“進撃の巨人”も手掛ける『甲鉄城のカバネリ』荒木哲郎監督インタビュー 映画版はファンも初見の人も楽しめる!

インタビュー

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「甲鉄城のカバネリ」監督:荒木哲郎氏

2016年4月よりフジテレビ系の深夜アニメ枠“ノイタミナ”で放送され好評を博した「甲鉄城のカバネリ」。世界に産業革命の波が押し寄せた時代、突如、鋼鉄の皮で覆われ心臓を持つ不死の怪物“カバネ”に襲われた島国・日ノ本。カバネに噛まれた者は一度死んだ後にカバネとなって甦るという恐怖の連鎖の中、蒸気鍛冶の青年・生駒はカバネに襲われるも、人間の意志とカバネの肉体を持つ“カバネリ”となり、同じ境遇の少女・無名や仲間たちと共に“駿城”と呼ばれる蒸気機関車に乗り込む……。

この独創的な世界観と、圧倒的な映像美、そして流麗なバトルアクションで見る者を興奮させた同作が、新規作画を加えた前・後編の総集編となって、12月31日により前編、明けて1月7日より後編が全国の映画館で公開される。この総集編をはじめ物語をゼロから構築したのが、大ヒットアニメ「進撃の巨人」で注目を集めた荒木哲郎監督だ。2017年には「進撃」の続編(総監督)、2018年には「カバネリ」の新作も控え多忙を極める同氏に、未見の人にこそ楽しんでもらいたい「カバネリ」について、そして「進撃」についても伺った。

「甲鉄城のカバネリ」に流れる、傑作映画のエッセンス

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『甲鉄城のカバネリ』前編:2016年12月31日より、
後編:2017年1月7日より2週間限定公開-(C)カバネリ製作委員会

Q:「甲鉄城のカバネリ」はどのよう発想から創造されたのでしょう?

A :新作を考える上でプロデューサー連から提示されたお題に「『キック・アス』(2010年)的なもの」というのがあって、ボンクラ青年と強い美少女のバディ・アクションというのを考えてみよう、となったのがはじまりです。本作ではボンクラ青年が生駒、強い美少女が無名に該当しますね。僕の作品はほとんど“みんなに侮られているボンクラ青年がヒーローになって見返す物語”で、それに『キック・アス』とかゾンビものなどを合わせて辿り着いたのが「甲鉄城のカバネリ」です。もう少し言及すると「カバネリ」は、『タクシードライバー』(1976年)がストーリーの雛形になっています。世を僻んで「この世の悪は何か?」を自問する青年トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)が、街で出会った少女の雇い主を悪の根源と見定め行動を起こす話で、還元すると2本は全く同じ展開なんです。

Q:独創的なフォルムの蒸気機関車“駿城”や、その拠点となる“駅”といった“鉄道”要素はどのように組み込まれたのでしょう?

A:物語を作る上で“移動要塞”的なものが欲しいと思ったのがきっかけです。本作での敵“カバネ”はいわゆるゾンビ的な怪物ですが、現代が舞台のゾンビものなら登場人物はトレーラーで移動するでしょうけど、時代設定が1800年代なら何が相応しいか? と考え、列車に結び付けました。そのころポン・ジュノ監督の『スノーピアサー』(2013年)が公開されて、何度も見て参考にさせてもらっています。

Q:主人公・生駒の設定も、何かから影響を受けているのでしょうか?

A:そういう部分で最も影響を受けたのは『桐島、部活やめるってよ』(2012年)です。生駒とは「いまに見ていろよ」と思っている点でトラヴィスも、神木隆之介くんが演じた前田も人にないこだわりを持ち、それが時にいびつにも見える意味で同じなんです。ただ生駒をトラヴィス的に描いても愛嬌がなくアニメファンにはハードルが高いかなと。それが神木くんなら“かわいい”に尽きるという結論に達し、生駒にかわいげを与えるべく「前田みたいに!」をスタッフへの合い言葉にしていました。ちなみに生駒役の声優・畠中祐さんもすごくチャーミングな“かわいい人”です。

初見でも、総集編から違和感なく楽しめる『甲鉄城のカバネリ』

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最初のテーマは『キック・アス』のバディ・アクション

Q:『甲鉄城のカバネリ 総集編』を手掛ける上でこだわったことは何でしょう?

A:総集編は単体でも違和感なく楽しめるようキャラクターの会話や行動などカットしたシーンが“参照先”にならないよう、すごく気を付けました。残されたシーンから少しでもカットした場面を示唆する情報があれば新規の作画やセリフの再録も辞さない。違和感をなくすことは作品をより多くの人に見てもらうための必須条件だと思います。

Q:改めて“一本の映画”として作り上げたような感覚でしょうか?

