【ブルボンヌ新作批評23】がんに冒された女性警官が、同性の恋人に遺したもの『ハンズ・オブ・ラヴ』

コラム

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昨年、全米で合法になったのをきっかけに、日本でもバラエティのオネエキャラだけでなく、ニュースや政治のテーマになっている「同性婚」。にわかにヘンタイたちが必要以上の保障を求めてる……なんて厳しい見方をする人もまだいますけど、当然この世界的な変化にはそれなりの歴史と事情があるわけです。
映画『ハンズ・オブ・ラブ』は、2000年初頭のアメリカの保守的な郡で、20年以上警官として勤め上げた女性が、病に冒されながらパートナー女性に遺族年金を遺せない不平等と闘った、実話の映画化。同性パートナーの苦難や、彼らの想いが社会を変えていく舞台裏を、巧みなストーリー展開で見せてくれます。

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主人公ローレルを演じたのは、『アリスのままで』でアカデミー主演女優賞をついに獲得した根性女優ジュリアン・ムーアねえさん。レズビアン役のハマりっぷりは子育て問題を描いた『キッズ・オールライト』で証明済みです。今作でも、のっけから二徹したマドンナみたいなファラ・フォーセットヘアで体当たり捜査をしていて相変わらず頼もしい。保守的な郡の警官という、日本だったら「同性愛者だなんて絶対言えない」立場の彼女ですが、ずいぶん年下のオープンなステーシーと恋に落ち、少しずつ変わっていくのでした。
同性カップルが社会の不平等と向き合うには、まず自分たちのつながりが恥じるべきものではない、と思えてこそ。日陰の愛人扱いのように連絡にすら神経質になった出会いから、二人の新居探しでも関係を正直に言えない姿など、主人公が戸惑う姿は生々しく、だからこそ後半、全てをオープンにして大切な人のために闘う姿が眩しく感じられます。

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相手役のエレン・ペイジは『ハード・キャンディ』『ジュノ』のおませさんな演技で全米を驚かせた後、レズビアンをカミングアウトした女優。ゲイのイアン・マッケランおじいちゃまが「アカデミー賞で評価されるのは、ノンケがゲイ役を演じる時だけじゃ!」と批判したって話もありますが、もちろん当事者が演じたってイイ。エレンも水を得た魚のように、リアルなボーイッシュ・レズビアンを演じています。
とくに彼女の、オープンだけど政治運動には興味がない、それでも愛する彼女の想いには応えたい、という自然な立場は非常に説得力があるんですよね。

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愛する人との関係を認めてもらうには、少なからず社会とも闘わなければいけない現実が同性カップルにはあるし、実効的な変化を求めるのなら、闘い上手な活動家とも組まなければならない。声高に権利を主張するスタイルなどには、当事者もそれぞれに葛藤しつつ落としどころを見つけてるんです。「同性婚という特別なものじゃなく、平等に扱われたいだけ」というローレルの言葉も聞き流してはいけないところ。

脇を固めるタイプ違いの男たちも、実に象徴的です。彼女たちの願いに協力しつつ、同性婚推進アピールにも利用したい、というユダヤ人のゲイ活動家スティーブンを演じるのはスティーブ・カレル。40歳の童貞男から怪盗グルーまでこなす芸達者だけに、思い込み激しそうだけど一生懸命でパワフルという「活動家あるある」な憎めないキャラ作りがお見事です。
ローレルと長年バディな関係だったストレートの警官デーンは、密かに想いを寄せていた彼女のレズビアン告白に戸惑いつつ、最終的には誰よりも応援してくれる心強い存在に。また、他の堅物同僚や隠れゲイたちも、彼女をサポートし始めます。ステーシーが職場の上司に修理工としての腕前を見せつけて認められたように、きっちり仕事ぶりを見せてきた二人だからこそ「女なんか」「同性愛者なんか」という偏見以上に、ストレート男性たちからも信頼を寄せられたのだ、というこれまた当たり前だけど大事なことが描かれているんですよね。

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抗がん剤の副作用で丸坊主となった、演技とは思えない風貌のローレルが見守る公聴会の場で、話し下手だったステイシーが語り始める素朴な想い。時には政治やメディアに利用され煽られることがあっても、そもその発端もはこの小さな、愛し合う幸せへの願いが世界じゅうにあるからなんだ、ということをあらためて思い出させてくれます。そしてそれらが、この数年後の同性婚合法化につながっていったんですね。

実話を元にしながら、飽きさせないドラマチックな展開と、実力派俳優たちが演じる社会を端的に示したキャラクターたち。自身もパン・セクシュアルを公言するマイリー・サイラスが「愛の思い出があれば強くなれる」と歌う主題歌を聴きながら、今までもこれからも世界じゅうで闘っている小さなラブたちに、思いを巡らせてみてください。

「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」
新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国にて絶賛公開中!
(C) 2015 Freeheld Movie, LLC.All Rights Reserved.
配給:松竹

(ブルボンヌ)

記事制作 : ブルボンヌtwitter(外部サイト)

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