(c)2016「疾風ロンド」製作委員会

11月26日に封切られた映画『疾風ロンド』の阿部寛を見ていると、俳優というものはそれまでの経験やキャリアが糧となり、綿々とつながっていく職業だという思いに駆られる。

まずは原作小説。東野圭吾氏の100万部を超えるベストセラーで、阿部、東野のコンビといえばドラマ「新参者」、映画『麒麟の翼』と続く“加賀恭一郎シリーズ”があり、阿部にとっても代表作のひとつだ。だが、『疾風ロンド』はミステリーの装いをまとっているものの、アクションやコメディの色合いが強い快作に仕上がっている。

阿部は、日本最大級の広さを誇る野沢温泉スキー場で盗まれた生物兵器の探索を命じられる研究員という役どころ。しかし、スキーの腕前はからっきしダメで、無理をして足のじん帯を傷めてしまう。アクションを見せることもなく、ここまで活躍の場が少ない主人公も珍しいが、「脚本を読んで、これは雪上で滑走しているようなスピード感のある映画で、その中でとにかくドタバタとかき回していく役だと思った。それに理不尽な指令を受けて追い込まれていく不器用な人間をどうやって面白く見せるかに挑んだ」と述懐する。

今年2月に野沢温泉スキー場で行われたロケで、スキーは20年ぶりだったそうで「下手に滑るのは僕が一番うまかった」と自賛。雪山といえば、その1年前『エヴェレスト 神々の山嶺』で世界最高峰エヴェレストの標高5200メートル地点まで登った実績がある。さぞやその経験が生きただろうと思いきや、「初日から皆が『エヴェレストに行ったんだから大丈夫でしょ』って上から目線できた。でも、エヴェレストよりよっぽど寒かった。マイナス15度くらいで、日本の方が寒いんだって思いましたね」と苦笑いする。

そして温泉とくれば、自身最大のヒット作である『テルマエ・ロマエ』が思い浮かび、本人も「ああいう映画に出ているから、温泉は大好き」。だがこちらも、あまりに目立ちすぎるためプロデューサーから“外湯禁止令”が出され、ロケ中に13カ所の外湯のうち7カ所を訪れたという共演の大島優子をうらやむ。

モデルから俳優に転身したパイオニア的な存在。デビュー当時イケメンという言葉はなかったが、彫りの深いマスクと190センチの長身が枷(かせ)となりオファーがくる役は限られていた。だが1993年、舞台「熱海殺人事件 モテカルロ・イリュージョン」でつかこうへい氏に見いだされ開眼。99年『ゴジラ2000 MILLENNIUM』で話を聞いた時の、「やれると思えば、どんな役でもやってやりますよ」という宣言通りジャンル不問のさまざまな顔を見せてきた。

無骨、ストイックというイメージも強いが、前述の『テルマエ・ロマエ』や人気シリーズとなった「トリック」などコメディでの好演、怪演が印象に残る。そのあらゆる顔を1本に凝縮したのが『疾風ロンド』といえる。

ちなみに、そのポスターの阿部が松葉づえをつき驚いているようなカット。『ゴジラ2000』のクライマックスで、「ゴジラーッ」と生身で向かっていくカットの表情とソックリ。ご興味のある方は、確認してみてはいかがだろうか。

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『疾風ロンド』全国ロードショー
(c)2016「疾風ロンド」製作委員会