『ダーティ・グランパ』

文=皆川ちか/Avanti Press

少子&高齢化がすっかり定着した国、ニッポン。もはや「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」で描かれているような、三世代同居家族という図はフィクションの中にしか滅多に存在せず、祖父母と孫世代の接点は、これから、どんどん少なくなろうとしている。

『ダーティ・グランパ』は、今の時代だからこそ説得力を持ちえる“おじいちゃん”と“孫”の新たな関係性を、バディ映画の形をとって描いている作品だ。

ハジケまくるおじいちゃんと生真面目な孫の二人旅

『ダーティ・グランパ』

長年連れ添った妻に先立たれた祖父ディックと、1週間後に結婚を控えている孫息子ジェイソン。亡き妻との思い出の地であるフロリダへ旅行に出かけようとするディックに、おじいちゃん孝行のつもりで同行するジェイソンだが、40年ぶりに“独身”へと戻った祖父のハジケっぷりに、振り回されることに――。

ハジケるとはいえ老人のこと、それほど大暴れはしないだろう……という大方の観客の予想を覆して、御大ロバート・デ・ニーロ演じるディックの針の振り切れ具合が、すさまじい! 朝からAVを鑑賞し、酒をがぶ飲み、葉巻ぷかぷか。熟女から女子大生まで、あらゆる世代とタイプの女性をまんべんなく平等にナンパして、隙あらばジェイソンにカンチョーをしてくる。さながら小学生男子並みのマインドを持つ70代だ。それでいて外国語を嗜み、戦闘能力が高く、友情に厚い。人間としてもオトコとしても魅力に富んでいる。

一方ジェイソンは、尊敬していたおじいちゃんがこんな人だったなんて……と、これまで抱いていた祖父のイメージと、実像とのギャップに唖然茫然。ディックの行動一つひとつに「じーちゃん、やめてよ!」と、若干キレ気味にツッコミを入れるうち、真面目に堅実に生きるのが一番と信じてきた人生観が、ぐらぐらと揺さぶられてゆく。

ストリップを通じた世代間コミュニケーション!?

『ダーティ・グランパ』

子どもっぽい祖父と、老成した孫。本作で描かれている老人と若者像は、従来の映画や小説やドラマ、マンガにおける年長者と年少者の関係性とは、まるで正反対だ。本来ならば若者の未熟さをたしなめ、教え導き、尊敬されるはずの老人が、逆に若者からたしなめられ、お説教をされ、呆れられている。と同時に、死を意識せざるを得ない年齢であるディックが、年甲斐もなく自由奔放に振る舞えば振る舞うほど、生の喜びと寿ぎが説得力をもって迫ってくる。

大学生がヒャッハーするために集う初夏のデイトナビーチのステージで、この2人が上半身裸になってストリップする場面は、映画の白眉だ。堂々たるパフォーマンスで、たるみかけの肉体すらセクシーに魅せてしまうディックと、リードされるうちに祖父譲りのクソ度胸が目覚めていくジェイソンの笑顔の爽やかなこと! 年齢も性格もまったくちがう祖父と孫が、一緒に何かをすることで互いに互いを理解して、ディックは生きる楽しさを取り戻し、ジェイソンは自分の殻を破る勇気を獲得する。

監督は、日本でも大ヒットした異色ドキュメンタリー映画『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006年)で製作総指揮と脚本を担当したダン・メイザー。キワドいジョークと露悪すれすれのギャグで、既存の常識や固定観念を引っくり返してみせる演出スタイルは今回も光っている。

老人の概念が大きく変化しつつある現在のリアルを鮮やかに反映した、ちょっとエッチで意外と深い、世代間コミュニケーション・ムービーだ。

『ダーティ・グランパ』
2017年1月6日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
監督:ダンメイザー
出演:ロバート・デ・ニーロ、ザック・エフロン、オーブリー・プラザ、ゾーイ・ドゥイッチ、ジュリアン・ハフ、ダーモット・マローニー
提供:日活
配給:REGENTS、日活
協力:松竹
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