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12月10日(現地時間)にノルウェーで催されるノーベル賞授賞式。今年は音楽界の重鎮ボブ・ディランが文学賞を受賞したことで話題になっています。また、残念ながら授賞式に本人は出席せず、ディランの送ったスピーチが代読されると発表されたことにも注目が集まっています。ノーベル賞は物理学、化学、生理学・医学、文学などの分野で偉大な功績を残した人物に贈られます。受賞者の足跡を辿ってみると苦悩や波乱に満ちた人生を歩んできた人も多く、なかには映画の題材になった人物もちらほら見受けられます。

ボブ・ディラン……「6人1役」で才能を表現

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『アイム・ノット・ゼア』DVD好評発売中!! 価格:4,700円(税抜) 発売元・販売元:ハピネット-(C)2007 VIP Medienfonds 4 GmbH & Co.KG/All photos-Jonathan Wenk

ミュージシャン初の文学賞受賞……にも関わらず、「別の用事がある」と授賞式欠席の意向を伝えたというディラン。自身の世界観・芸術性を貫きシンガー、アーティスト、詩人として活躍する彼の足跡は、これまでドキュメンタリーなどでも伝えられてきました。そんなディランを題材にした作品で最も異彩を放ち、ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したのが『アイム・ノット・ゼア』(2007年)です。

この作品では、ベン・ウィショー(詩人)、クリスチャン・ベール(革命家)、ヒース・レジャー(映画スター)、マーカス・カール・フランクリン(放浪者)、リチャード・ギア(無法者)、ケイト・ブランシェット(ロックスター)がディランの6つの人格的側面を投影させたキャラクターをそれぞれ演じています。彼の底知れぬ人物像はこれくらいトリッキーな企画をもってようやく浮き彫りにできるというところでしょうか。

「ライク・ア・ローリング・ストーン」からタイトルにもなった未発表曲「アイム・ノット・ゼア」まで、ディラン珠玉の36曲が流れ、眼と耳で彼を知るにはとっておきの作品です。

アルベール・カミュ……自伝的小説の映画化で知る「創作の原点」

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『最初の人間』DVD:本体価格¥4,800+税 ブルーレイ:本体価格¥5,800+税 販売:紀伊國屋書店 発売:シネマクガフィン 協力:ザジフィルムズ -
(c) Maison du cinema - Soudaine - France 3 Cinéma - Laith Media 2011.

ほかにも「映画になったノーベル賞受賞者」を調べてみると、文学賞では哲学者アルベール・カミュ(1957年受賞)が挙げられます。小説『異邦人』『反抗的人間』で知られるカミュは46歳の若さで自動車事故のため亡くなります。そのときカバンから発見された自伝的小説をフランスの名優ジャック・ガンブラン主演で映画化したのが『最初の人間』(2011年)です。

老いた母に会うため仏領アルジェリアへ帰郷したフランス在住の主人公は、激しい独立紛争を繰り広げる祖国の内情に心を痛めます。戦争で亡くなった父親の写真を見つめながら少年時代を振り返る主人公は、「平和のために自分は何ができるのか?」を問い続けたカミュの創作の原点を、見る側へダイレクトに伝えています。

ジョン・ナッシュ……妻の献身が受賞へと導いた?

ノーベル賞受賞者の映画化作品で最も有名なのは、アカデミー賞で4冠に輝いた『ビューティフル・マインド』(2001年)ではないでしょうか。天才数学者ジョン・ナッシュ(1994年・経済学賞)をラッセル・クロウが熱演し、その苦悩を明らかにした感動作です。 ナッシュは「ゲーム理論」と呼ばれる研究で注目を集めますが、その後、困難な証明の研究に没頭する余り精神のバランスを崩し、現代で言う統合失調症を発症します。そんな彼を支え続けた妻アリシア(ジェニファー・コネリー)の献身的な姿が胸に刺さります。ナッシュの研究の偉大さと共に、周囲で支える人の存在の大きさも深く感じ入る1本です。

キング牧師……受賞後も変わらぬ不屈の闘志

1964年、「アメリカ合衆国における人種偏見を終わらせるための非暴力抵抗運動」を理由に平和賞を受賞したキング牧師こと、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア。ですが彼の受賞は決して差別の収束には至っていませんでした。そんなキング牧師の受賞後の出来事を映画化した作品が『グローリー 明日への行進』(2014年)です。

1965年、牧師は黒人の有権者登録への妨害に抗議するためアラバマ州で600人規模のデモ行進を行いました。このデモを白人警官隊は暴力的に制圧しました。その凄惨な現場の様子が報道されたことで全米に公民権運動の気運が高まります。後に「血の日曜日事件」と呼ばれたこの出来事を軸に、映画は迫害や脅迫を受け、苦悩しながらも不屈の闘志で信じる道を歩むキング牧師の心の内が丁寧に語られています。ノーベル賞受賞の事実だけでは見えない偉人の足跡は、映画になることで描かれていました。

アウン・サン・スー・チー……女性政治家の切ない愛

現在、ミャンマー(※旧ビルマ)の国家顧問兼外相で、1991年に平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー。軍事政権による度重なる軟禁生活に苦しみながらも、民衆を思いビルマ非暴力民主化運動の指導者として闘い続けた彼女の半生は、ミシェル・ヨー主演の『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』(2011年)として映画化されました。

もともとアウン・サン・スー・チーは、留学先のイギリスで家庭を持ち幸せに暮らしていたのですが、軍事政権の圧制に苦しむ祖国の実状を知り帰国します。それは夫や子供たちと離れ離れになる辛い生活の始まりでもありました。それでも強い心で耐え、人々の希望となったアウン・サン・スー・チー。アジア人女性初のノーベル平和賞を受賞した彼女は、現在も祖国のために人生を捧げています。

さまざまな困難に直面しながらも、信念と情熱をもって一つのことに打ち込んできた受賞者たち。そんな彼らの人生には胸を打つ感動のストーリーが潜んでいるようです。

また、ノーベル賞授賞式と同日となる12月10日の午後9時からは、ボブ・ディランの素顔に迫る「NHKスペシャル」(NHK総合)も放送予定。受賞者たちの映画に興味を持った方はこちらも併せてチェックしてみてはいかがでしょう。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)