デビュー前からオファー殺到!? 映画業界が『東京ウィンドオーケストラ』坂下雄一郎監督に注目する理由

インタビュー

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坂下雄一郎監督
坂下雄一郎監督 撮影=伊藤さゆ

取材・構成=久美雪/Avanti Press

商業映画デビュー作公開前にもかかわらず、次作の映画製作が続々と決まっている監督がいる。彼の名は坂下雄一郎。1月21日に公開される『東京ウィンドオーケストラ』を皮切りに、『エキストランド』(2017年公開予定)、松竹ブロードキャスティング製作の新作など、複数の監督作が控えている。しかも、そのすべてが監督自身が脚本を手掛けるオリジナル作品だという。“原作”至上主義な現在の商業映画において、最近では異例な事態といえる。映画業界が坂下監督に注目する理由を、坂下監督本人へのインタビューを通じて探っていきたい。

『東京ウィンドオーケストラ』は、有名な吹奏楽団に間違われて屋久島に招待された素人楽団と、彼らを“本物”として周囲を騙し通そうとする町役場の女性職員が巻き起こすハートウォーミング・コメディ。間違いに気づいて逃亡しようとする楽団と、プロの演奏を楽しみにしている上司の間で板挟みにあう女性職員が、怒り、葛藤し、取り繕うなかで、生きる上で大切なものに気がついていく過程をじんわりと描いている。

「コメディって、何かしら偽ったり、誰かの振りをしたりすることが多いですよね。そこに何かしらのユーモアや皮肉的な面がある話がいいと思ったんですよ。あまりストレートではなく、皮肉があってユーモアが置かれている状況って何かって考えたら、そのひとつに主人公が間違った流れに巻き込まれてしまう状況があるんじゃないかと。そして、そこで何かしら良いことに目覚めるっていう」。

もうちょっと大きな規模でも撮れそうだなって思ってもらいたい

『東京ウィンドオーケストラ』
『東京ウィンドオーケストラ』

松竹ブロードキャスティングが「作家主義」×「俳優発掘」をテーマに立ち上げたオリジナル映画製作プロジェクトの第3弾として製作された本作。しかし、依頼を受けた当初は「作家主義」という言葉に違和感を感じたいう。

「当時、商業的なものを撮りたい。そういうところに行きたいと思っていたんです。なので、作家主義と言われるとちょっと相容れない部分があるのかもしれない、自分の思考とそのテーマがもしかしたら重なっていないのかもしれないという気がしていました」。

作家主義とは距離を置く姿勢を見せるものの、オリジナルにこだわり、プロットを考えている時が制作過程のなかで最も楽しいと話す坂下監督。それでは坂下監督が考える“商業的なもの”とは一体なんなのだろうか。

「ひとつには有名人が出ているということじゃないでしょうか。商業って映画好きじゃない人も見る映画という側面があると思うんです。じゃあ、そういう人たちが映画を見る取っ掛かりになるのは何かといえば、(自分の気になる)有名人が出ていることじゃないかと。(『東京ウィンドオーケストラ』は、)そういうのも撮れるぞっていうのを見せるために作ったところもあるかもしれません。これを作ることで、次に繋がったらいいなと思ったんですね。理想は同じくらいの規模が続くというよりは、どんどん大きな規模になっていったほうがいい。だから、これを見た人が、もうちょっと大きな規模でも撮れそうだなって思ってもらえるように作りました」。

“あきらめ“から生まれたプロデューサー的思考

『東京ウィンドオーケストラ』
『東京ウィンドオーケストラ』

大局的に判断、分析する思考は、まさにプロデューサー的視点ともいえ、作家主義に違和感を持つのも納得できる。坂下監督によると、こういったプロデューサー的思考はある種の“あきらめ”から生まれたのだという。

「(学生時代は)いわゆる自主制作みたいなものをいっぱい作っていたんですけど、全く芽が出なかったんですね。PFF(ぴあフィルムフェスティバル)にも全然入選しないんですよ(笑)。ということは、自分はそういう感じなんだと。入選するような人間じゃないんだって思ったんですね。だったら、どうしたらいいのかなって考えたところから始まった気がしますね」。

オリジナル映画製作プロジェクトの第3弾に坂下監督を起用した松竹ブロードキャスティングの深田誠剛プロデューサーに聞くと、「まずプロットにしても、脚本にしても書くのも直すのも早いんですよ。作家性もあって、なおかつどうしたらこの映画が人に見られるのか、ヒットするのかというのもどっかで考えているんですね。彼はメジャー志向だし、すごく器用だから、たぶんそれこそ大手の映画会社とかで大きな予算を与えられて撮れる人だと思います」と、坂下監督に期待を寄せている。

監督としての演出力、脚本家としてのオリジナリティ、さらにはプロデューサー的視点も兼ね備えた才能を、映画業界は高く評価しているのではないだろうか。最後に坂下監督にとって“監督”とは何か尋ねたところ、坂下監督らしい返答が返ってきた。

「仕事です。仕事としてやっていきたい」。

『東京ウィンドオーケストラ』
2017年1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:中西美帆、小市慢太郎、松木大輔、星野恵亮、遠藤隆太、及川莉乃、水野小論、嘉瀬興一郎、川瀬絵梨、近藤フク、松本行央、青柳信孝、武田祐一、稲葉年哉
配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
(c)松竹ブロードキャスティング

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記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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