賞賛だけじゃない!?メリル・ストリープの“トランプ批判”スピーチに対する米世論の反応

コラム

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メリル・ストリープ
第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式でスピーチを行うメリル・ストリープ
Admedia, Inc/HFPA/AdMedia/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪/Avanti Press

1月8日(日本時間9日)に行われた第74回ゴールデン・グローブ賞授賞式でのメリル・ストリープのスピーチが話題になっている。すでに処々で報じられているとおり、ストリープは今回、実名こそ出さないものの、まもなく米大統領に就任するドナルド・トランプへの批判を、様々な角度から語った。授賞式会場は涙とスタンディングオベーションに包まれ、各界のセレブリティからの賞賛コメントが続いているが、一方で米世論は賞賛派と嫌悪派に分かれている。真っ二つとまではいかないが、この種のスピーチに対する反対や嫌悪の声がここまで噴出することは、最近ではとても稀なことだろう。

今回、ストリープが受賞したのは、ウォルト・ディズニーからスティーヴン・スピルバーグまで、長年にわたり映画界に貢献した人に贈られてきた生涯功労賞にあたる「セシル・B・デミル賞」と呼ばれるもの。同受賞者は、会場の俳優やフィルムメイカーたちが敬愛する立場であるため、自身のキャリアを振り返り、感謝を述べるだけでなく、業界全体への激励メッセージや社会問題を訴える印象的なスピーチを行うことが多い。近年では、2013年にジョディ・フォスターが同性愛者であることをカミングアウト、15年にはジョージ・クルーニーが仏週刊紙銃撃事件を受けて、世界中のテロやジャーナリズムへの脅威に屈しない想いを語り、人々の心を揺さぶった。

「メリルのスピーチこそが、トランプが勝利した理由」とは?

ストリープは今回、「ハリウッド外国人映画記者協会」が主催する同アワードには、「ハリウッド・外国人・記者という、今の米国社会で最も批判の対象となっている人々が集まっている」とユニークな言い回しで前振り。様々な俳優たちの生まれや育ち、演じているキャラクターの国籍の多様性を並べ、「ハリウッドは(様々な定義でいう外国人である)アウトサイダーの集まりである」現実をアピールすると同時に、ショービズ界全体として、「(トランプが敵に回すことの多い)記者たちの報道の自由を守る」必要性を訴えた。さらに、トランプが選挙戦のなかで、体の不自由な記者のジェスチャーを真似たことを痛烈批判。「侮辱は侮辱を生み、暴力は暴力を煽る。権力者がその地位を利用して、誰かをいじめることは、私たち皆の負けを意味します」と強いメッセージを放った。

すると、各界のセレブリティやメディア、世界中の人々から賛同・敬愛の声があがる一方で、米ソーシャルメディア上では反対・嫌悪を表す意見も加速した。反対派の意見のなかには、ストリープ個人と言うよりハリウッド全体を、「アメリカの実態を知らないエリート集団」「好きな仕事で多大なギャラをもらう億万長者たち」と呼ぶものも。「メリルのスピーチこそが、トランプが勝利した理由だ」というフレーズも多い。今回のトランプ勝利の要因のひとつに、オバマ政権下で苦しんだ中産・労働者階級の人々の不満があるとされているが、そうした立場からすると、「華やかなハリウッド俳優たちに何がわかるのか」という気持ちがあり、トランプ勝利により、その声が少数派でないことがわかり、公に叫ぶようになってきた、ということなのかもしれない。また、スピーチ反対派のコメントのなかに、「メリルは好きだけど、彼女は俳優であって政治家ではない」「アワード受賞でのコメントは映画に関することだけにとどめるべき」といったフレーズも目立つ。

ロバート・デ・ニーロの手紙で再確認する
「我々“皆”が声を上げること」の重要性

有名スターが自分とは違う立場の人の権利について語るときには、少なからず逆風がつきもの。昨年、ジャスティン・ティンバーレイクがアフリカ系アメリカ人の命の尊さを訴えるムーブメント「Black Lives Matter」を支持するツイートをしたところ、「違う立場で何がわかるのか」という反発で炎上したこともあった。一方で、去年、オスカー主演男優賞の受賞スピーチの半分を環境問題に費やしたレオナルド・ディカプリオに対し、「俳優が社会問題について語る」ことへの世論批判があまりなかったことを考えると、今回のストリープのスピーチに対する賞賛派と嫌悪派への二極化は、今のアメリカがこの選挙戦によって、いかに分断されたかを物語っているようにも思う。

さらに、批判を受けたトランプが、ストリープを「過剰評価されている女優」と揶揄したことも、ここ数年では考えられなかったことだ。オバマ政権がハリウッドとのつながりを重視していたこともあるが、このような個人批判やネガティブ・コメントが、次々と出るムードも、今回の選挙戦の後遺症(それとも今後の日常になるのか?)なのか。

大女優とて、1票だけを持つ1人の国民であり、無名であっても、自分の主張をバイラル化させるチャンスを持つ時代。セレブだから一般人だからと言うことではなく、誰にでも声を上げる平等な権利がある。授賞式後、盟友ロバート・デ・ニーロがスピーチを支持する手紙をストリープに送ったのだが、そのことを再確認させてくれる。「その気品と知性とともに君が放った力強い声は、誰でも声を上げることができること、そうすれば、その声も同じように聞き入れられることを伝えてくれた。我々“皆”が声を上げることがとても大切なんだ」。

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記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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