A:『劇場版 進撃の巨人 後編~自由の翼~』(2015年)を編集した際、「これは映画を一本作ったと言っていい」という境地に至って、今回も同じように思いました。古くは金曜ロードショー版の「DEATH NOTE」に始まり、『進撃の巨人』の劇場版も前・後編の総集編で、徐々に編集スキルが積まれ「総集編作りも板についてきた」と思いますね(笑)。どの総集編も「映画として作る」ことは明確に意識していました。また、『進撃の巨人』からは、TVシリーズの時点で骨組みを映画の文法で作っているので、まとめる際の方針も立てやすくなっていますね。

Q:「カバネリ」新作の制作は、当初から考えられていたのでしょうか?

A:それは考えていませんでした。当初から12 話でスパッと完結させる企画だったのですが、僕自身がキャラクターに思い入れたぶん、まだ作りたくなっちゃって。「やらせて下さい!」とプロデューサーにお願いしたという感じなんです。どんな話になるのか、どういう風に皆さんに披露するのかは、まだ秘密です(笑)。

「甲鉄城のカバネリ」と「進撃の巨人」は影響し合っている!?

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鋼鉄の皮で覆われた心臓を持つ不死の怪物“カバネ”

Q:「甲鉄城のカバネリ」が発表された当初は、「進撃の巨人」に似ているのでは? 的な印象も持たれていたと思いますが、どう思われましたか? また「進撃」を監督されて培った考えや技術が「カバネリ」で反映されたりしているのでしょうか?

A:自分でも似てると思いますね。「進撃」原作者の諫山創さんには、ものづくりの際の心がけや姿勢など、大いに影響を受けましたし、作品のジャンルも同じ、監督もスタジオ(WIT STUDIO)も同じ人たちが手掛けているので、同じと言えば同じ。とはいえ「進撃」をどんなに眺めても「カバネリ」が出来上がるわけではないので、違うと言えば違う。

自分が最も積極的に「真似よう」と思ったのは、諫山さんのキャラクターの魅力の作り方ですね。キャラクターがみんなに好かれるかをとても気にされる人で、「進撃」のアニメを作るやりとりの中で自分は“キャラクターを輝かせるために、作り手は何をすべきか”を教わったと思っています。例えば「キャラクターは本来“魅力じゃないもの”を与えて戦わせたとき、初めて“魅力”が生まれる」という考え方。トラウマや弱点、悪癖など魅力とは真逆のものを魅力的に見せられるかがポイントで、それを実践している姿や何気ない一言に「そうなのか」という、それまで考えもしなかった気付きがありました。

Q:逆に「甲鉄城のカバネリ」で培ったものが、「進撃の巨人」の新作へ反映されていたりするのでしょうか?

A:映像技術的なアップデートはそのまま「進撃の巨人 season2 」(2017年4月スタート)に遺産として引き継がれています。先日「~season2」の予告映像がYouTubeで公開されましたが、より進化した技術を転用していて、「カバネリ」を見てから、そちらも確認して頂けると……それはもう一目瞭然で分かると思いますよ。ストーリーや演出については、いつも教わる気持ちの一心なんで、自分が何か入れ込もうということはありません。でも、オリジナルの作品作りに苦心した経験は、原作ものをやる時にも有効に働くことが多いです。

Q:ちなみに諫山さんは、「甲鉄城のカバネリ」はご覧になっているのでしょうか?

A:TV放送時に見てもらって、褒めていただきました。今度またしっかり、アドバイスいただきたいなと思っていますが……。 「進撃の巨人」に関しては、打ち合わせの際、漫画のシーンの意図、設定などについて説明していただき、こちらからアニメ化のアプローチの選択肢を提示して意見を伺うこともあります。あとは……お互い最近見た映画について話したりします。これが一番多いですね(笑)。諫山さんが最近、海外ドラマの「ゲーム・オブ・スローンズ」にすごくハマっていて、お薦めされたので見始めています。僕もハマったら近いうちに語りまくるんだろうな……と。

2016年を振り返って。そしてこれから……!

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Q:2016年は数々のアニメがスクリーンで話題になりましたが、荒木監督はどんな印象をお持ちですか?

めちゃめちゃ刺激を受けた年でした。『君の名は。』も、『この世界の片隅に』も。何故かアニメの枠に『シン・ゴジラ』も入っていますけど、どれも本当にすごかったです。

どれも時を越えて輝ける「残る」作品だと思いました。あれだけの作品作ったら、監督たちご自身も「どうだ!」という気持ちになったのではないでしょうか。「甲鉄城のカバネリ」を作った自分は、「どうだ!」まではいかないまでも、「どうですか!」という気持ちにはなりました(笑)。

いつも自分の出来ることは、フィルムのために誠心誠意を尽くすことだけ。それは、いつ、どの時代の誰が見ても振り向かせたいと思ってやっています。10年後の誰かを無名ちゃんの活躍で振り向かせるぞ! と思いながら作っています。

(取材・文/稲田登人・サンクレイオ翼)

記事制作 : サンクレイオ翼