名曲を引き出す、岡田准一の名演 『海賊とよばれた男』サントラ誕生秘話

インタビュー

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取材・文=大谷隆之/Avanti Press

400万部を突破したベストセラー小説を、岡田准一など豪華キャストで映像化した話題作『海賊とよばれた男』。実在の起業家をモデルに、大正から昭和にかけての激動期を駆け抜けた男たちを描く大河エンタテインメントだ。音楽を担当する佐藤直紀は、2005年の大ヒット作『ALWAYS 三丁目の夕日』以降、『永遠の0』『寄生獣』など全ての山崎貴監督作でサウンドトラックを手がけてきた“盟友”。本作にも重厚感あふれる楽曲群を提供しているが、そのインスピレーションの源となったのは他ならぬ「主演・岡田准一の真摯な演技だった」と振り返る。

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『海賊とよばれた男』音楽監督:佐藤直樹氏

名曲を引きだした岡田准一の演技

Q:シナリオを読まれた第一印象はいかがでしたか?

青年期から90歳代まで1人で演じるなんて、やっぱり岡田准一さんはすごいなと。とてもシンプルな感想です(笑)。もともと僕は、事前にあまり脚本を読み込みません。シナリオ段階でイメージを膨らませすぎると、完成した作品とズレが出てしまうケースも多い。監督の伝えたいことは、必ず映像に表れます。そこからヒントをもらうのが一番間違いがないと思うんです。山崎監督とは何度もご一緒していますし、岡田さんは『永遠の0』でも主演されているので、そういう信頼感も当然ありました。

Q:では、仕上がった映像をご覧になって意識されたことは?

『海賊とよばれた男』という題名だけを見ると勇壮なイメージが強いですが、山崎監督が描こうとしている世界はむしろ渋くて重厚な、大人向けの大河エンタテイメントじゃないかなと感じました。もちろんストーリー自体は波瀾万丈ですが、物語の主軸はあくまで、大正から昭和の激動期を生き抜いた「国岡鐵造」という起業家の内面を追うことにある。そう感じさせてくれたのは、やはり岡田さんの力だと思います。

Q:主役の演技のトーンが、音楽を作るうえでベースになったと。

そうですね。岡田さんの演じる鐵造は、どんなに破天荒でガツガツした台詞を喋ってもどこかナイーブさを感じさせるというか……。海賊という異名とは裏腹に、人としての品を感じさせるんですね。今回のサントラではわかりやすいダイナミックさより、むしろそういった優しさや、荒々しい口調の裏に流れる純粋さを表現したかった。音楽だけがドラマティックに先走るのではなく、観客の心に知らぬ間に染み入るようなものにしたいなと。

山崎貴監督との揺るがぬ信頼関係

Q:作曲にあたって監督からは何か注文はありましたか?

ほぼなかったです(笑)。たぶん音楽に限らず、山崎監督はいったん仕事するとなると、相手を信頼して仕事を任せてくださるんですね。たとえ監督の想像していたのと違う曲を持っていったとしても、頭から否定はせず、「そういう考え方も面白いですよね」と受け止めてくれるイメージがあります。そうするとプロフェッショナルは責任を感じて、より一生懸命になりますから(笑)。

Q:そのような山崎監督の流儀は、出会った頃から変わらない?

基本は変わらないですね。前回、岡田さんが主演した『永遠の0』のときもそうでした。あの映画のテーマは、実は同じ旋律のモチーフが延々と繰り返される構造になっていて、いわゆるメロディアスな楽曲じゃないんですね。岡田さんの演技に十分な説得力があったので、僕としてはサントラで必要以上に盛り上げたくなかった。それであえて、そういう構成にしたんですが、やはりプロデューサー陣からは「もっと感情に訴求する、わかりやすいメロディーがほしい」と猛反対されたんです。でも監督が1人で「いや、佐藤さんがそう言うならこれで行きましょう」とOKを出してくださった。結果的にはプロデューサーの方々にも納得してもらえました。

役者の呼吸を生かした劇中歌「国岡商店社歌」

Q:サウンドトラックを手掛ける場合、通常どこから作業に着手されますか?

基本的には、メインテーマと呼ばれる部分から作りはじめます。本作でいうと、サントラ盤の冒頭に入っている「海賊とよばれた男 〜Main Title〜」という楽曲。映画の主題である国岡鐵造の生き方を、いわばトータルで表現したナンバーですね。そうやってまず、印象的で耳に残りやすいメロディーを考え、そのモチーフをさまざまに変化させながら、物語のいろんな場所に散りばめていくのがオーソドックスな手法です。ただ今回は撮影の都合上、劇中で歌われる「国岡商店社歌」だけ先に作っておく必要がありました。この曲だけはクランクイン前に山崎監督から歌詞をもらって、脚本を読んだイメージで曲を付けています。そこは普段と違った点ですね。

Q:「国岡商店社歌」は、主人公の鐵造だけでなく彼の仲間、さらには日本という国そのものの“青春”を象徴するような歌で、物語上も重要な役割を果たしています。この曲は、どういったイメージで作られたんですか?

さりげないけれど親しみやすく、歌っている人を励まして聴く人の心を打つメロディー。映画を観終わった後、思わず口ずさみたくなる“いい歌”を作りたいという気持ちが、まずありました。それにはエモーショナルなメロディー・ラインだったり、ドラマティックなコード進行が必要になるわけですが……現実の社歌というのは、やっぱり堅苦しかったり四角四面だったりするんですね。メロディアスで自発的に歌いたくなる社歌というのは、そう多くない(笑)。だからといって無理やり今っぽくすると、今度は映画の中で社歌に聞こえなくなってしまう。そのバランスを取るのに苦労しました。

Q:物語の最後に流れ、サントラ盤にも収録されたフルオケ付きの「国岡商店社歌」のレコーディングには、キャストの方々も合唱で参加されているとか。

はい。岡田准一さんやピエール瀧さんを筆頭に、若手も入れて20名以上いらっしゃったんじゃないかな…。それだけの俳優さんたちがスタジオにずらりと並ぶのは壮観でした。私も立ち会わせていただきましたが、ただその場にいただけで。合唱指導などは一切していません(笑)。こういうのは音程やリズムの正確さより、やっぱり気持ちで歌うことが大切だと思うんです。実際、物語を生きた役者さんの呼吸で歌ってもらったことが、いい結果になっていると思います。

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音楽:佐藤直紀 1970年5月2日生まれ、千葉県出身。1993年、東京音楽大学作曲科を卒業後、映画、TVドラマ、CMなど、様々な音楽分野で幅広く活躍する。『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年/山崎貴監督)では、第29回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。主な映画作品は『海猿』シリーズ(2004年・2005年・2010年・2012年/羽住英一郎監督)、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(2005年・2007年・2012年/山崎貴監督)、『るろうに剣心』シリーズ(2012年・2014年/大友啓史監督)、『STAND BY MEドラえもん』(2014年/山崎貴監督・八木竜一監督)、『ルドルフとイッパイアッテナ』(2016年/湯山邦彦監督)など多数。

映画『海賊とよばれた男』
12月10日(土)全国東宝系ロードショー

『海賊とよばれた男』オリジナル・サウンドトラック
発売中(音楽:佐藤直紀、劇中歌「国岡商店社歌」ほか全17曲収録)
ソニー・ミュージックダイレクト
MHCL 2654 定価2500円+税

akinotokusyu

記事制作 : Avanti Press