9.11以降を描く『虐殺器官』が満を持して公開! 大作家も絶賛の故・伊藤計劃の世界

コラム

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デビューからわずか2年、34歳の若さでこの世を去ったSF作家・伊藤計劃。彼の長編小説3作を映画化する「Project Itoh」が始動し、うち公開延期となっていた『虐殺器官』がいよいよ2017年2月3日に公開されます! SF、アクション、ミステリーとジャンルの枠を越えて讃えられた伊藤計劃の世界観は必見です。

衝撃のデビュー小説を映像化…『虐殺器官』(2017年2月3日公開)

9.11以降の近未来。先進諸国では徹底した管理体制でテロの脅威を一掃しますが、後進諸国では内戦や大規模な虐殺が増加するように。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、各地の虐殺の影にちらつくジョン・ポールという言語学者の暗殺を命じられ、潜伏先のチェコへと向かいますが……。監督は「機動戦士ガンダムW」キャラクターデザインで知られる村瀬修功。

そして、原作「虐殺器官」文庫版の帯には、名だたる文化人から絶賛の声が寄せられています。

「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」(作家・宮部みゆき)
「繊細で、愛おしくて、恐ろしい。今こそ、物語(フィクション)の力を思い知るだろう」(METAL GEARシリーズ監督・小島秀夫)
「ナイーブな語り口で、未来の恐ろしい『世界の仕組み』を描くこの作品(中略)、夢中になり、嫉妬して、ファンになりました」(作家・伊坂幸太郎)

また、この原作は2006年の小松左京賞最終候補に残り、2007年に上梓されたデビュー作品。のち、早川書房主催の「ゼロ年代ベストSF」1位に輝きました。この長編大作を、癌に侵された伊藤氏は病室でものの10日間で執筆したといい、その才能と情熱には感嘆の声を漏らすしかありません。

魂の行方と医療社会を問う…『屍者の帝国』・『ハーモニー』(2015年)

映画化1作目は、2015年10月に公開された『屍者の帝国』。19世紀末、死体蘇生技術が発展し、屍者を労働力として活用する時代。ロンドン大学の医学生ジョン・ワトソンは、政府の秘密機関の依頼でヴィクター・フランケンシュタイン博士が100年前に遺した手記と、最初の屍者ザ・ワンの秘密を探る旅に出ます。『ハル』の牧原亮太郎監督、『進撃の巨人』のWIT STUDIOが制作。

原作は、草稿30枚で絶筆となった遺作。親交の深かった作家・円城塔が書き継ぎ、日本SF大賞特別賞、星雲賞日本長編部門を受賞。有名な名前を冠した人物が多数登場する歴史改変SFとしても高く評価されました。

2作目は同年11月公開の『ハーモニー』。戦争と未知のウイルスが蔓延した「大災禍」後、高度医療経済社会が築かれた世界。政府の過剰な健康志向による人間のデータ化・公共リソース化に反逆した女子高生トァン、キアン、ミァハは自殺を図ります。しかし13年後、突発した世界同時多発自殺事件の影にミァハの存在が浮上し……。『AKIRA』作画監督のなかむらたかし、『鉄コン筋クリート』監督のマイケル・アリアスによる共同監督。2008年刊行の原作は、逝去後、故人初の第30回日本SF大賞、日本人初のフィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞しました。

伊藤計劃の小説はいずれも、生死と魂の存在を問い続け、現代社会と地続きの問題を冷徹に分析した近未来SFです。武蔵野美術大学美術学部映像科出身で、漫画、アニメ、ゲーム、映画にも造詣が深かった伊藤氏。相当なシネフィルとして知られ、闘病中もブログ「伊藤計劃:第弐位相」やホームページ「スクープテール」で映画時評を書き綴っていました。

いまこうして、彼の世界観のアニメ映画化が実現。各小説はコミック化もされています。敬愛する多くの人々の手により、伊藤計劃の作品はこれからもさまざまな形となって語り継がれていくことでしょう。

(文/藤岡千夏@H14)

<作品情報>
『虐殺器官』
2017年2月3日公開
(C)Project Itoh / GENOCIDAL ORGAN

記事制作 : H14