『ヘルタースケルター』よりも過激!? “モデル業界の闇”描く『ネオン・デーモン』

コラム

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(C) 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

どんなに仕事で成功を収めても、どんなに幸福な家庭を築いていても、もしも「すべてを捨てる代わりに、あなたが望む美貌をあげる」と悪魔に誘いをかけられたなら、自分はそれに乗ってしまうだろう……。そんな風に考える女性は一定数いるはず。一部の女性にとって、“美”とはそれだけ価値があるものなのです。

1月13日より全国で順次公開する映画『ネオン・デーモン』(監督:ニコラス・ウィンディング・レフン)は、美しさの暗黒面を暴き出す物語です。美しさによって破滅していく女を描いた作品というと、2012年公開の邦画『ヘルタースケルター』が思い出されますが、『ネオン・デーモン』はグロテスク描写が一層キツい! 血みどろのシーンに、「これが美のもたらす結果か……」と戦慄することでしょう。

アルマーニやサンローランが衣装提供

16歳のジェシー(エル・ファニング)は、トップモデルになる夢を叶えるため、田舎町からロスへとやってきた。天然の美貌で一流デザイナーやカメラマンの心をとらえるジェシーに、激しい嫉妬を抱くライバルたち。一方、ジェシーの中に眠る野心も目覚めていく――。

おどおどした田舎育ちの少女・ジェシーが野心に囚われていく様子は、彼女が身にまとうファッションでも表現されます。始めの頃はいかにも上京したてという雰囲気で、よく言えば無難、率直にいえばちょいダサ。それがプライベートでも攻めたファッションをしていくように……。トップモデルたちに「男と寝たことあるでしょ?」とからかわれて、「……何度もね」と絶対ウソだろ! という答えを返す、あの初々しかったジェシーに戻って!

本作の魅力は、『ブルーバレンタイン』や『ロスト・リバー』などを手がけたエリン・ベナッチによる衣装にもあります。衣装提供には、アルマーニやサンローランなどのハイブランドが名を連ねて、映像でも伝わるゴージャスさに「このコーディネートは総額いくらなんだ!?」と気になってしまうほど。トップモデルの世界を描くから当然といえば当然なのですが、この衣装への徹底したこだわりは、やはり邦画にはなかなか真似できないよな――。

レフン監督と『ドライヴ』や『オンリー・ゴッド』でもタッグを組んでいるクリフ・マルティネスによるエレクトロミュージックがスタイリッシュな映像と絡み合い、ファッションムービーのように楽しめる作品でもあります。

“美”の危険性に気づかなかったジェシーの運命は?

自分の容姿が強力な武器であることを理解したジェシーは、甘酸っぱい関係を築いていたボーイフレンド、ディーン(カール・グルスマン)を冷たく突き放したり、次第に変わっていきます。しかし、彼女には知らないことが、ひとつだけありました。それは美しさは武器であると同時に、周囲の悪意を引きつける恐ろしいものでもあるということ。だからこそジェシーは、「自分が美人だと知っていることの何が悪いの?」と無邪気に言えてしまうのです。そして、ライバルたちは常軌を逸した復讐を仕掛ける……。

正直“美しさの持つ暗黒面”という題材は、少々手垢のついたものでしょう。しかし、まるでファッションムービーのように洗練されたビジュアルと音楽、そしてエル・ファニングの他にもジェナ・マローン、アビー・リー、ベラ・ヒースコートといった美人女優が世界観を構築していることで、メッセージの“説得力”が強調され、オーソドックスな題材でも最後まで目が離せません。

さて、ジェシーはあの後ある種伝説的な存在となっていくのか……。モヤモヤと心に残り続ける、なんとも後味の悪いラストです。“美”という女であれば誰しも一家言持っているテーマであるだけに、女友達と見に行くと気まずい思いをしてしまうかも!? あっ、でもジェシーが暮らすモーテルの管理人ハンク役のキアヌ・リーブスは、あまりの怪しさで“キアヌ萌え”の人にはたまらなさそう。「こんな態度の悪い管理人、嫌すぎる!」とツッコミながらも、アウトローな雰囲気にキュンとできます!

(文/原田イチボ@HEW)

記事制作 : HEW